NARUTO
〜九妖忍法帳〜 45話目




受験生達が合格した喜びを噛み締めている教室の外。

「・・・さてと。 準備はいいわね」

入り口のドアに手を掛けたくノ一が、荷物を持ったお供らしき2人の男達に目配せをした。

「もちろん」

1人は頼もしげなオーラを背負った隻腕の男。

「・・・・・・いつでも行ける」

もう1人は般若面で顔を隠している男。

こっちはあまり乗り気ではなく、無理矢理付き合わされてるような感じがする。

だがくノ一は『そんなの知ったこっちゃねー』と言わんばかりに、ニヤリと口の端を吊り上げ一気にドアを開け放った。

それが合図だったのか、お供の者達が殆ど同じタイミングで行動を開始した。

まず般若面の男が肘掛の付いた椅子を担いで教室に飛び込み、受験生達の真正面にある黒板の前に素早く設置。

次に隻腕の男がくす球を括りつけたクナイを天井に放つと同時に、真っ赤な絨毯を入り口からソファーまでの間に転がす。

さらに般若面の男がテーブルを用意し、その上に置いたティーセットにお茶を注いでいる間に、チョークを取った隻腕の男が黒板にカカカカカッ!と凄まじい音を立てて何かを書き殴っていった。

そこまでやって、各々の役目を終えた2人の男達は、椅子の左右に傅いて頭を垂れた。

『・・・・・・・・・』

受験生だけでなく試験官達までも、何事だろうと思って凝視する。

そして大勢の注目が集まる中、1人のくノ一が赤絨毯の上を悠然と歩いてきた。

((・・・・・・・・・・・・アホだ))

イビキとナルトが顔を顰めたのは、ほぼ同じタイミングだった。

「アンタ達、喜んでる場合じゃないわよ」

椅子に深く腰掛けたくノ一は脚など組み、用意されたティーカップを傾けつつそんな事を言った。

背後の黒板には、【みたらし アンコ】参上と書いてある。

そう、第二次試験の試験官は、ナルトの嫁さんだった。

ちなみにお供の2人は、自主的に参加した夜空と、雪経由で弱みを握られ渋々付き合っている再不斬である。

「私は第2試験官・・・・・・みたらしアンコ」

アンコは天井から垂れた紐に手を伸ばし、パカッとくす球を割った。

すると、金銀の紙吹雪と共に白い布が現れた。

そこには、『祝! 妊娠三ヶ月!』という文字がくっきりと染め抜かれていた。

「次行くわよ、次。 ついてらっしゃい」

小指を立ててホホホとか笑い出しそうな雰囲気で脚を組み直し、自信たっぷりに笑うアンコ。

だが、周囲の者達はどういうリアクションを望まれているのかが分からず、頻りに首を捻っていた。

・・・・・・ごく一部の関係者を除いて。

―・・・夜空さん・・・思いっきり滑ってます。

―・・・他人のフリ他人のフリ。

恥ずかしい師匠を持ったヒナタといのは頬を赤く染め、露骨に目を逸らした。

―・・・哀れな。

―・・・た、玉藻さんまで出てくるんじゃねーだろーな・・・。

シノは同情しながら静かに首を振り、シカマルは急に挙動不審になった。

―・・・再不斬さん・・・。

白は雪に無理矢理女装させられた為、面の下で血の涙を流す再不斬の気持ちが痛い程理解出来た。

―わぁ・・・アンコちゃんカッコイイ!

ツクモは少し感性がずれているのか、憧れすら抱いて目を輝かせていた。

―・・・・・・・・・。

黒板の前に注がれる赤く無機質な瞳。

だがそれは、一番目立っているアンコではなく傍に控える夜空を見ている。

瞳の持ち主は二十歳手前の少女。

瞳と同色の燃えるように赤い髪を、音の額当てで結い上げている。

容姿はかなり目を惹きそうなのだが存在感は極めて薄く、表情も乏しい為何を考えているのかは分からなかった。

「空気読め・・・」

―まったくだ。

ナルトもイビキと同じ意見であり、何度も頷いている。

「じゃ、じゃあオレらはこれで・・・」

「が、頑張れよ」

痛々しい空気を修復出来ないと悟り、アンコを見限ってそそくさと離脱する供の2人。

「くっ・・・あんたら、後で覚えときなさいよ・・・!」

こそ泥のような背中を見送ったアンコは、固く復讐を誓うのであった。



















無事役目を終えたイビキは、1人で教室の後始末をしていた。

主に答案用紙の回収である。

しかし、回収した用紙の中に気になるものがあった。

それは、自来也・白・ナルトの答案だった。

各人の用紙の裏には、何かメッセージのようなものが書かれていた。

一枚目。

『ハゲ』

ビキッ!

二枚目。

『ワカメやひじきを食べるといいですよ』

ビキキッ!

三枚目。

『頭髪の事でお悩みのあなたへ。 〒○○○(略)』

バリン!!

「余計なお世話だクソッタレ!!」

憤慨して用紙を床に叩き付けるイビキは、職権乱用してでも失格にすれば良かったと後悔した。

だが今になって騒いだところで、後の祭りだった。



















―第二試験会場―

アカデミーを後にした受験生達が連れてこられたのは、木ノ葉隠れの辺境に位置する場所だった。

金網に囲まれた薄暗い森。

巨大な木々が光を遮り、この世のものとは思えない不気味な気配が漂っていた。

入り口のゲートは鎖で巻かれ、封印の術式が描かれた札によって固く閉ざされている。

ご丁寧にも『立ち入り禁止区域』と書かれた看板が立ててあるが、まともな神経の持ち主なら言われずとも近寄りたくないだろう。

その証拠に、一次試験を突破した筈の強者達が揃って息を呑んでいた。

「此処が『第2の試験』会場、第44演習場・・・。 別名『死の森』よ!!」

アンコはさっきの恨みも含め、受験生達を怖がらせてやろうと怪しい雰囲気を出す。

「・・・何か、薄気味悪い所ね・・・」

「フフ・・・此処が死の森と呼ばれる所以、すぐに実感する事になるわ」

不安を隠せないサクラのリアクションに気をよくしたのか、アンコの笑みが深くなった。

「野外プレイにゃもってこいの場所だな、人来ねーし」

「ああ、お前の親父もよ〜此処を使ってたぞ」

「あはははは、俺が仕込まれたのもこの森だったりしてな・・・・・・って何で目を逸らす?」

それを他所に、連れションなどしているバカ師弟。

しかも草陰に行くとかそういった配慮もなく、『立ち入り禁止区域』の看板に小便を引っ掛けている。

あまりにもデリカシーのない行動に、異性が両手で顔を覆い同性が呆れたように溜息を吐いた。

例外はほんの僅かなものだ。

例えば、編み笠を被った男か女か分からない草隠れの忍。

彼?は両手をワキワキさせながら、隙だらけの背中に徐々に迫り、熱い眼差しをしてハァハァ言っていた。

「そこのバカ2人!! これから説明すんだからちゃんと聞けェ!!」

アンコがぶっとい血管を浮かせ、袖に仕込んでいたクナイを投げた。

一辺の迷いもなく、殺すつもりでだ。

ところが。

ナルトを狙ったクナイはテマリに扇子で叩き落され、自来也に放ったクナイは草忍の異常に長い舌で巻き取られた。

「「クナイ。 お返ししますわ」」

「そう。 わざわざありがとう」

舌と手に持たれたクナイが差し出されたが、アンコはどっちも受け取らなかった。

ただ、笑いながら殺気を送っただけだった。

「「「ふふふふふふ」」」

砂・草・木ノ葉の忍達は、暫くの間バチバチと火花を散らしていた。

「アンタ達みたいに、試験官に喧嘩売るような命知らずが真っ先に死ぬのよねェ・・・」

自分の班員の所に戻っていく下忍達に向って呟いた言葉は、寧ろアンコの願望だった。

「・・・・・・・・・」

仲間の元へ戻った草隠れの忍が、じ〜〜〜っと自来也を見ている。

「おい。 あいつ、あんたの方ずっと見てんぞ。 手ぐらい振ってやったらどうだ?」

「なんでかな・・・・・・昔、アレと同じようなのに付き纏われた事を思い出した」

自来也の苦い過去。

それは同期の忍だった大蛇丸というオカマに、しつこくしつこく求愛された事。

大蛇丸は、幼少の頃から既にオカマだった。

オカマであり、両刀であった。

断じてゲイではないと本人は言い張っていたが、『今日は肉、今日は魚』みたいなお手軽感覚で、男女両方逝けるので始末に終えないぐらい性質が悪かった。

自来也は爬虫類のような視線に身震いしつつ、ナルトの陰に隠れてその体を盾にし始めた。

「・・・あんなのが河矢久の倅なのか」

「うん、そうだよ」

右脚の付け根に音の額当てを巻いた女が、すごく不服そうな顔をしていた。

女の顔立ちは、隣りでニコニコ笑っているレンゲとどことなく似ている。

さらに髪の色も同じ水色。

ただ髪質が少し違って、軽くウウェーブがかかっている。

身長も女性にしては高く、180cmに届きそうだ。

歳は多分20後半というところだろう。

他の受験生と比べると、遥かに落ち着いた雰囲気が漂っている。

「ホラ、周りの空気全然読まないとことかそっくりじゃない?」

「いや、河矢久はもう少し紳士的だったような・・・」

何を考えているのか、ポッと頬を染める女。

「・・・何時も言ってるけど・・・思い出を美化し過ぎだってば・・・。
 ・・・・・・それと、自分の娘の前で惚気るの・・・止めてよね・・・」

レンゲは苦笑しながら、諭すように・・・それでいて諦めたように首を横に振っていた。

「・・・・・・レンゲも・・・大変ね」

後から肩を叩く赤髪の少女。

しかし、同情している割にはもの凄く無表情だった。

「【ツムギ】・・・同情してくれるのは嬉しいんだけどさ・・・。
 これっぽっちも表情を変えずに言うのはどうにかならない?」

「・・・・・・無理」

「・・・・・・・・・はぁ・・・」

レンゲにはレンゲの苦労があるのか、口から零れた溜息はとても重いものだった。

「それじゃ、第2の試験を始める前に・・・アンタらにコレを配っておくね!」

一悶着あったものの、すぐに気を取り直したアンコ。

懐から『同意書』と書かれた書類を取り出し、一番近くに居たナルトに渡した。

「同意書よ。 あんた達全員、これにサインしてもらうわ」

「・・・何で?」

ナルトは自分の分の同意書を抜き取り、残った束を近場の受験生に回す。

「こっから先は『死人』も出るからね。
 同意を取っとかないと、私の責任になっちゃうからさ〜♪」

アハハと暢気に笑っているアンコ。

他人事のように言われた受験者全員は、何か言いたげに顔を顰めた。

「まず第2の試験の説明をするから。
 その説明後にこれにサインして、班ごとに後ろの小屋に行って提出してね」

アンコが指差した方向を見ると、簡単な造りの小屋に3人の中忍が座っていた。

「じゃ! 第2の試験の説明を始めるわ。
 早い話此処では、極限のサバイバルに挑んで貰うわ」

―サバイバルかよ。 またクソめんどくせー試験だな!

シカマルはダルそうにしながらそう思った。

だが思っただけで、面と向って口にする度胸はなかった。

「まず、この演習場の地形から順に追って説明するわ」

アンコが掲げた巻物に、森の大まかな地形が記されていた。

「この第44演習場は、カギの掛かった44個のゲート入口に円状に囲まれてて・・・・・・川と森、中央には塔がある。
 その塔からゲートまでは約10キロメートル・・・。
 この限られた地域内で、『ある』サバイバルプログラムをこなしてもらう。
 その内容は…各々の武具や忍術を駆使した―――」

そこまで言って巻物を懐に仕舞う。

「何でもアリアリの―――『巻物争奪戦』よ!!」

そして新たに別の巻物を取り出した。

片方は端が黒く、もう片方は白い。

「巻物?」

「そう『天の書』と『地の書』・・・この2つの巻物を巡って闘う」

アンコは巻物の角度を変え、中心に書かれた『天』と『地』の文字が見えるように差し出した。

「此処には84人・・・つまり28チームが存在する。
 その半分14チームには『天の書』、もう半分の14チームには『地の書』を。
 それぞれ1チーム一巻きずつ渡す。 そして、この試験の合格条件は・・・。
 『天地両方』の書を持って、中央の塔まで3人で来る事」

「つまり、巻物を取られた14チーム。 半分が確実に落ちるって事ね・・・」

独語するサクラは、若干強張った表情をしていた。

最低50%を越える脱落率では無理もない。

「ただし、時間内にね」

だがアンコは、ただでさえ高いハードルを更に引き上げた。

「この第2試験、期限は120時間・・・ちょうど5日間でやるわ!」

「5日間!?」

「文句あんの?」

驚きの声を上げたいのだったが、途端にジロリと睨まれた。

「い、いえ・・・めっそうもない・・・」

両手を振りながら、渇いた笑いで誤魔化す。

「ご飯はどーすんのォ!?」

「自給自足! 森は野生の宝庫、食料は十分ある。
 ただし、人喰い猛獣や毒虫・毒草には気を付けてね・・・」

チョウジの肩がさも残念そうに垂れ下がる。

やはり彼にとって、食事は死活問題のようだった。

「風呂は?」

「溜まったらどうするんだ?」

「んなもん知るか!!」

再びとぼけた師弟にクナイが飛んだが、2人ともあっさり避けた。

アンコは軽く舌打ちしつつ、説明を再開する。

「言っとくけど、14チーム42人が合格なんてまず有り得ないわよ。
 何せ行動距離は日を追うごとに長くなり・・・回復に充てる時間は逆に短くなってゆく。
 オマケに辺りは敵だらけ。 迂闊に寝る事もままならない。
 つまり、巻物争奪で負傷する者だけじゃなく・・・コースプログラムの厳しさに耐え切れず死ぬ者も、必ず出る」

かなり恐ろしい試験である。

しかし、中忍を目指す者ならば乗り越えて然るべきだろう。

中忍ともなれば、BランクやAランクの任務に携わる事もある。

それらには必ずと言っていい程、忍同士の戦闘が絡んでくる。

負傷率ゼロのDランクや、一般的な武装集団が相手のCランク任務とは比較にならない過酷さだ。

これから行われる試験のように、極限の状態に追い込まれる事も珍しくはない。

だが、その追い込まれた状態でどう行動出来るかが、下忍と中忍を別つ境界線なのだ。

つまり、第二次試験で試されるのはそこである。

「続いて失格条件について話すわよ!」

アンコがシュビッ!と手を翳した。

「まず、1つ目・・・。
 時間内に天地の巻物を、塔まで持ってこれなかったチーム。
 2つ目。 班員を失ったチーム・・・又は、再起不能者を出したチーム。
 ルールとして・・・途中のギブアップは一切無し。 5日間は森の中!」

指が突き立つ度に、ルールが明らかになっていった。

「そして・・・もう1つ・・・。 巻物の中身は、塔の中に辿り着くまで決して見ぬ事!」

「・・・途中で見たら?」

「それは見た奴のお楽しみ♪」

ナルトの問いは、アンコの意味深な笑みに流された。

だが、隠されると余計に見たくなるのが人の性である。

「中忍ともなれば超極秘文書を扱う事も出てくるわ。 信頼性を見る為よ」

「成る程ね」

一応納得したが、ナルトはまだちょっと気になっているようだった。

「説明は以上。 同意書3枚と巻物を交換するから・・・。
 その後、ゲート入口を決めて一斉スタートよ!」

その言葉を言い終えると、アンコは表情を引き締めた。

「最後にアドバイスを一言―――死ぬな!」

受験生達は緊張を高め、既に臨戦体勢に入っているようだった。

「そろそろ巻物と交換の時間だ」

小屋に待機していた中忍が、受験生達を呼んだ。

アンコが説明している間に、小屋には黒い暗幕が取り付けられていた。

外で待っている受験生に、手渡される巻物の種類を分からなくする為である。

―・・・成る程。 各チームが渡された巻物の種類・・・。
 そして、3人の内、誰が巻物を持っているのかも分からない・・・ってわけか。
 ・・・イビキが言った通りだ。 この試験では、情報の奪い合いが命懸けで行われる・・・。

同意書にサインしたサスケが、自分以外の全員に厳しい視線を送る。

―・・・全員が敵!!
 此処にいる奴等の決意は固い。
 殺し合う事にもなる・・・ってわけだ・・・。

―フフ・・・同意書の意味・・・少しは分かったみたいねェ。

そんな受験者達の様子を、アンコは面白そうに眺めていた。

少しは丸くなったが、根本的な部分は変わっていないようである。

















やがて、巻物を受け取った受験生達は、各ゲートにて合図を待つ。







―ゲート16 キバ・シノ・ヒナタ―

「ひゃほおお! サバイバルならオレ達の十八番だ!
 ヒナタ、甘えは見せんじゃね・・・・・・ひィィィィィ!!?」

「ナルト君と5日間も一緒・・・ご飯も・・・寝る時も・・・春野さん・・・殺す・・・」

「・・・落ち着けヒナタ・・・」







―ゲート27 シカマル・チョウジ・いの―

「命懸けかよ・・・面倒臭ェがやるしかねーな・・・! (ナルトを狙うのは自殺行為だな)」

「チョコに・・・ポテチに・・・と」

「あ、あんたらね〜・・・」







―ゲート12 ナルトチーム―

―我慢出来なくなったら、テマリんとこに夜這い掛けに行こう。

―ナルトの奴、また碌でもない事考えてるんじゃないでしょうね・・・。

―こいつは端っから当てにしない方がいいな。







―ゲート20 音忍三人衆―

―フフ・・・やっとこの機会が来た・・・公然と我々の使命が果たせるチャンスが・・・。







―3番ゲート 音忍三人衆(女)―

「予定は?」

「ボクは彼を探すよ。 色々と話したい事もあるしね」

「・・・・・・私は?」

「適当に散歩して、受験生と会ったら巻物奪えばいいんじゃない?」

「・・・そう・・・」







―ゲート38 カブトチーム―

同じような服を着た3人が、一言も喋らず涼しげな笑みを浮かべている。







―ゲート6 我愛羅・カンクロウ・テマリ―

―うぅ・・・愛し合う2人が引き裂かれるなんて・・・。

―・・・・・・砂風呂・・・砂風呂・・・。

―敵チームは兎も角・・・テマリと5日間もいるのが怖い。







―ゲート15:謎の草忍三人衆―

「まずはルーキー狙いですね・・・」

「こっからは殺しても良いそうですから・・・・・・かえって簡単ですね・・・」

「ああ〜!! 迷う! 迷うわ!!
 サスケ君もいいけど、あっちの白髪の子もいい!!」

「「・・・・・・・・・」」







―ゲート44 月隠れチーム―

「44・・・縁起悪い数字だなぁ」

「私4って結構好きだよ?」

「ツクモがそう言うんならワシもぉ♪」

「ハイハイ・・・」







―ゲート41 ネジ・リー・テンテン―

―ガイ先生・・・ボクは頑張ります!

―まずはお茶に誘うべきか・・・それとも文通を申し込むべきか・・・。

―大丈夫・・・もしピンチになっても、きっとまたお姉様が・・・。







・・・・・・ホントに大丈夫かこいつら?

思わず尋ねたくなってしまう。

だが、時間は待ってくれない。

「これより、中忍選抜第二の試験! 開始!!」

腕時計が3時30分を示すと同時に、アンコが号令の合図を出した。

全てのゲートが一斉に開き、受験者達が大地を蹴る。

「くっ、ガキ共を探せ!!」

散々迷った末に、サスケの方を選択した草忍。

「あの3人でいいんですね!?」

「何回も言わせないでちょうだい!!」

未練を断ち切るように、他の2人に怒鳴り散らす。

「す、すいません!!」

彼らは自分が怒られる理由も分からないまま、移動速度を上げていった。



















―キバ・シノ・ヒナタ―

「とりあえず、全員塔を目指してるわけだろ・・・。
 だったら、出来るだけ塔付近に罠を張るのが利口だな」

出発地点からそんなに離れていない場所で足を止め、作戦を立てる8班のルーキー。

他の受験生に見つけて下さいと言わんばかりの行動だ。

しかし、実はこの行動は獲物を燻り出す為の誘い。

桁外れの探知能力を備え、事前に敵を察知出来る8班ならではの作戦である。

「おっとぉ、早速だぜぇ・・・」

キバの嗅覚が敵の存在を察知した。

「フ・・・ガキだな。 あんな目立つ所で・・・見付けてくれってか。
 気配には気付いたようだが・・・クク・・・。
 どうやらまだ、オレ達の居場所までは掴めてないな・・・」

黒いタイツのようなものを着た受験生達は、木の上に姿を隠し8班の様子を窺いながら嘲笑を浮かべていた。

彼らは既に勝利を確信し、自分が罠に嵌っているなど思いも拠らなかった。

「! くっ」

「どうした? 顔色が悪いぜ・・・ッ!?」

仲間の異変に気付いた時には、もう手遅れだった。

襟の隙間からグロテスクな頭を覗かせ、チュウチュウ音を立てて首に吸い付く巨大な蛭。

「何だそりゃ!?」

動転した受験生は、身を隠しているのも忘れて驚愕の声を上げた。

するとその真上の木から、夥しい数の蛭が降り注いだ。

「うぎゃあぁあぁ!!」

手持ちの武器で応戦を試みたものの、かなりの血液を吸われ木から転落した。

「うぅ」

「ぐっ・・・」

「ちくしょう・・・」

受験生の1人が、目眩を堪えながらも体を起こす。

「ん!?」

朦朧とした視界に、透明なワイヤーが見えた。

「うわあぁあ!!」

それに手首が触れた瞬間、凄まじい勢いで地面が遠退いていった。

「木ノ葉のトビヒルは発汗・体温を感知して、集団で獲物に飛び掛かる。
 ・・・その習性を利用して敵の逃げ道に罠を張る・・・いっちょあがり!」

網に捕獲され吊るし上げられた獲物を見上げながら、キバは得意満面に解説した。

だが、その声が意識を無くした受験生達に届く事はなかった。



















―ナルト・サスケ・サクラ―

「!」

「・・・・・・今の、人の悲鳴よね!?」

遠くから響いてきた絶叫に、移動していた7班が立ち止まった。

「な・・・何か緊張して来た・・・」

自分の置かれた状況を改めて実感し、サクラの胸に不安が過ぎる。

「常に3人で行動してれば大丈夫だ」

「そ、そうね。 サスケ君がいれば大丈夫だものね」

ぶっきらぼうな言い方だったが、サスケの言葉に安心する。

ナルトも戦闘能力は一級品なのだが、ここぞと言う時に当てにならないので期待はしなかった。

「何かまた小便したくなってきた・・・」

悲鳴には興味なさげなナルト。

「レディの前で何晒そうとしてんのよ!! 草陰行きなさいよバカ!! (サスケ君ならOKだけど)」

すぐ傍でチャックを下ろそうとしてサクラにぶん殴られ、ナルトはめんどくさそうにしながらも大人しく草陰に消えた。

「あ〜、すっきりした〜」

少し経って、満たされた顔のナルトがチャックを上げつつ戻って来た。

だが、サスケは違和感を感じた。

「だからレディの前でそーいう・・・・・・」

サクラは特に何も感じず、もう一度拳を振り上げた。

「!! え!?」

拳骨が当たるよりも先に、ナルトの体が吹っ飛んだ。

それは、サスケの裏拳によるものだった。

「サ・・・サスケ君・・・幾ら何でもそこまでしなくたって・・・・・・」

木の幹に叩き付けられたナルトを見て、サクラは流石にやりすぎだと思った。

「な・・・なにしやがんだ!!」

「本物のナルトは何処だ?」

口から血を流すナルトを、剣呑な視線が貫いた。

サスケは腰を落とし、何時でも動ける体勢を取っている。

「え?」

言っている意味が分からず、疑問符を浮かべるサクラ。

「きゅ・・・急に何わけわか―――」

「手裏剣のホルスターが左脚に付いてる・・・あいつは右利きだ。
 それにあいつがこの程度の不意打ちを避けられない筈がない。
 さぁ、その下手糞な変化を解いてもらおうか・・・偽者野郎!」

サスケがそう言うと、ナルトはくぐもった声で笑った。

「アンラッキー! バレちゃあ仕方ねェ!!」

煙る白煙。

その中から現れるのは、白装束を纏った雨隠れの忍。

口に酸素ボンベのような物を装着している。

「巻物持ってんのはどっちだ? 素直に渡せば、命だけは助けてやるぜ?」

高圧的な質問を無視し、サスケとサクラが身構える。

「チィ! こうなったら実力行使だ!」

雨隠れの下忍は低い前傾姿勢になり、クナイを構えたサクラに疾走した。

だがサスケがそれを許さなかった。

【火遁 鳳仙花の術!!】

跳躍しながら素早く印を組み、サクラへの道筋を潰すように炎の雨を降らせる。

だが雨隠れの下忍は、ジグザグに走行して回避。

更に目標をサクラから変更し、クナイを引き抜いてサスケへと飛ぶ。

するとサスケも咄嗟にクナイを抜いた。

2人の得物が空中で火花を散らし、高い音を響かせた。

「チィ!」

雨隠れの下忍は接近戦は分が悪いと判断し、一度距離を取って体勢を立て直そうとする。

逆にサスケは、距離を取らせまいと追従する。

だがその途中で、まだ用を足しているナルトを眼下に見つけた。

―あのウスラトンカチ!!

『うあ゛〜〜〜』なんて気の抜けた声に、サスケは僅かな隙を作ってしまった。

「ホラ、隙ができたァ! ラッキー!!」

それを目聡く見抜いた雨隠れの下忍は、空中で反転してクナイを投擲した。

「チィ!!」

サスケは次の足場にする予定だった木の枝を盾に使い、飛んでくる複数の刃から身を護る。

―!! 起爆札・・・!?

枝に刺さった刃物の中に、起爆札の括り付けられたクナイが混ざっていた。

しかも札の尻に火が付いており、爆発寸前である。

サスケは咄嗟に回避しようとしたが、完全には避けきれず爆風の餌食となった。

「くっ」

所々に小さな傷を作りながらも、何とか着地する。

「これぞラッキー! 動くと殺す! 巻物を大人しく渡せ!!」

だがその間に背後に回り込まれ、クナイを突き付けられた。

「サスケ君!! 上!!」

「!!」

サクラの叫び声に、サスケだけでなく雨隠れの下忍までも頭上を見た。

そこに見えたのは、一直線に飛んでくる黒光りする鋼。

雨隠れの下忍はすぐに上に飛び、危機を逃れた。

―おせーぞナルト!

サスケはクナイの切っ先が地面に触れる前に、チャクラを練った足の裏を刀身に添わせた。

―チャクラで吸着!!

クナイは重力に逆らって、靴の裏にピタリと吸い付いた。

サスケはクナイの勢いを殺さず方向だけを変え、いや、更なる勢いを加えて上に蹴り出す。

そして、自身も写輪眼を発動させながら跳躍する。

これは、雨隠れの下忍がクナイを避けると読んでの行動だった。

「うわぁ!!」

読みは当たり、クナイは外れた。

だがサスケは既に雨隠れの下忍に肉薄しており、彼が空中で身を捻った直後その左肩にクナイを突き刺した。

「サスケ君・・・・・・」

「手荒いがこうするしかなかった・・・! ボケボケすんな!
 こいつ1人とは限らない! いいか! 気を抜いたら本気で殺されるぞ!」

血の気の引いているサクラに、顔を返り血で染めたサスケが叫ぶ。

―くっ・・・利き腕を・・・こいつはアンラッキー・・・!
 気配を消す為、単独で来たのが仇になったか・・・。

「!」

雨隠れの下忍はサスケを突き飛ばし、一目散に逃げていった。

―逃げたか・・・。

サスケは深追いしようとはしなかったが、気配が遠くに消えるまで警戒を解かなかった。







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