NARUTO
〜九妖忍法帳〜 40話目




砂の三兄弟との騒動から6日後の朝。

7班の3人はカカシに呼び出され、鳥居が立ち並ぶ橋の上に集まっていた。

「やあ! お早う諸君!!」

声が降って来る。

上を見上げると、鳥居に乗っかったカカシが片手を上げていた。

ナルトのパパから受けた焼き入れの効果は、まだ継続中のようである。

「待たされなくて済むのはいいけど、やっぱり気持ち悪いわよね」

「・・・そうだな」

「はっはっは。 時間厳守は忍以前に人として当然だよ」

口布の下から寝言垂れ流しつつ、鳥居の上から姿を消して3人の前に現れる。

「いきなりだが、お前達を中忍選抜試験に推薦しちゃったから・・・」

「!」

「何ですって〜!!」

「マジで?」

驚き、怒り、喜び。

3人のリアクションはそれぞれ違う。

「志願書だ」

だがカカシは気にせず、『中』と書かれた紙を差し出した。

多分『中』の文字は中忍を表しているのだろう。

「・・・ま、推薦は強制じゃあないんだけどね。 受験するかしないかを決めるのは、お前達の自由だ」

3人は願書に目を通しながら説明に耳を傾ける。

「受けたい者だけその志願書にサインして・・・明日の午後4時までに、学校の『301』に来る事。 以上!!」

それだけ言ってカカシは何処かへ行ってしまう。

3人は顔を見合わせ、解散する事にした。









帰り道、7班3人の胸中にはそれぞれの想いがあった。

「くふふ♪ 中忍試験♪ 中忍試験♪ (グッドタイミング! カカシも偶には役に立つじゃん!)」

テマリを思い浮かべて破顔するナルト。

「・・・・・・(アイツと戦えるかもしれない・・・)」

我愛羅を思い浮かべて武者震いするサスケ。

理由は決定的に違うが、とりあえず2人とも上機嫌だった。

―・・・・・・・・・私・・・嫌だ・・・。

そんな中、サクラだけが浮かない顔をしていた。

前を歩く2人とは対照的に、足取りも重い。

―・・・サスケ君・・・ナルトにすらついて行けないのに・・・中忍選抜試験になんて・・・。

立ち止まったサクラは、憂鬱そうに頭を垂れた。

『はっきり言って、お前の実力はナルト以下だぞ』

否定出来ない現実が重く圧し掛かる。

自分自身理解していた事だが、面と向かって指摘されたのが辛かった。

しかもサスケから言われたのだから、尚更だった。









―次の日―

酒酒屋で待ち合わせをする7班。

「・・・・・・よぉ」

最後に到着したナルトが、到着を待っていたサスケとサクラに向かって片手を挙げた。

昨日まで上機嫌だったのに、何故か覇気が感じられない。

その原因は、着ている服装にあった。

ナルトの着衣は、何故か袴。

弓道とか合気道で着るような、白と黒のあれである。

これは別に好きで着ているわけではない。

朝起きたら、持っている服が根こそぎ無くなっていたのである。

んで、代わりに用意されていたのが今着ている服だったのだ。

ちなみに畳まれた服の隅には、こんな書置きが添えてあった。

『主へ。 理由は言えんが、今日一日それで過ごしてくれ。 というか命令だ、過ごせ。
 当然の事ながら拒否権は無いものと思え。 まぁ理由はおいおい分かるだろう。
 PS、主の服は一着残らずクリーニングに出しておいたので、別の服を探しても無駄だ。 by玉藻』

読み終えた瞬間に破り捨て、一言文句を言ってやろうと玉藻を探した。

が、玉藻どころか全員が出払っていた。

ナルトはすぐに、一家全員が共犯者だと確信した。

そしてかなり癪だったが、服が無い以上大人しく従うしかなかったのである。

まぁナルトの事情はさておいて。

「・・・オハヨ・・・」

サクラもまた元気がなかった。

昨夜は不安と緊張で一睡も出来ず、今朝は食事が喉を通らなかった。

その為、あまり顔色が優れない。

それでも、サスケとナルトに悟られまいと、作り笑いを浮かべて平静を装っている。

―・・・・・・サクラの奴・・・何か変だな・・・。

だがサスケは、サクラの様子がおかしい事に気付き訝しげな顔をしていた。









―忍者アカデミー―

生徒達が下校した放課後の校舎に、中忍選抜試験の志願者達が続々と集まっていた。

現在時計の針は3時を回った処。

受け付けの時刻にはまだ間がある。

校庭に居る受験生達は話をしたり体を動かしたり、それぞれの方法で暇を潰している。

で、肝心のナルト達はというと―――。

「ふ〜〜〜ん、そんなんで中忍試験を受けようっての?」

受け付け場所である教室に向かう途中で、思わぬトラブルに出くわしていた。

『301』と書かれたプレートのある教室の前。

その入り口に木ノ葉の額当てをした2人組みが立ち塞がり、部屋に入ろうとする受験生達を殴り飛ばしていた。

彼らの足元には、口の端から血を流して尻餅を突く少年の姿がある。

その容姿を言葉で表すなら・・・・・・濃い。 の一言に尽きる。

今時珍しいオカッパ頭。

極太の眉と妙に長い睫毛。

体に吸い付くような緑のタイツは、保護色の筈なのに毒々しい輝きを放つ。

ベルトのように腰に巻いてある額当てから、木ノ葉の忍である事が窺える。

―・・・・・・・・・ガイ?

ナルトはオカッパの少年に非常に良く似た上忍を思い浮かべ、頬の肉を思いっきり引き攣らせた。

「止めた方が良いんじゃない、ボクたち? ケツの青いガキなんだからよォ・・・ズズッ」

「そうそう・・・」

この場の全員をバカにしている口調だった。

しかし、面と向かって言い返せる者も、2人組みに近付こうとする者も居なかった。

集まった受験生達は、完全に呑まれていた。

「お願いですから・・・そこを通して下さい」

そんな中、チャイナ服を着たお団子頭の少女が、困り果てた顔をしながらも前に出た。

少女は入り口に向かって歩を進めるが、射程距離に入った瞬間2人組みの片方の拳がぶれた。

そして、廊下に鈍い音が響いた。

弾き飛ばされた少女は、床に叩き付けられる事を覚悟した。

たが痛みもなければ衝撃もなく、代わりに温かい感触が訪れた。

「大丈夫?」

声を失ったのは少女だけではなかった。

騒がしかった廊下が一気に静まり、何かに魅入られたような驚嘆の声が上がる。

そこに現れた人物は、それ程までに美しかった。

腰に届きそうな漆黒の髪。

雪原を想わせる透明な肌。

繊細な顔立ちに添えられた気持ち程度の薄化粧。

身に纏う雰囲気は、儚さと強さ、優しさと厳しさ・・・相反する二つの物を内包している。

まさに、万人を魅了する美女。

―・・・・・・・・・・・・は、白ぅ!?

ただ正確には、美女に見える野郎である。

股の間には、ヘチマ1本とプチトマト二個が装備されているのである。

―こんな所で何してんだよアイツ!? てか女装!? え!? どういう事!?

ゴシゴシと目を擦りながら、激しく狼狽するナルト。

「どこか痛む所はありませんか?」

それを他所に、白は少女の頬をやさしく撫でる。

「ひゃ、ひゃい! だいじょうびゅでひゅ!!」

「そうですか・・・・・・よかった」

真っ赤になって噛みまくる少女を立たせると、白の眼付きが鋭くなった。

「か弱い女性に手を上げるのは、些か感心出来ませんね」

凛とした声が、2人組を射抜く。

「え、あ、う・・・! す、すいませんでした!」

「バ、バカかお前! 何謝ってんだよ!?」

「ハッ!?」

少女を殴った方の下忍は白に見惚れ反射的に謝ってしまったが、相方に肘で小突かれて正気に戻った。

「い、いいか!? これはオレ達の優しさなんだぜ!?」

だがしどろもどろの口調と焦りまくった態度の所為で、威圧感はほぼ皆無。

その為、呑まれていた受験生達が余裕を取り戻し始めた。

『なんか言い訳臭くないか?』

『そうだな、いまいち説得力ないよなぁ』

なんて声まで聞こえてくる。

「ちゅ、中忍試験は難関だ! かく言うオレ達も3期連続で合格を逃してる!!
 この試験を受験したばっかりに、忍を辞めて行く者や再起不能になった者をオレ達は何度も目にしたんだ!!」

「そうなんですか。 でもだからと言って、あなた達が女の子を殴っていい事にはなりませんよね」

白の冷静なコメントに、背後に控えた受験生たちが大きく頷く。

『そうだそうだ! 女殴っといて自分を正当化してんじゃねぇよ!』

『つーか、浪人してるくせに偉そうな事言ってんじゃねーつーの』

『ビビッたんなら家帰ってマミーのオッパイでも吸ってろよ』

『ママー! うひゃひゃひゃひゃ!』

『プッ! ダサッ! イモ引いてやんの!』

『『オレ達の優しさだ』とか言っといて、本音は競争率を減らしたいだけなのね』

『まぁ何回も落ちてるから必死なんだろ?』

さっきまで何も言えなかったのに、言いたい放題である。

「るっせんだよお前ら!! 中忍って言ったら部隊の隊長レベルだぞ!?
 任務の失敗に部下の死亡! それは全て隊長の責任なんだ!! ズズッ!! ズビーッ!!」

興奮のあまり、鼻炎が悪化する。

「ここに集まった以上、覚悟の上でしょう。 貴方に言われるまでもなく」

『そうよ、あんた何様のつもりよ?』

『てか、ガキガキって言ってるけどお前こそガキじゃん』

『いるよなぁ、ああいう無理に背伸びする奴』

『アイツきっと、ガキの頃好きな女の子苛めてたタイプだぜ』

謂れのない中傷に、コテツは拳を激しく震わせた。

「んのガキャぁ・・・!」

「お、落ち着け! 落ち着けってコテツ!
 そうだ、深呼吸! 深呼吸しよう、な! ほぉら吸ってー・・・吐いてー・・・吸ってー・・・吐いてー・・・」

相方に背中を擦られ、深呼吸を十数回繰り返す。

その結果、どうにか殺意を封印。

「お前らみたいなガキに中忍が勤まる筈ないだろ!! どっちみち受からない者を此処でフルイにかけて何が悪い!」

「だからそれを確かめる為に試験を受けるんじゃないですか」

白は静かな声で、諭すように返す。

だが背後の受験生達の声は、まったく関係のない野次になっていた。

―ああ、もうこんな仕事やだ・・・。

コテツは思った。

大体お前ら此処に張ってある幻術にも気付いてないくせに、何でそんな横柄なんだよ。

こっちだって上司の命令でわざわざ相手してやってんだからさぁ。

確かに3期連続で落ちたっていうのは事実だけど、そりゃ昔の話で今じゃ結構優秀な中忍なんだぞ。

・・・・・・もう少し口の利き方に気をつけろよ。

ああ、何か鬱になってきた。

もう全てを投げ出して帰りたい。

・・・泣きの入ったコテツが虚ろな目で天井を見上げた時。

「正論だな・・・・・・だが、オレは通してもらおう。

誹謗中傷の嵐の中、諦めていたまともな返事が返ってきた。

「そして、幻術で出来た結界をさっさと解いてもらおうか・・・・・・」

人垣を抜けて前に出るサスケ。

コテツは一瞬フリーパスにしてやろうかと思った。

「オレは3階に用があるんでな・・・」

「何言ってんだアイツ・・・」

「さあ?」

サスケの言葉に、大半の者が首を傾げた。

だが言葉の意味を理解している数名は、僅かに眼を鋭くした。

「気付いたのか・・・貴様!?」

サスケは挑発的な笑みを返すと、サクラの方を振り向いた。

「サクラ、どうだ!? お前なら一番に気付いてる筈だ・・・」

「え?」

「お前の分析力と幻術のノウハウは・・・・・・オレ達の班で一番伸びてるからな・・・」

―・・・・・・サスケ君・・・。

サスケから初めて向けられた笑顔。

始めはきょとんとしていた顔が、次第に綻んでいく。

「(・・・ありがと・・・) フフ」

サスケに認めてもらえた喜びが、先日から心の迷いを払っていった。

「・・・勿論。 とっくに気付いてるわよ。 だって此処は2階じゃない・・・」

サクラがそう言った途端、『301』だったプレートが『201』へと変わった。

「ふ〜〜〜ん・・・中々やるねェ」

サスケ達のやりとりの間に調子を取り戻したコテツが、ニヤリと笑った。

「でも・・・見破っただけじゃあ・・・ねェッ!!」

「!!」

間合いを一瞬でゼロにし、両手を床に突いて下から跳ね上げるような蹴りを放つ。

サスケは即座に反応し、地面スレスレにある顔面を狙って蹴りを出した。

「「!!」」

だが2人の間に体を滑り込ませ、2発の蹴りを同時に止めた者が居た。

それは、最初に殴られていたオカッパの少年だった。

―速いッ!
 双方の攻撃の軌道を完全に見切って、蹴りと蹴りの合間に身体を滑り込ませた!? こんな事って・・・!!

サクラは目を見開きながらも少年の動きを分析する。

たった一瞬の出来事だったが、それでも十分身体能力の高さが窺えた。

―この人・・・さっきまで殴られていた人とは、まるで別人だわ!!

息を呑むサクラを前に、オカッパの少年が掴んでいた足首を放した。

―オレの蹴りを腕で・・・!! それに何だ・・・!! コイツの腕のチャクラは!?

コテツは拍子抜けしたように床に倒れ込み、サスケは困惑しつつ青白い光を纏った腕を凝視していた。

「フー・・・」

息を吐くオカッパの少年。

「おい」

とそこで、背後から歩み寄ってきた長髪の少年が不機嫌そうに声を掛けた。

彼の純白の双眼は、明らかに批難の色を灯している。

「下手に注目されて警戒されたくないと言ったのは、お前だぞ」

この2人にさっきの団子頭の少女を加えた3人は、実は同じ班の仲間である。

まず、オカッパの少年が【ロック リー】。

簡単に言えば、ミニチュア版のガイである。

次に、お団子頭の少女が【テンテン】。

武器・・・主に飛び道具を得意としている。

最後に、純白の瞳を持った少年が【日向 ネジ】。

日向の名からも分かるように日向一族の人間で、昨年度NO.1ルーキーである。

ちなみに、彼らの担当上忍はあのガイだったりする。

「お前、約束が違うじゃないか」

「だって・・・・・・」

ネジの叱責を他所にリーは、頬を染めてチラッとサクラを見た。

視線にはかなりの熱が篭っている。

それを見たネジは、諦めたように溜息を吐いた。

「・・・まったく。 おいテンテン、お前から何か言ってや・・・」

もう片方の仲間に目を向け、分かり易く眉を顰めた。

テンテンは胸の前で両手を組み、リー以上に熱の篭った眼差しをしていた。

視線が向いている先に居るのは、白だった。

ネジの表情はまたもや曇り、どうにも形容し難いものになった。

―!? ・・・こいつら、打たれた跡が消えてやがる・・・・・。

その一方でサスケは、リーやテンテンの顔の痣が消えている事に驚いていた。

だが折角シリアスやってるサスケに絡まず、リーはサクラの方に歩き始めた。

「あの―――」

「!」

自分の前でリーが歩みを止め、思わず眉を寄せるサクラ。

「ボクの名前は【ロック・リー】・・・・・・。 サクラさんと言うんですね・・・」

リーは嬉しそうに名乗りを上げると、

「ボクとお付き合いしましょう! 死ぬまで貴方を守りますから!!」

右手の親指を力強く突き上げ、白い歯を光らせてウインクした。

「絶対・・・イヤ・・・。 あんた、濃ゆい・・・・・・」

サクラは熱烈な求愛を手厳しいコメントと共に一刀両断、リーの両肩はガックリと垂れ下がった。

「あ〜あ・・・奇特な人間の貴重な申し出だったのになぁ・・・」

ナルトは非常に失礼なコメントを漏らした。

「なんですってぇ!!」

当然サクラは拳を振り上げたが、既にナルトは離れた場所に居た。

そして、後から白の肩をポンポンと叩いていた。

「またナンパしてるし・・・・・・本気で節操無いわね」

サクラも一度会っている筈なのだが、女装の所為もあって正体に気付かなかった。

「何してんだおめぇ・・・」

「あ、ナルト君じゃないですか・・・こんな所で会うなんて奇遇ですね。 ナルト君も出るんですか? 中忍試験」

振り返った白が、爽やかな笑顔で言った。

一方ナルトは、台詞に引っ掛かりを覚える。

「・・・『も』?」

「はい、ボクも出場するんですよ」

「・・・・・・・・・は?」

思わず聞き返したら、ニコニコと自分を指差しながらなんでもないように言ってくれた。

「あれ? 初耳でしたか?」

初耳である。

まったくの初耳である。

というか、昨日の夜までそんな素振りすら見せていなかったではないか。

ナルトは眉間を押さえながらそう思う。

「・・・・・・・・・・・・2〜3質問していいか?」

「? ええ、なんなりと」

「まず、それは?」

白の額を指差すナルト。

そこには、見た事もないマークが刻まれた額当てが巻いてある。

木ノ葉・霧・砂・岩・雲・草・滝・雨・音。

そのいずれにも該当しない三日月の紋章。

「額当てですけど?」

「や、そうじゃなくて・・・・・・まぁいい、次の質問だ。 どうやって参加資格を手に入れたんだ?」

「玉藻さんが里長に頼んでくれたみたいです」

「・・・・・・・・・何を考えてんだアイツは・・・」

ナルトは床にしゃがんで頭を抱えた。

玉藻の行動が予測不可能なのは昔から承知していたが、それはツクモ誕生の一件を最後に鳴りを潜めていた筈だった。

が、どうやらその悪癖が本日目出度く再発したようだ。

多分、服の一件も何か関係しているのだろう。

確証はないが確信するナルトであった。

「じゃあ、その女装は・・・」

ここにきて、素朴な疑問を口にする。

「・・・・・・これは・・・雪さんに無理矢理・・・」

途端に白は下45度に顔を背け、絶望的な雰囲気を纏い始めた。

「あ、いや。 それ以上言わなくていい・・・・・・悪かった。 (せっちゃんも一枚噛んでんのか)」

腫れ物に触るような態度で話を切り上げたナルトは、わざとらしい咳払いをして質問を変えた。

「最後に聞くが・・・・・・お前の他に誰が来てる?」

中忍試験はスリーマンセルが原則だ。

如何に個人技量が優れていても、1人では受験出来ない。

「・・・・・・すいませんが、それについては口止めされてて・・・」

「誰にだ?」

「それもちょっと・・・」

白は済まなそうにしているが、納得のいかなかったナルトは更に食い下がろうとした。

だが。

「退きなさい! 邪魔よ!!」

「おふっ!?」

いきなり真横から張り飛ばされ、壁に叩き付けられた。

いや、めり込んだ。

ちなみに、突き飛ばしたのはテンテンである。

「だ、大丈夫ですか・・・?」

「あ、あんま大丈夫じゃねぇ・・・」

白が助け起こそうと手を伸ばし、ナルトはそれを掴もうとした。

が、

「あの!!「グハッ!!」

2人の手が重なるのを邪魔するように、間に割って入ったテンテンに再度張り倒された。

ナルトは完全に沈黙するが、突き飛ばした張本人は視線さえ向けず戸惑う白に向かい合う。

そして、意を決してこう叫んだ。

「お・・・・・・お姉様って呼ばせて下さい!!」

ドーン!

背後で火山が爆発し、白は魂が抜けたような顔になった。



お姉様・・・・・・お姉様・・・・・・お姉様・・・・・・お姉様・・・・・・



頭の中に反響する言霊。

それは女顔がコンプレックスである白にとって、最強にして最悪のタブーであった。

「・・・・・・・・・ダメです」

毒の壺から搾り出すようにそう呟き、白はショックで固まるテンテンに背を向けた。

去って行く背中には、絶対零度の風が吹き付けていた。

「おい待て! お前、名は何と言う・・・・・・」

白に興味を抱いたネジが、ほっといて下さい的なオーラを無視して声を掛ける。

「・・・・・・【如月 白兎】」

これは受験用に考えた偽名である。

だがネジはその名を聞くと、何故か何度も繰り返し呟いた。

まるで魂に刻み込むように真剣な表情で・・・。

「と、歳は?」

「・・・・・・15ですけど」

内心早く去ってしまいたいと思う白ではあるが、生来人が好い為聞かれたら答えてしまう。

「しゅ、趣味は何だ」

徐々に質問がおかしくなる日向始まって以来の天才。

しかも、ほんのりと頬が染まっている。

「料理と植物(薬草)栽培ですけど・・・もう行っていいですか?」

「つ、次で最後だ・・・。 こ、好みのタイプは・・・?」

ネジは勇気を出してそう尋ねた。

「・・・・・・」

しかし、最後の質問が白を怒らせてしまった。

「・・・・・・無視された」

乱暴な足音と共に去っていく背中を見詰めながら、ネジはホロリと涙を流すのであった。

「・・・・・・・・・」

名を尋ねようとしたサスケだったが、ネジの悲しい背中を見て考えを改めた。

そして、一列に並んで壁に額をくっ付けているリー・ネジ・テンテンを見ながら、中忍試験に出る奴は実力は飛び抜けているが性格がアレだなと密かに思った。

「さあ! サスケ君、ナルト、行くわよ!!」

サクラは吹っ切れた表情でサスケの手を握った。

ナルトは壁にめり込んだまま反応しなかった為、襟首を掴んで引っ張っていく事にした。









「クククッ・・・あれがカカシとガイの秘蔵っ子ってガキ達か・・・」

教室の入り口を塞いでいた下忍2人が、廊下の影から受験生達の姿を見送っている。

ちなみに、今笑っている相方の方はイズモという名前だ。

今更だが・・・。

「まあ、取り敢えず志願書提出は通過って所だな・・・」

「・・・・・・ああ」

イズモの言葉にコテツがどうでもよさそうに頷く。

コテツはさっきの一件で、精神的に疲れていた。

「今年の受験生はクソ生意気な奴ばっかだな・・・・・・後で覚えてろよ」

変化を解いて大人の姿に戻っても、性格の方はあまり変わってないコテツ。

「・・・・・・仕事に感情持ち込むなよ」

イズモは肩を竦めながら、仕事が終わったら酒でも奢ってやろうと思うのだった。







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