NARUTO
〜九妖忍法帳〜 59話目
殻が、皮膚が、その下の筋繊維が、異臭を放って溶け出した。
―何だありゃ……!? そうか、竜の吐いた溶解液か!!
突然の出来事に目を白黒させていたナルトは、暫くして液体の正体に辿り着いた。
―つー事は、さっきのは見間違いじゃなかったわけだ。
再不斬が溶解液を浴びたのは事実だった。
ただしそれは予め用意された水分身であり、それを見抜けなかったナルトと竜は再不斬の策にまんまと引っ掛かった。
攻撃された水分身が消滅した後、別の場所に潜んでいた本体は、竜が吐き出した膨大な溶解液の一部を拝借してすぐに新たな水分身を用意した。
水のチャクラ性質を持つ再不斬に掛かれば、その程度は造作も無い作業である。
しかし傍から見ていた側にすれば、蒸気で視界が塞がっていた為、攻撃がすり抜けたような錯覚を与えられる。
竜も溶解液が通じなかったと勘違いした。
そして、直接攻撃に切り替えて再不斬を仕留めようとした結果、残った目を焼かれて地面に突っ込む破目になった。
「■ぐぁ■■ぅ■■ッ■―――!?」
己の分泌した液体に肌を焼かれ、のた打ち回る竜。
首を振って痛みの元を振り払おうとしても、その行為は無駄であった。
一度外に出た溶解液はチャクラによって全て再不斬の支配下に置かれ、思いのままに操られている。
「ガァ■ぁ■あ■■ア■ッ!!!」
「ケッ、悪足掻きしやがって」
再不斬の印に応じて、周りに残っていた溶解液が殺到する。
一つ一つの粒は小さいが、掻き集めれば風呂釜を満たせるだけの量にはなる。
体に張り付いてくる無数の粒が、竜の全身に虫食いのような凹凸を刻む。
「自慢の装甲もアレじゃ形無しだな」
もう鎧としての機能は完全に失われている。
これでは物理攻撃を防げるかどうかも怪しい。
「おい狐」
「だから狐は止めろっつーに……で、どうした」
「気に入らねーがトドメはテメェにくれてやる。 特大のヤツを用意しとけ」
布に隠れた再不斬の口元が釣り上がると、ナルトは声を上げて笑った。
「っしゃあ! 任せとけ!!」
ボン! ボン! ボン!
音の数だけ影分身が現れる。
「ドジ踏むんじゃねぇぞ!!」
「誰に言ってんだ!」
再不斬は愛刀を引っ提げて駆け出していった。
「ふん!」
背中に受ける力強い声に、少しだけ頬が緩むのを感じた。
振り下ろされる鉄の塊。
乱れ飛ぶチャクラの弾丸。
懐に潜り込んで果敢に斬り掛かる再不斬を、ナルトの影分身達が巧みに援護する。
2人がコンビを組むのは、今日これが初めて。
しかし即席のコンビとは思えない程、2人の足並みは揃っていた。
前衛と後衛。
お互いがお互いの動きを補い合って、本来の自己の戦力を2倍にも3倍にも引っ張り上げている。
殻の薄くなった部分を再不斬の大刀が切り裂くと、肉の裂け目にナルトの螺旋丸が殺到する。
チャクラの弾丸が肉の内側で弾け、取るに足りない傷がまたたく間に致命傷のレベルにまで広げられる。
そうやって2人の攻撃は、視力を失った竜に次々とダメージを刻んでいった。
血塗れになった巨体が苦しげな悲鳴吐こうと、2人が攻撃の手を緩める事は一切ない。
爪を折り、牙を砕き、尾を切断し、腹や背に穴を開け、確実に生命力を奪っていく。
竜の動きは目に見えて鈍ってきており、反撃も恐れるに足りない。
前衛の再不斬は滅茶苦茶に振るわれる腕を完全に見切り、大刀の一撃をカウンターで見舞う。
血油で切れ味の鈍くなった切っ先が、硬い肌に突き刺さった。
再不斬は奥歯を噛み締め、柄を握る手に更なる力を込めた。
厚みのある鋼が、肉を掻き分けて体の奥底まで侵入する。
刀身を半ばまで埋め込まれた竜は、一際大きな悲鳴を上げた。
巨体を支える四肢から、徐々に力が失っていくのが分った。
最早、決着は時間の問題であった。
「よっしゃ再不斬!! そっから離れろ!!」
締めの一撃を譲られたナルトが、チャクラを練り終わった。
十分な時間を掛けて練り込んだだけあって、離れていても一目で分る大きさだ。
ナルトは念には念をと影分身に螺旋丸の掃射を続けさせ、右手の袖を捲り上げた。
露出した右手首を左手で掴み、ガッチリ固定した上で掌を上に向けて、そこにチャクラを掻き集める。
「またそれか…芸のねぇ野郎だな」
「放っとけ」
戻ってきた再不斬が冷めた様子で言うと、ナルトの米神に青筋が浮いた。
だが螺旋丸からの派生技である事は事実なので反論はしなかった。
「ぐ、ぐぅ!」
「痛ぇのか? 何なら代わってやってもいいぞ」
「うるせぇ! 気が散るから黙ってろ!」
ニヤニヤしながら横から茶々を入れてくる再不斬。
さっきの共闘を見た限り過去の経緯は水に流したと思わったが、やはりまだ根に持っているらしかった。
何もこんな時にとナルトは睨みたくなったが、我慢してチャクラに流れを作る作業に集中した。
今やっている術は、普通の螺旋丸よりも集中力がいるのだ。
「お?」
術が形になっていくと散々茶々を入れていた再不斬も、何時もナルトが使っている螺旋丸とはチャクラの流れが異なる事に気付き、興味深そうに観察し始めた。
通常乱回転する筈のチャクラが一方向に回転し、徐々に回転するスピードを上げている。
それが横に薄く引き伸ばされて、円盤のような形になる。
ナルトは円盤を乗せた右手を頭上に伸ばすと、人差し指と中指を立てた左手を顔の前に掲げた。
青白い輝きを持つ半透明な円盤が、掌の上でギュンギュン回転している。
うっかり触れれば、怪我では済むまい。
【螺旋丸 零式】
「いや、『丸』じゃねーし」
「これで終わりだ」
「無視かよ」
小さな呟きが消えると同時に、術がナルトの手元を離れた。
薄く研ぎ澄まされた円刃が、形と回転力を保ったまま恐るべき速度で飛んでいく。
影分身が牽制で放つ螺旋丸を牛蒡抜きで追い抜き、あるいは切り裂き、目標までの距離を瞬く間に縮めていく。
空気を切り裂く音が、視力を失った竜に飛来する刃の存在を知らせる。
込められたチャクラの量が、その術の危険性を竜に知らせる。
後の事など考えず目の前に迫る死に抗って、最後の力を振り絞って空に逃れようとする。
ナルトはそれを見ると、素早く印を斬った。
手元を離れた今も、円刃はナルトの制御下にあった。
例え空の上であろうと、逃げ場はない。
しかし、ナルトが印を斬る必要はなかった。
竜は傷付いた翼を見えない何かに絡め取られ、土の上に落とされた。
「お帰りなんてつれない事を仰らず、最期までごゆるりとどうぞ?」
聞きなれた声にナルトが目を向けると、少し放れた場所に回復した雪の姿があった。
雪は立っている枝の上から、切られた方の手を振って繋がった事をアピールして見せた。
隣にはマタタビも居る。
その背中には、治療で精魂尽き果てたカブトがぐったりともたれ掛かっていた。
とりあえず、これで全員の無事が確認できた。
思わず目頭が熱くなる。
だが、泣くのは後だ。
全てが終わった後で、存分に泣いたらいい。
ナルトはキリリと口を結ぶと、急ぎ竜の方に視線を戻した。
再不斬、雪、マタタビ、カブト(意識があるかどうかは定かではない)。
皆が見届ける中。
かつてない強敵は、ナルトの放った術によって真っ二つに切り裂かれる。
………………………………………………少なくとも、ナルトの中ではそうなる予定だった。
しかし実際には術が触れる直前になって突如出現した業火に、塵一つ残さず消滅させられた。
満を持して繰り出したナルトの術諸共。
「待たせた皆の衆」
3人と1匹がポカンと口を開ける中、焼け焦げた地面にその人物は降ってきた。
さっきの炎はこの人の仕業だった。
「おのれ、汚らわしい爬虫類風情が…。
私の身内に手を出した事、たっぷりと後悔させてくれる」
烈火の如くお怒りになり、見える筈のない獲物を探す玉藻御前。
到着がもう少し早ければ、歓声…あるいは感涙を誘ったかもしれない台詞である。
されど物事にはタイミングというものが重要なのであって、周囲の反応はそれはそれは寒いものだった。
このお方、空気というものが全く読めていなかった。
「ち、ちょっと御前様…? 何か、みんなの空気がおかしかけんさ…」
遅れて降りてきた夜空ですら雰囲気を察し、待ったを掛けているというのに玉藻は構わず啖呵を切った。
「さぁどうした、こそこそ隠れとらんで姿を現せ!
末席とは言え、貴様も竜族の端くれであろう!
挨拶代わりの攻撃で臆したわけではあるまい!?」
玉藻にとっては挨拶代わりでも、鎧を尽く剥され致命傷を複数受けていた竜にとっては、絶えられる威力ではなかった。
しかしそんな事はちっとも知らない玉藻の発する一言一句が、皆のプライドをリアルタイムで引き裂いていた。
少なくともここに居る者達は皆腕に覚えのある者達であり、自分の腕にはそれなりの自信を持っている。
そんな彼らが散々苦労して戦った敵がたった一発で倒された挙句、倒した本人がそれに毛程も気付いていない。
しかも、あの巨体を一瞬で蒸発させた攻撃が挨拶代わりですか。
そうですか。
命懸で竜と交戦した再不斬達の肩に、どんよりとした影が圧し掛かった。
―わかりますよ。 ええ、わかりますとも。
九尾ですもんね。 尾獣ですもんね。
妖魔ですもんね。 元は神様ですもんね。
そりゃあ私達なんかと比べたら…象とミジンコぐらい差がありますよね…。
―はははっ…。
同じ畜生なのに……同じ畜生なのに……。
―オレ達の苦労は一体…。
中でも一番落ち込んでいたのがナルトだった。
鳶に油揚げならぬ、狐に油揚げ。
折角再不斬に譲ってもらった一番美味しいところを、最後の最後で全部持っていかれた。
そりゃ好物だってのは知ってますけど、旦那のを持ってく事ないじゃないか。
内ゲバもいい所だ。
―こんな事なら、呼ぶんじゃなかった。
てゆーか、来るならもっと早く来いよ。
最悪のタイミングで出てきやがって。
助けられておいて、あんまりな事を毒吐く。
まぁあれでナーバスな所があるから、面と向かっては言わないが…。
玉藻を呼んだのは他でもないナルトであった。
消滅した影分身の情報は、オリジナルに還元・共有・蓄積される。
そしてそれは、消滅時に存在していた他の影分身にも同様の現象が起こる。
ナルトはその特性を生かし、戦いに臨む前にアンコの付き添いで塔に行った影分身に情報を伝え、恐らくは塔の何処かに居たであろう玉藻に救援を求めていた。
玉藻の足なら、到着までの時間は僅かなもの。
如何に強敵と言えど、全力で臨めば稼げない時間ではない。
ナルトは決して無策で死地に臨んだわけではなかった。
―ま、今となってはどうでもいいんですけどね。
予想に反して玉藻の到着が遅れ、幸か不幸か再不斬の協力で事態が戦局が一転し、いざ竜を倒す間際になって手柄を残らず持っていかれた。
踏んだり蹴ったりのナルトはすっかりいじけて、焦げた地面にのの字を書き始めた。
「むぅ…この士気の下がりようは只事ではないな」
誰の所為だよ。
皆の心が一つになり、濁った視線が玉藻に集中した。
唯一の例外は、カブトだった。
工業排水で七色に染まった某大陸の川の如く濁った周りの目に比べれば、彼の瞳は閉め忘れた洗面台の蛇口から滴る水道水ぐらいには澄んでいた。
鼻を抓んで飲み込めば、カルキの匂いもそこまで気にならない。
とりあえず、死ぬ事はない。
「恐れながら申し上げます」
シュザ!
そんな音を立てて、カブトは仰々しく跪いた。
突飛極まる行動に、再不斬達は目を白黒させた。
「敵は先程の一撃に恐れをなして逃走したものと思われます」
「む? 言われてみれば気配を感じぬ。 ちっ、仕留め損なったか」
真っ赤なデタラメだったが、玉藻は疑いもせず信じた。
辺りを埋め尽くしていた濃厚なチャクラが薄れると、カブトは頃合を見計らってこう続けた。
「いえ、あれ程の攻撃であれば致命傷は免れぬ筈。
逃げ果せたところで、絶命は時間の問題でしょう」
「そうか? いやぁ、ついカッとなって力加減を間違えたかな…」
玉藻が照れ隠しに首の後ろを掻くと、カブトはさも感心したように頭を振ってみせる。
「ご謙遜を。
生まれてこの方あのような炎は見たことがございません」
「意識あったのかお前」
「………」
無視。
辛うじて視線だけは向けてくるものの、ナルトのツッコミに対する返事の類は一切寄越さない。
『君はもう用済みだよ』と、視線だけで語られた。
「な、何だよその目は」
「フン」
「な!? (こ、この野郎…!! 鼻で笑いやがった!)」
カブトはコロッと変わった態度に狼狽するナルトに失笑をくれると、それっきり視線すら向けなくなった。
「ま、まぁまぁ、抑えて抑えて…」
ナルトは殴りかかろうとして夜空に止められた。
抑えられたまま殺気を飛ばしてみるが、カブトはツーンと澄ました顔で受け流す。
もうナルトに対し、下手に出る気はなかった。
カブトは自分が本当に仕えるべき人物に巡り合ったのだ。
玉藻を一目見て、直感した。
これは運命……いや、天命である。
容姿、風格、実力。
何れも文句なし。
しかも単純…もとい純粋な心の持ち主である。
どうせ取り入るなら、こっちの方が断然いい。
例え人使いが荒かろうと、耐えてみせる自信がある。
いや、寧ろ望むところだ。
え、大蛇丸?
ナルト?
そんなもんクソ喰らえだ。
てな理由で、カブトは玉藻に乗り換えた。
「いやはや、真に以って見事なお手前。 不肖カブト、心より感服いたしました」
「…感服とな…」
玉藻はたわわに実った胸の内側に、じ〜んと響くものがあった。
妖魔に身を堕として幾星霜。
こんな丁寧な扱いを受けた事があっただろうか。
ない。
ないない。
ある筈がなかった。
「…最近の若いのもそう捨てた物ではないな…」
遠い、遠い昔。
敬われ、崇められ、傅かれた日々。
まだ神様だったあの時代。
もう戻れないあの頃が懐かしくなった。
「その方、名は何と言う?」
玉藻が上機嫌な声で尋ねると、待ってましたとカブトが顔を上げる。
横から飛んでくる殺気はキレイに無視している。
「ハッ! 薬師カブトにございます!」
「カブトか。 よし、覚えておくとしよう」
初対面の人間が玉藻に名を覚えられる。
珍しい…というか軽い快挙である。
夜空や雪は、名前で呼ばれるようになるまで1年もかかった。
自来也とアンコは半年かかった。
今でこそ主と呼ばれているナルトですら3ヶ月。
新入りの再不斬に至っては、まだ名前すら覚えられていない。
「あ、ありがたき幸せ!」
ハハー!と時代劇のように額を地面に擦り付けるカブト。
「はっはっは! 苦しゅうない! 面を上げよ!」
玉藻はすっかり気に入ったようだが、カブトの一々大げさな仕草は見る者に多大な不信感を与えていた。
いまいち考えが読めない。
何より胡散臭い。
超胡散臭い。
鼻が曲がりそうである。
「騙されてるな」
「騙されてますね」
「ああいうのが引っ掛かるんだろうな。 布団とか浄水器とか…宗教とか」
声を潜めた再不斬と雪は、本人を目の前に好き放題言い始める。
「仮にも元神様ですから〜、そっち方面は大丈夫だと思いますけど〜」
「…本当にそう思ってんのか?」
「……いえ」
改まって聞かれると、心配になる雪であった。
「詐欺はまだ金だけで済むが宗教はヤバイ。 深入りすると骨までしゃぶられるぞ」
「やけに実感篭ってますね〜。 誘われた事あるんですか〜?」
「あるぞ、2年位前だが」
「入信する気はありませんが、参考までに体験談を是非」
「体験談も何も…入信したわけじゃねーし」
「ちなみに何て宗派です?」
「………【ジャシン教】とか言ってたな」
「内容聞くまでもないですね〜…」
「名前からしてカルトの匂いがプンプンするだろ?」
何故か宗教で盛り上がる2人。
向こうは向こう、こっちはこっち。
俺達には関係ない。
勝手にやってろとばかりの態度であった。
「あなた様の風格、高貴なる佇まい。
さぞや名のあるお方とお見受けいたしましたが…」
「ほう、分るか?」
「分りますとも。 よろしければ、ご尊名をお聞かせ願えぬでしょうか?」
「玉藻だ」
「…玉藻様…」
カブトは名乗られた名を口の中で転がすと、暫し迷う素振りを見せてから玉藻の目を真っ直ぐに見据えた。
瞳に映る色合いが、先程までとは一味も二味も違っている。
これら全てが演出だとしたら大したものだ。
「恐れながら……お願いがございます」
「ふむ、申してみよ」
「何卒、私めをご家来衆の末席にお加え下さい」
家来…衆?
え、誰が?
誰からともなくそんな声が漏れた。
ナルト、再不斬、雪、夜空、ナルト、マタタビ…。
各々は近くの者と顔を見合わせ、首を振って否定し合った。
玉藻は顎に手をやり、少し考える。
「……理由を言え」
家来という部分は訂正しなかった。
「ご恩返しがしたいのです。
玉藻様にとっては取るに足らぬ相手でも、我々にとってあの竜は強敵。
事実、我々は敗北する寸前でした。
玉藻様のご助力がなければ、我々はここに躯を晒していた事でしょう」
「おいおいおい」
ちょっと待てやと身を乗り出す再不斬。
体を張って戦った1人として、カブトの嘘は見過ごせなかった。
しかし、感極まった表情でプルプルしている玉藻を見て気持ちが萎えた。
「重ねてお願い申し上げます! 何卒私めを配下の1人に!」
「……何と言う事だ。
堕落の一途を辿る現代社会に、よもやこのような殊勝な若者がおったとは…」
馬鹿じゃねーの。
ナルトを筆頭に、カブト以外の全員が心の中で突っ込んだ。
「…カブト。 面を上げよ」
「ハッ!」
「貴様の赤心、この玉藻しかと見届けた」
「で、では…」
「うむ! 以後、忠勤に励むが良い!」
バイン!と擬音付きで胸を張る玉藻に、カブトが何度も頭を下げる。
何度も礼を言う。
それをナルトが、冷たい眼で睨む。
勝手に決めるな、と。
そいつの給料誰が払うんだ、と。
「…皆からも何とか…」
言ってくれと続けようとしたが、他の者は皆帰っていた。