NARUTO
〜九妖忍法帳〜 53話目




サスケが見ていたのは、遠い日の出来事。

父母の墓前で復讐を誓った時、自ら蓋をした筈の思い出。

今まで一度として思い出す事のなかった、いや、思い出す事を拒絶し続けた記憶だった。

「待ってー!」

目の前に映し出される記憶の中で、小さいサスケは走っていた。

今にも破裂してしまいそうな胸の痛みに耐えながら、遠ざかっていく背中を追いかけていた。

「待って! 待ってよぉ!」

だが、どんなに頑張っても追い付く事は出来なかった。

走っても走っても、離される一方だった。

「お願い! 待って!」

手を伸ばしても、それが届く事は決してない。

「にいさーん! 待ってよぉ!」

だが、それでも追いかけた。

何時か届くと信じていたから。

届かなくても、立ち止まって振り向いてくれると信じていたから。

「サスケ」

そう・・・こんな風に。

「オレは大事な用があるから、お前は先に帰ってろ」

「やだよ。 兄さんと一緒じゃなきゃ帰らない」

「・・・・・・」

サスケの兄・・・イタチは、駄々をこねる弟に苦笑を浮かべながら、何時ものように小さな手招きをした。

『許せサスケ。 また今度な』

それがイタチの口癖だった。

仏頂面で口数少ない兄であったが、昔のサスケはその不器用な優しさが無性に好きだった。

「・・・殴らないと分からないのか?」

だが、こんな事を言われた覚えはなかった。。

さらに、額を小突かれた事はあっても胸倉を掴まれた事は一度もなかった。

少なくとも、記憶にはなかった。

「に、兄さん? どうしたの!?」

「わ・か・ら・な・い・の・か?」

ましてや片手で持ち上げられ、至近距離で威嚇された事などある筈がない。

「わ、分からないよ! どうして怒ってるのさ!?」

「そうか分からないのか。 分からないんだな。 じゃあ仕方ない」

―話聞けよ。

幼い自分とイタチのやり取りを見て、大きいサスケはそう思った。

あと、

その振り上げた拳をどうする気だ!?

仕方なく何をするつもりなんだこの男は!?

あと何でそんなに殺気立ってんだよ!?

とも思った。

「安心しろ。 痛いのは一瞬だ。
 仮にも、あくまで仮にもだが、今日まで兄弟として暮らしてきたんだ。
 そのよしみでなるべく苦しまないよう、一発であの世に送ってやろう」

―・・・ダメだこいつ。

おかしい。

サスケの記憶だと、イタチは駄々をこねる自分に苦笑しながら一緒に家に帰てくれた筈。

まかり間違っても、こんな展開にはならなかった。

それなのに、これは一体何なのだろうか。

色々と腑に落ちないことだらけだが、ただ一つイタチが本気である事だけは間違いないようだ。

どう見ても殺るつもりだ。

だとしたら、どう足掻いても無理。

この当時の2人には、天と地ほど力の開きがある。

それこそ天の助けでもない限り、小さいサスケが生き延びる事は出来ない。

「何やってんのイタッちゃん?」

「!?」

と思ったら、天の助けはあっさり来た。

イタチの殺気を萎えさせたのは、泥だらけの服を着た幸の薄そうな少年だった。

―このチビ・・・どこかで見た気が・・・。

大きいサスケは少年の髪とか瞳の色を見て、何か思うところがあった。

「え、あ!? ど、どうして此処に!?」

実の弟を粗雑に投げ捨てたイタチは、明らかに動揺し始めている。

「イタッちゃん遅いから様子見に来た」

「す、すまない! 本当にすまない!」

おかしな光景だった。

名門と名高いうちはの中でも天才と称された男が、自分とさして年の変わらぬ小さな子供にペコペコ頭を下げている。

「思わぬ邪魔が・・・いや、邪魔なのは何時もの事なんだが、今日は思いの他しぶとくてな。 撒くのに少々手間取った」

尻餅をついている小さいサスケには目もくれず、必死で少年の機嫌取りをするイタチ。

「んーん、別にいいよ」

見る者が見れば卒倒しかねない光景だが、肝心の相手は特に驚いた様子もない。

「それより早く行こーよ。
 日が暮れたら的見えなくなっちゃうし、外れた手裏剣探すのスゲー大変だし」

「確かに、暗がりになると回収に手間が掛かるからな」

「だろー? こないだ遅くなった時、オレじーちゃん達にスゲー怒られたんだからな」

「そうだな。 今日は遅くならないようにしないとな」

親しげに話ながら、立ち去ろうとする2人。

「ま、待ってよ兄さん! ボクも連れてって!」

しかし、サスケの叫び声で1mも進まない内に足が止まった。

「愚義弟が・・・まだ居たのか」

数瞬前とは打って変わって、心底嫌そうに振り向いたイタチ。

その口から明確な舌打ちの音が聞こえたが、サスケは気のせいだと信じたかった。

「イタッちゃんの知り合い?」

「違う」

「!!?」

あまりの即答振りに、小さいサスケがショックを受ける。

―や、やろぉ・・・!

また、大きいサスケは殺意さえ抱いた。

「・・・と言いたいところだが、残念ながら知り合いと言えば知り合いだ。
 『コレ』は・・・『コレ』は・・・そうだな。 オレの母親の旦那(仮)の子供だ」

弟って言えよ。

っていうか、母親の旦那(仮)ってなんだ。

「弟って事?」

「・・・戸籍上そう言う事になるな」

一言で済ませられるものなのにわざわざ言葉を選ぶイタチ。

どうもこの少年の前で、サスケを弟と呼ぶ事に抵抗があるらしい。

「こせき???」

「戸籍と言うのは、戸と呼ばれる家族集団単位に国民の身分関係を云々・・・」

「あはは、全然分かんねぇ」

「大人になればその内分かる」

イタチは少年の頭を撫でて優しく笑う。

それはそれは、慈愛に満ちた穏やかな顔だった。

サスケには向けるどころか見せた事すらない表情だった。

今となっては憎しみの対象でしかない筈の兄なのに、目から汁が溢れそうになる大きいサスケだった。






「う・・・」

サスケの悪夢はそこで終わった。

「・・・サスケ・・・君?」

現実に引き戻されて真っ先に見たのは、見慣れたくノ一の顔だった。

「・・・サクラ? (アレは夢だったのか)」

少しホッとするサスケ。

だがそれも束の間。

「痛ッ!?」

体を起こしたサスケは、首筋に走る痛みに小さく呻き声を上げた。

「だ、大丈夫!?」

「くっ・・・心配ない・・・平気だ」

慌てて支えようとするサクラを制し、倒れそうになるのを自力で堪える。

「それより、オレは一体・・・」

「え? 何も覚えてないの?」

「・・・いや、あの草忍に噛まれたところまでは覚えてる」

サスケはここ数日間の記憶がなかった。

「あの後、オレはどうなったんだ?」

まず自分に起きた事を確認しておこうと、サクラに説明を求めた。

「えっと・・・それは」






―2日前(試験開始30時間前後)―

ナルトとサスケの戦闘は、瞬く間に決着が着いた。

初手の攻防で接近戦の不利を悟ったサスケが仕切り直そうと距離を取った所に、ナルトは周囲が唖然とするような攻撃を仕掛けた。

それは、投石という何とも地味な攻撃であった。

しかし如何に手段その物が地味であったとしても、実行するの人間の身体能力が超規格外となれば結果も自ずと変わる。

ナルトの手から放たれた礫は、正しく弾丸となって飛翔。

目標に到達する間に数本の木を貫通し、威力の大部分を殺がれる。

だがそれでも十分な殺傷力を維持して、サスケの米神に減り込んだのである。

((((((あ、ありえねぇ・・・))))))

ナルトは『ひゃっほう! ストライーク!』とか1人ではしゃいでいたが、あまりに非常識なものを見せ付けられた周囲はドン引きだった。

唯一動じなかったのは、落下したサスケの容態を義務的に確認していた白ぐらいのものである。

「サスケ君、息してませんよ?」

「「「「「「いっ!?」」」」」」

真顔で告げられた一言が、一瞬で空気を凍りつかせた。

「またまた! 冗談上手いんだから!!」

ナルトはジョークだと思ったらしく、笑いながら白の肩をバンバンと叩く。

「ナルト君! 現実を見なさい!」

が、白はグワシッ!とナルトの顔を両手で掴み、強引にサスケの方に回転させた。

首からボキッ!とアレな音がしたが、そんな事を気にしている場合ではなかった。

「・・・・・・・・・」

一瞬の沈黙の後、ナルトの顔はたちどころに脂汗に塗れた。

ぐったりしたサスケの耳から、どす黒い血がドバドバ溢れ出していたからだ。

「・・・どうしよう?」

出来る限りお茶目な感じで首を傾げてみるが、んなもん無意味だった。

「やばい! やばいよこれー!」

「おいウソだろ!?」

「みゃ、脈もないわよー!!」

「いや!! いやぁああああ!!」

場は騒然となり、下忍達はパニック状態になった。

「じゃ、オレ達はこれで・・・」

「治療してくれてありがとう。 また会いましょうね、お姉さま」

ネジとテンテンは係わり合いになりたくないとばかりに、リーを担いでそそくさと背を向けた。

「待て!! 逃げんな!!」

「ちょ! 放しなさいよ!! 誰かに見られたら私達まで共犯だと思われるじゃない!!」

木ノ葉の里において仲間殺しは特に罪が重く、最悪だと死刑も有り得る。

しかもサスケは現存する最後のうちは一族。

その血が失われる事が里にとってどれ程の損失であるかは、忍なら駆け出しでも理解出来る。

まして、うちはには及ばないもののネジという具体例が班内に存在し、血継限界の重要性を知るテンテンである。

真っ先に保身に走るのは、ある意味当然だった。

「犯とか言うな!! 正当防衛だって!!」

「関係ないわよ!! 大体あたしはネジやそこのボンボン達と違って平凡な家の子なの!!
 この件に少しでも関与したって知れたらお先真っ暗、一生台無しよ!!
 分かる!? 揉み消す力もなきゃコネもないの!! お願いだから厄介事に巻き込まないで!!」

護衛対象を自ら死なせ面子丸潰れのナルトも取り返しが付かないが、テンテンはテンテンでヤバイ状況だった。

「ふざけんな!! 自分さえ助かればそれでいいのか!?
 ここで逃げれば、仲間を見捨てた後ろめたさを抱えながら生きていくんだぞ!?
 お前はそれで満足なのか!? そんな人生が幸せだと胸を張って言えるのか!?」

「ええ満足よ! 幸せよ!! 胸を張れるわよ!! 断言するわ!!
 大体逃げる云々以前に、あたしには責任も関係もないもの!!
 っていうか昨日今日会ったばかりの、しかも『男』なんかに仲間呼ばわりされる筋合いないわよ!!」

必死に懇願するナルトだったが、袈裟懸けにバッサリと切り捨てられた。

だが悲しい事に、テンテンの言う事は道理であった。

親しくもない人間の為に自分の人生を振る者は居ないし、誰だって自分の身は可愛いのだ。

「行かないで!! 行かないで!!」

「ああもぉ!! ウザイ!! キモイ!!
 泣くな!! 喚くな!! 引っ付くな!!
 ネジ!! あんたもこの馬鹿引っぺがすの手伝って!!」

「・・・まぁいいだろう。 お前を助けるのは不本意だが、障害物が消えるのはオレとしても好都合だ」

クソミソに言われながらもテンテンの腰にしがみ付くナルトを、テンテンとネジがゲシゲシと蹴り付ける。

―な、何だか分からないが、今のうちに・・・。

ドサクサに紛れてキンが逃げようとしていた。

ドスとザクは当然だが、密かに巻物も回収している辺りチャッカリしている。

「待て!!」

しかし、それを見逃す程甘いナルトではない。

キン達の前に影分身を回り込ませ、素早く退路を断った。

ちなみに本体の方は、テンテンとネジに寸止め無しのリアルストンピングを打ち込まれている状態である。

・・・器用な男だ。

「何処に行くのかな、君達?」

幅広いスタンスで腰を深く落とし、両手を広げた構えはまさに鉄壁の防御。

重荷を背負ったキンでは逃げられる筈がない。

まぁ荷物があろうとなかろうと、気付かれた時点で逃げられはしないのだが。

「今ボクちゃん色んな意味で崖っぷちだから、下手な真似するとうっかり殺しちゃうかもよ?」

背中から湯気を立てながら、『はぁぁあああぁ!!』と威嚇するように息を吐くナルト。

目に見える位置に出来立てほやほやの死体が転がっているだけに、説得力が違った。

しかもその死体は、少し前に自分の仲間を破壊した恐るべき少年のものである。

「ひぃぃいい!! お、犯される!!」

だがキンが感じたのは、生命ではなく貞操の危機だった。

「貴様・・・俺をどういう目で見てるんだ!?」

あまりにも失礼なリアクションにカチンと来て、ナルトの語気が無意識に強まった。

すると、それをどう受け取ったのか、キンは尚の事取り乱し始める。

「いや!! やめて!! そんな厭らしい目で見ないで!!」

「俺が何時そんな目をした!?」

「今よ!! 今してるじゃない!!」

しかしこのレベルまで来ると最早被害妄想である。

「とりあえず話を聞け!!」

「ち、近寄らないで!! この変態!! 色魔!! ケダモノ!!」

言いたい放題のキン。

「け、けだもの・・・?」

大抵の罵倒には耐性のあるナルトだが、流石に初対面でここまで言われればムカつきもする。

このまま謂れのない罵りを受ける位なら、いっそ本気で犯してやろうかと良からぬ考えすら浮かび始めていた。

「あの、お取り込み中すいません」

そんな感じで場が乱れに乱れた所へ、白がやってきた。

「何だよ!!? 今忙しいんだよ!! 下らねぇ話なら後にしやがれこの男女!!」

勢いに任せてみっともない八つ当たりをするナルト。

「・・・・・・・・・」

言ってはならない一言で、白の脳内にカッチーンとそれはそれは美しい音色が響いた。

如何に温厚な白と言えど、これは激怒してもおかしくない。

というか、激怒して当たり前だ。

だが、白はどっかの誰かとは違い人間が出来ていた。

「ご機嫌斜めのナルト君に朗報があります。
 サスケ君ですが、まだ助かりますよ?」

「マジか!?」

「ええ、マジですよ」

影分身を消してすっ飛んできた本体に、何時も以上に爽やかな顔で二コリと笑う白。

しかし舞い上がっているナルトは、笑顔の奥に渦巻く黒いものに気付けなかった。

「ナルト君が騒いでる間に蘇生措置を試みたところ、何とか息を吹き返しました」

「ホント!? ホントなのね!?」

「はい、ウソじゃないですよ。
 もっとも、まだ助かると決まったわけではありませんが・・・。
 引き続き治療に当たれば、十中八九大丈夫でしょう。 保障します」

「よっしゃ白! じゃあサクサクやっちゃって!!」

スラスラと紡がれる白の言葉にナルトは崖っぷちから一転、明るい表情で拳を突き上げた。

・・・・・・が。

「それは無理ですね」

「はい?」

間抜けな顔とポーズで固まるナルト。

「ホラ、ボクってこう見えてすごくナイーブじゃないですか。
 だから、ちょっとした事で落ち込んじゃう性質なんですよねぇ」

「そ、それがうちはの治療とどういう関係が・・・」

「いやぁ・・・私的な事で申し訳ないんですが、ボクには掛替えのない親友がいるんですね」

白はフッと短い溜息を吐き、遠い目をして語り始めた。

「いいえ、『いた』と言った方が正しいかもしれませんね」

「ほ、ほぉ・・・」

「彼とはかつて敵対し、命のやり取りをした事もあります。
 まぁ・・・結果はボクの完敗だったんですけどね・・・」

『懐かしいなぁ』とか言いながら、空を見上げる白。

「当時のボクにとって、敗北は死と同義。
 彼に負けた時、ボクは命を絶つつもりでした。
 いや、実際に絶とうとしました」

『ちょ! 呼吸が乱れ始めたわよー!?』 

向こうでは一つの生命が命が終わりを迎えそうだが、こっちの話はまだ終わりが見えない。

ナルトは再び焦り始めた。

「しかし、ボクは生きる事を選択した。
 彼が生きる希望を与え、生きる場所を与えてくれたんです」

ググッと拳を握り、熱弁を振るう。

『どんどん脈が弱くなってるよ!!』

が、今はそれどころではない。

「彼とボクが共有した時間はそう長いものではありません」

「・・・あの・・・なるべく手短に「だが! だがしかし!」

白、見事にシカト。

「人と人との絆は、付き合いの長さではないんです!
 共有した時間の長さよりも、中身の濃さなんです!!
 故に彼とボクの間には、何物にも代え難い絆があると信じていました!!」

ツゥ・・・と頬に涙が一筋。

しかしその涙は、偽物ではないが本物でもなかった。

「しかし、どうやらそう思ってたのはボクだけだったようです」

白は急に素に戻って『ハッ!』と吐き捨てた。

「いやいや、その彼もお前の事を親友だと思ってるよ。 断言する」

それはナルトの本心であり、嘘偽りなど欠片もない。

「そうでしょうか?
 では何故その彼、まぁ本名は伏せて『UずまきNルト君』とでも称しておきましょう。
 Nルト君はボクに対し、この上ない侮蔑の言葉を浴びせたりしたのでしょうか? ねぇ?
 こんな精神状態じゃ、うっかり医療ミスを起こしちゃいそうで、治療なんてとてもとても」

『冗談言っちゃイケねぇぜボウヤ』とばかりに白は首を竦める。

「も、ものの弾みというか・・・勢い余ってというか・・・」

とても冷たい態度に、ナルトはしどろもどろ。

脂汗ダラダラで、視線は空をさ迷うばかりだった。

「・・・・・・・・・」

遂に言い訳の言葉すら出なくなった。

全面的に自分が悪いと分かっているからである。

ナルトは静まった空気の中で、どうやって謝罪しようかと考えを巡らせるばかりだった。

「・・・ま、でも」

そんなナルトの様子を観察していた白だが、暫くすると自ら怒りを収めたようだった。

「折角築いた友好関係です。
 この位の事で白紙に戻すのは、ボクとしても本位ではありません。
 発言を撤回してくれさえすれば、考えない事もないですけどね」

「・・・すいませんでした」

その一言を待ち侘びていたナルトは、すぐに深々と頭を下げた。

これで白との友好関係蟠りも残らず、自分の面目も保たれ、ついでにサスケの命も助かって万事解決。

土下座でも安いものである。

「と、言う事でナルト君」

仲直りの印なのか、白が満面の笑みで右手を差し伸べる。

それに対しやや照れ臭そうにしながらも、ナルトは右手を重ねようとした。

が。

ナルトの手が白に触れる直前、白の手が90度外側に開いた。

「な、何でござるか? その手は・・・」

「オカッパの彼と音忍の彼、くノ一の子とサスケ君の治療費。 キャッシュでお願いします」

恐ろしくドライな一言。

さっき友情について力説していた時とは別人のようだ。

「金取んのかよ!!」

「無論です。 経費と人件費込み込みで、しめて2万5千飛んで81両です」

「高ぇよ!!」

「では端数の81両はサービスしましょう。
 さぁ、払って下さい、というかさっさと払え」

どうも白の怒りはまだ収まっていないようだった。

「んな大金持ち歩いてるるわけねーだろ!!」

「分かりました、今は手持ちの分だけで結構です」

ナルトが反応出来ない程の速度で、白は懐から財布を抜き取る。

その道のプロも真っ青な鮮やかな手際だ。

「待て!! せめて財布は返せ!!」

「案外みみっちい事に拘るんですね。 器が小さいですよ? それとも君の器は男女以下ですか?」

財布を奪い返そうとするナルトを、軽やかな動きで翻弄する白。

「カードとか入ってんだよ!!」

「ほぉ、それは好都合。 あ、ご安心下さい。 残金引き落としたらちゃんと返しますって」

「ふざけんな!! てか、何でお前が俺の暗証番号知ってんだ!!」

「別に驚く事でもないでしょう。 ツクモちゃん以外全員知ってますよ」

「道理で使った覚えもねぇのに残高が減ってた筈だよ!! 全部貴様らの仕業か!!」

「人聞きの悪い事言わないで下さい。 玉藻さんや自来也さんに比べたら微々たるものです」

「よ、よくもヌケヌケとぉ・・・!! 好き者の変態に売り飛ばして着服金穴埋めさしたろか!!」

「質問!! ローンは可能なの!? 可能なら私が買うわ!!」

「その競売待った!! オレだ!! オレに売れ!! 
 こっちは一括だ!! 日向家の財産売っ払ってでもオレが買う!!」

「ネジは引っ込んでさない!! あたしが買うの!!」

『げ!? 心臓止まっちゃった!?』

『待て! 落ち着け!! そうだ、電気ショック!! 誰か雷遁使える奴居るか!?』

『あたし使えるけど・・・あんま自信ないわよ・・・?
 仮に・・・仮にだけど・・・失敗しても怒らないでねー?』

『えぇい! ダメで元々だ!! この際細けぇ事はどーでもいい!! いの準備しろ!!』

『ちょっといの!? 失敗だけは止めてよ!?』

『大丈夫! ・・・と思うわ』

『アホ!! チャクラ練り過ぎだ!! んなもん喰らわせたら炭化しちまうだろうが!!』

『いの!! 真面目にやりなさいよ!!』

『やってるわよー!! ていうか気が散るからちょっと黙っててよ!!』

「あたしが買うの!!」

「いいやオレだ!!」

「うるせんだよ色ボケ共が!! 関係ねぇ奴は引っ込んでろ!!」

「「関係ある(わ)よ!!」」

『コレでどう!?』

『よし! いいぞ!! 脈が戻った!!』

「あの、ボクはおとk「オレと彼女が結ばれるのは運命、いや宿命だ!!」

「いや、聞いて下さい。 ボクはおとk「はぁ!? 寝言言ってんじゃないわよ!! 脳みそ腐ってんじゃないの!?」

「だからおt「フン、貴様のような雌犬に言われる筋合いはない!」

「お姉さま! こんな馬鹿はほっといて、私と共に楽園を築きましょう!
 さぁ今すぐ指示を!! 手取り足取りナニ取り事細かく!!」

「だから貴様は馬鹿だと言うんだ! 女にナニが付いてるわけがないだろう!!」

「しっ! ししし失敬な!! ちゃんと付いて『あ、また止まった』

『いやぁああぁああ!! いやぁ!! サスケ君逝っちゃダメ―――!!!』

それはもう、この世のものとは思えない光景であった。

まさにカオス。

ちなみ。

にこの後約半日に渡ってサスケは生死の境を往復し、猪鹿蝶の治療によって一命を取りとめた。

しかし、ナルトと白・ネジとテンテンの醜い争いは、その後更に半日に渡って繰り広げられたのだった。

そしてサクラはこの数日後、意識を取り戻したがこの時の記憶を失っていたサスケに説明を求められ、どうしたものかと頭を抱えたのだった。







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