NARUTO
〜九妖忍法帳〜 37話目
白組のメンバーが圧倒的不利な戦況を覆す中、ナルトもまた己の体と戦っていた。
「・・・・・・・・・ふぅ」
上着のポケットから取り出した一枚の写真に微笑み掛ける。
写真写っているのはナルトと玉藻とツクモ。
父と母と娘。
これでもかといわんばかりの会心の笑みを浮かべた玉藻がツクモを抱き抱え、それを守るようにナルトが玉藻の肩に手を乗せている。
一言で済ますなら家族写真。
だがナルトにとっては宝物である。
横でドンパチやっている最中だというのにニタニタと笑うナルトは、傍から見たら正直アブナイ人にしか見えない。
誰も見ていないのが唯一の救いである。
「ツクモ・・・・・・もうちょっとの辛抱だ。 ・・・お父さんすぐ帰ってくるから」
辛抱という言葉が娘に向いているのか己に向いているのか、既に本人にすら定かではない。
とりあえず愛娘に語り掛ける事で、昇天しかかっている意識を繋ぎ止めていた。
しかし、
【火遁 鳳仙火!!】
叫び声から数秒して、愛娘の顔からブスブスと黒い靄が上がり始めた。
熱で思考が鈍っているナルトは、何が起きたのか分からなかった。
理解したのは写真に生じた針の先端程の穴が、虫食いのように全体に広がり終わった後だった。
「あ、あ・・・・・・あああぁあ」
消し炭と成り果てた宝物が、ボロボロと指の合間をすり抜け、地面に落ちるなり風に攫われて行く。
絶望に打ちひしがれたナルトは、地面に膝を屈した。
そして悲しみを十二分に噛み締めながら、己の宝を灰にしくさった輩を視界に入れた。
「ふ・・・・・・・・・ふふふ」
四つん這いのまま肩が揺れている。
「ふはははははは・・・・・・」
弱り切っていた体に憎悪(ちから)が漲り、垂れ下がった鼻水がみるみる引っ込む。
「は――――――っはははは!」
黒いチャクラが際限なく溢れ出し、頭痛で鈍っていた思考と視界をこれ以上ない程クリアに戻す。
「うちはぁああぁああ!!!」
ナルトは涙を蒸発させ、血液を沸騰させ、地面を爆発させた。
「キッサァマアァぁああああぁああぁぁぁあ!!!!」
驚異的な速度で飛び込んできたナルトは、有りっ丈の恨みを乗せて跳び蹴りを叩き込んだ。
着地した後も勢いは衰えない。
踵でブレーキを掛けているにも拘わらず、かなりの距離を滑る。
一方テンプルに直撃を受けたサスケは、物理法則を無視し縦に回転しながら飛んで行く。
飛距離、26m34cm。
途中で樹に激突しなければ、更に高い記録を記録しただろう。
もっともナルトにしてみれば普段の10%にも満たない威力だが、サスケにとっては命に関わる一撃だった。
防御以前に反応も出来ていなかった。
「「「「・・・・・・・・・」」」」
一瞬の出来事に皆の目が点になった。
思考は完璧に固まっており、事の成り行きをただ呆然と見守るしか出来ない。
ナルトはそんな視線の中、ゴゴゴゴゴ! と天を焦がす勢いでチャクラを吹き上げながら、白目を剥いて泡を吹いているサスケに歩いて行く。
「うちはぁぁあぁあ・・・・・・てめぇは絶対にやっちゃいけねぇ事をしたぁ!!!」
紅に染まった瞳をギラギラさせ、チャクラと同じく黒々とした殺意を背に背負っている。
しかもそれらは秒を刻むごとに膨れ上がり、周辺に存在する全てのものを無差別に怯えさせた。
演習場から音という音が消え失せる。
鳥 ・ 獣 ・ 昆虫 ・ 植物。
揃いも揃って呼吸を止め、演習場に降り立った支配者の意識に触れないよう勤めている。
だが、そうせずともナルトの感覚器官が認知しているのは獲物は唯一人。
「死ねや!!」
失神しているサスケの顔面に、ヤクザキックが刺さる。
ジャストミート。
寄り掛かっていた樹からずり下がり、地面に横たわってビクンビクン痙攣するサスケ。
しかし、ナルトはまだ止まらない。
虫の息になっているサスケの髪を乱暴に掴んで引き起こし、
「だっしゃッ!」
見事なバックドロップをブチかました。
しかも土の上に落とすなど生温いと言わんばかりに、捻りを加えて後頭部が樹の幹に直撃するようにコントロールしている。
「きゃああぁぁあぁああ!! サスケク―――――ン!!?」
サクラの絶叫が響く。
ちなみに何故サクラが意識を取り戻しているのかというと。
纏わり付いていた寄壊蟲がナルトの放出したチャクラを逸早く察知し、食事をエスケープして宿主の中へ引き篭ったからある。
お陰でサクラは蟲から解放される代わりに衝撃の瞬間を目撃してしまい、再び泡を吹いて気絶したのだった。
そして決定的シーンを見た者は他にも大勢いた。
「い、今・・・グシャッって聞こえたわよね・・・」
「お、オレにも聞こえたけど・・・た、多分気のせいだと思う・・・」
只ならぬチャクラを感じた為、影から解放してもらって駆つけた上忍2人が、致命的な一発を貰った教え子を見て青褪めている。
「・・・・・・サスケの奴・・・死んだんじゃねーのか」
「・・・・・・確率高ぇな」
シカマルとキバは、大粒の汗を垂らしながら黙祷を捧げた。
「ナルトって強かったんだね」
「う、うん」
暢気に菓子を食っているチョウジに、ヒナタが嬉しそうに頷く。
サスケの心配は特にしていないらしい。
「でかした」
「・・・・・・なんでニヤニヤしてんのよ」
いのはガッツポーズをしたシノに顔を引き攣らせている。
まぁリアクションは人それぞれだが、最早演習どころではない。
今こうしている間にも、ドガ! グシャ! という危険極まりない音や、オラオラオラ! 無駄無駄無駄! てな感じの声が聞こえてくる。
サスケは背後の樹と間の開かない打撃によって宙に浮かされ、ガタガタと激しく揺れ続けている。
ナルトのコンディションが最悪なのでどうにか原型を留めていられるが、早く止めねばマヂで息を引き取ってしまう。
「お、おい! もう止せ!」
我に返ったカカシ達がナルトに向かって走り出した。
「オレ達勝ったぞ! 勝ったからその辺にしとけ!」
「やかましい! 勝ち負け云々の前にコイツは生かしちゃおかねー!!」
「そうだな。 どうせなら徹底的にやっておいたほうが良い」
「煽んなシノ!! つーかお前も手伝え!!」
「拒否する。 何故なら、オレはうちはをあまり好きではないからだ」
「バカ言ってないで早く止めなさいって!!」
「嫌だ」
「だー!! 放せー!!! 殺らせろ―――――――――!!!!!」
カカシを先頭に数人掛りで羽交い絞めにしたが、この暴走は正午・・・ナルトが娘の食事の準備を思い出すまで続いた。
―木ノ葉病院―
騒ぎが治まってから1時間後。
薬品が持つ特有の匂いに包まれた小奇麗な建物の廊下で、カカシはややげんなりとした表情を浮かべていた。
死に際まで追い込まれたサスケと、気絶してから中々意識を取り戻さないサクラ。
サクラはまだいいとしてサスケには早急の治療が必要だった為、カカシは下忍達を家に帰らせ病院に駆け込んだのだった。
ちなみに、ナルトはサスケをボコにした後一人でさっさと帰って行った。
「・・・入院ですか?」
「はい」
治療が終わるのを待っていたカカシの元へやってきた看護婦が、手に抱いたカルテに目を通しながら経過を報告していた。
「春野さんは身体的なダメージはありませんが、精神的ショックが大きかったのか所々記憶の混乱が見られます。
おそらく2〜3日もすれば落ち着くと思いますが、まぁ今日のところは念のため入院という形を取らせていただきますのでご了承下さい」
サクラは元々怪我をしているわけではなかった為、カカシが気懸かりなのはサスケの方だった。
「はぁ・・・それで、サスケの方は?」
「うちはさんの容態ですが、全身打撲に加え強い脳震盪を起こしています。 でもご安心下さい。
医師(せんせい)に上級医療班の方を手配していただいたので、1週間程入院すれば退院出来ます」
サスケは里のあらゆる場所において何かと融通が利く。
なんせ木ノ葉で最後の写輪眼継承者なのだ。
万が一死なれでもしたら、里にとって大きな損失となる。
そうなれば担当であるカカシだけでなく、治療に当たった病院側まで責任を問われかねない。
故にサスケは必要以上の厚遇が許され、受け付けも手続きもなく殆ど待たされずに検査と治療を済ませ、入院まですんなり漕ぎ着けた。
この分だと、退院するまで設備もスタッフも最高のものを用意される筈だ。
看護婦は一週間と言っているが、サスケの退院は予定よりも早まると思われ、一応は一安心ではある。
しかしながら、監督不行き届きで上層部から小言を言われ、さらに今回の事後処理に協力し待合室で報告を待っている紅からも色々と言われるカカシとしては頭が痛かった。
「では、私はこれで」
「どうも、お手数をお掛けしました」
「いいえ、どういたしまして」
軽い会釈をして立ち去る看護婦。
「はぁ〜・・・」
白い背中を見送ったカカシは、ガックリと肩を落とすのだった。
―うずまき邸―
カカシが病院で溜息を吐いている頃、ナルトはズタボロにしたサスケを記憶の片隅に追いやり、実家で幸せな一時を満喫していた。
家に辿り着いた時は瀕死の状態だったが、雪の部屋から勝手に拝借した鎮痛剤と滋養強壮剤のお陰で体調も多少持ち直している。
まだ頭の中に重さが残っているものの、娘の昼食を無事に作る事が出来たので言う事は何もない。
「どうだツクモ、美味かったか?」
「うん、すごく美味しかった!」
気合と努力と根性で作り上げたミートスパゲッティーは大好評だった。
ツクモは皿に盛られた麺の小山を軽く平らげ、2回もおかわりした。
作り手としての最高の喜びは、食べる側に喜んでくれる事。
「はは。 口の周りが汚れてるぞ」
ナルトは穏やかな眼差しで、ツクモの口元に付いたソースを拭いてやった。
「ふむ」
・・・一つ言い忘れたが、現在この空間に居るのはナルトとツクモだけではない。
診察を受けに産婦人科に行ったアンコ。
愛娘の着物を注文すべく仕立て屋に行った玉藻。
再不斬と白を連れて生活用品の買出しに行った雪。
ナルトに頼まれて里の外にお使いに出た夜空。
以上の6名は出払っている。
さて、残っているのは誰でしょう?
「まぁまぁってとこだったの」
正解は自来也さんです。
この人は働かなくても本の印税が入ってくるので、日がな一日ブラブラしているだけの駄目人間である。
最近は家の中に篭り孫を構い倒すのが日課になっている。
見ようによっては年金貰って隠居している爺さんなのだが、金持ってるのに生活費はびた一文入れないのだから困ったものだ。
「・・・それにしても、スパゲッティーねぇ・・・。
如何にも子供受けしそうな、当たり外れの少ない無難なところを選んだもんだのぉ」
弟子の家にパラサイトしている蝦蟇使いは、冷やかな視線を向けつつ嫌味を言った。
非常に腹立たしい台詞を吐いている割にこの人、食事は全部食べた上におかわりまでしていた。
「こんな子供騙しの一品で天狗になるとは、恥ずかしくないのか?」
「・・・・・・貴様の感想なんぞ聞いとらん」
小姑のようなねちっこい態度に、ナルトの片眉が小刻みに吊り上がる。
「お前、最近なんかワシに冷たいのぉ」
テーブルに何度も『の』の字を書く自来也。
特に食事に不満があったのではなく、ナルトが昔みたいに尊敬の眼差しを向けてくれないのが気に入らなかった。
ついでに言うと、ツクモを独占しているのがもっと気に入らない。
まぁどっちかっつーと後半の方が主な理由だろう。
「娘の傍に性犯罪者がいるから、常に気ぃ張っとかねぇといけねぇんだよ、父親として」
「ほぉ・・・そいつは奇遇だのぉ。 実はワシも孫がケダモノに気を許しとるんで、近々排除しようと思っとるんだ、祖父として」
危険物も猥褻物も子供の手の届く所に置いておくべきではない。
「「・・・・・・・・・・・・」」
双方多少なりとも自覚があるだけに、面と向かって言われるのは腹立たしかった。
ナルトと自来也は米神にピキリと筋を立ると、フォークと箸・・・身近な凶器を何時でも突き出せるように体勢を整えた。
「父上もお爺ちゃんもケンカしちゃダメだよ」
「「はい」」
だがツクモに叱られてあっさりと引っ込めた。
驚くべき変わり身の早さである。
「じゃあツクモ、そろそろ昼寝しようかのぉ」
「はーい」
柱時計の短針と長針が、それぞれ1と12を指しているのを確認した自来也は、ツクモの手を引いてガラス戸の傍に移動すると、折り畳んだ座布団を枕にして寝転がった。
「ポカポカして気持ち良いね、お祖父ちゃん」
「そうだのぉ」
白を基調とした薄いカーテンの生地から透けて入る日差しと、食事による満腹感が心地好い眠気を誘う。
横になって数分もしない内に、2人はうとうとと舟を漕ぎ始めた。
「早ぇな。 もう寝たのかよ・・・」
ナルトが食器を流しに運んで戻って来た時は、仲良く夢の世界に旅立っていた。
獣化したツクモが9本の尾を時折揺らしながら、大の字になった自来也の腹の上で小さく丸まっている。
「・・・はは」
身内の幸せそうな寝顔に、ナルトは思わず苦笑を漏らした。
「しゃあねぇな・・・俺も風呂入って寝るか」
ポリポリ頬を掻くと、2人を起こさないよう足音を殺して部屋を出ていった。
口では何だかんだ言っているものの、やっぱり仲の良いうずまき一家であった。
―火の森―
翌日。
うずまき邸の門前。
普段滅多に人が訪れないこの家に、本日は4人の来客があった。
「ここで間違いないんでしょうね?」
「・・・・・・・・・はい」
紅の疑惑に満ちた視線が注がれる先に立つのは、一部の人間からダメ上忍囁かれているカカシ。
教えられてもいないこの場所を探し当てたのはカカシの嗅覚であるが、それを誉める者は誰も居なかった。
「確認すれば判る事だ。 この男に構っている時間が惜しい」
「だな」
上忍達の後ろに、フルーツ缶の詰め合わせが入った箱を手にしたシノとシカマルが控えている。
彼らの目的はナルトの見舞いだ。
他の下忍達が居ないのは、大人数で押しかけても迷惑になると紅が判断したためである。
ちなみに見舞いの権利は公平にジャンケンで決めた。
「・・・・・・」
まぁそれはおいておき、カカシは辛酸な言葉と態度に深く傷つきながら、玄関の壁にあるチャイムを押した。
「誰だよ、んな朝早くから・・・・・・まだ7時だぞ」
ピンポンという音から程なくしてドアが開き、藍色の浴衣を着たナルトがダルそうな顔で4人を出迎えた。
朝食を採っている最中だったらしく、口に箸を咥えている。
「よぉナル「邪魔よカカシ」グハッ!」
片手を上げようとしたカカシを押し退け前に出る紅。
「ナルト、具合はどぉ?」
「いや、もうなんともないけど・・・何故に此処が?」
ナルトは横っ面を押さえて蹲るカカシを見やり、意外な来客に戸惑いつつ頭を掻く。
「最初はアパートに行ったんだけど、あなた家に居なかったでしょう?
もしもの事があるといけないから、カカシに匂いを辿らせてみたの。 そうしたら此処に辿り着いたのよ」
頬に手を当てて『心配したのよ』 と紅は続ける。
「(影分身置いとくの忘れてた)・・・一人じゃ色々不便だと思ったんで、親戚の家で世話になる事にしたんだ」
別に慌てるような素振りも見せず、適当にそれらしい話をでっち上げるナルト。
かなり迂闊なミスをやらかしているが、疑う者はなかったのは幸いだった。
「親戚っつーとやっぱあれか?」
見舞いの品を渡しつつシカマルが尋ねた。
「ああ。 九妖だけど」
「え? 此処って九妖の家なの? やだっ、どうしよう!?」
「つーか、こんなとこに住んでたのかあの人・・・」
「庭と屋敷を合わせると・・・ざっと500坪は下らないな」
「ま、里で一番稼いでるからね」
紅は慌てて身嗜みを整え始め、シカマルとシノは屋敷の広さに感心し、カカシは何時の間にか復活を果たして頻りに頷いている。
まぁこんな辺鄙な所に馬鹿デカイ屋敷があれば驚くのも仕方がないだろう。
「あんた達、くれぐれも粗相のないようにね! ・・・ね、ねぇ・・・ナルト、おかしなところない?」
「な、ないよ」
「ホント? ホントに大丈夫なのね!?」
「あ〜・・・すごく言い難いんだけど・・・・・・九妖は任務で出払ってる」
「・・・そ、そうなんだ」
手櫛で髪を梳きながら頬を染めていた紅さんは、盛大な溜息と共に肩を落とした。
「ま、まぁ折角来たんだし、ちょっと上がっていく? 茶ぐらいは出るよ」
立ち話もなんだからと思い、4人を家に招き入れようとするナルト。
下手を打てば正体がばれる可能性もあるのだが、それも最近どうでもよくなってきた節がある。
何故なら、近々里を抜けようと考えているからだ。
この前波の国でガトー系列の会社を根こそぎ潰し金を掠め取った事で、里の開業資金が十二分に調ったのだ。
里を構える為に必要な土地も買ったし、現地を治める大名に遣い(夜空)も送った。
話が纏まったら即建築業者が入れる状態にまで事を運んでいる。
これらは暗部に入隊してからの11年で、コツコツ地道に作り上げた人脈を使えばそう難しい事ではなかった。
が、土地を見つけるのには大分苦労した。
外敵からの侵略に備え守りに適した地形。
物資の運搬を可能にする交通手段。
他国からの支援に頼らず自給自足で食料を確保出来るだけの農地。
この条件を全て備えた土地というのは中々見つかるものではない。
以前目をつけていた土地を大蛇丸とかいうオカマに掻っ攫われ、その上そこに音隠れの里などいう里を立ち上げられた時は本気で泣いた。
そしてどす黒い殺意が沸いた。
知った翌日に潰しに行こうと思ったが、それは居候達に羽交い絞めにされて止められた。
まぁとにかくだ。
苦節15年。
苦難と屈辱に塗れた人生が漸く門出を迎えるのだ。
こんな掃き溜め(木ノ葉)になんぞ居られるかっつーの。
て感じである。
あとは何時三代目に話そうかな〜と思っているところ。
まぁそれを抜きにしても、紅達が見舞いに来てくれたのはやはり嬉しかったらしい。
「ハァハァ・・・! せ、雪さんだ、雪さんの匂いがするっ!」
ただし、1名だけ例外が居た。
他の3人に続いてドアを潜ろうとした時、気付かなくてもいい事に気付いてしまったカカシ。
あちこちに鼻先を近付け歓喜に打ち震える様は、ムチャクチャ鬱陶しかった。
その熱意と洞察力の半分・・・いや一割でもいいから、仕事に使え。
口には出さなかったが、居合わせた誰もがそう思った。
「・・・・・・やっぱりあんたは帰ってくれ」
と言いつつドアを閉めようとするナルト。
カカシを家に上げてしまうと、欲望に任せて家捜しされるのが目に見えている。
特に風呂場とか洗濯物とかを遠慮なく物色しそうだ。
「なに言ってんの! 担当として部下の生活環境を把握しとかないと!!」
カカシは必死の形相で閉まり掛けたドアにしがみ付き、隙間に足を捻じ込んで力一杯抵抗する。
「んなもんが知りたきゃ俺のアパートに行け! 此処調べても何にもならねぇよ!」
ナルトがドアを内に引きながら、戸が締るのを邪魔している足をガンガン踏み付ける。
「いて! やってみなきゃ、いた! 分かんないだろ!?
それにお前の親戚である九妖の家を調べれば、お前の知られざる意外な一面が見えてくる、かも!!」
しかしカカシも手強い。
体を突き動かす執念だか怨念だかに後押しされ、粘りに粘っている。
「『かも』ってなんだ!? 確証がないなら要らん事すな!!」
「要らん事じゃない! 必須事項だ!! ほら、開けなさいって! 担当命令だぞ!!」
「ざけんな下心見え見えじゃねぇか! 調べたきゃ令状持って来い!」
「大丈夫だって! 真心も篭ってるから!!」
「信用出来るかっ!! 一回死ね!」
紅達はとっくに家の中に向かっていたが、それでもナルトとカカシは不毛な争いを続けたという。