NARUTO
〜九妖忍法帳〜 35話目
―木ノ葉通り―
里に帰ってきて3日目の明朝。
俺は本日の演習の為に、カカシが指定してきた集合場所に向かっている。
てっきり殺されると思っていたのが、どうにか生き延びる事が出来た。
しかし、生き延びたのはいいのだが、えらい事になった。
とんでもない事になった。
いや、おめでたいと言えばおめでたいのだが、洒落にならない事態に陥ってしまった。
何故かと言うと・・・・・・・・・アンコが妊娠したのだ。
ちなみにそれを知ったのは昨日の朝食の時。
アンコは居間に入ってくるなり、
『な、ナルト・・・・・・私ね・・・・・・に、妊娠しちゃった・・・』
両手の指を突き合わせつつ恥ずかしそうに告げた。
まったくの不意打ちに全員が咽た。
米、味噌汁、漬物、焼き魚・・・・・・・・・口から飛び出た朝食のメニューが、食卓の上で乱舞していたのを覚えている。
現在二ヶ月だそうだ。
専門の医者に見てもらったので間違いないそうだ。
出産は来年の2月だそうだ。
そして、お腹の子の父親は間違いなく俺だそうだ。
己の行いを振り返ってみたが、否定する要素は何一つ見当たらなかった。
いや否定する気はないから別に構わないのだが、それによって数日のアンコの言動も辻褄が合った。
一月程前、急にやらせてくれなくなったのもその為だったのだ。
本人は自分が妊娠している事実を知ってから、心に余裕が出来たのだという。
『私、今までみたいにちょっとした事に目くじらを立てるのは止めたの。
これからはどんな時もゆとりを忘れないで、寛大な心で人に接しようと思う・・・。
・・・だって私・・・母親になったんだから・・・。 いや〜ん♪ 言っちゃった〜〜〜♪』
その為、俺が何処で誰に何をしようと一切口出ししない、とまで仰っておられた。
俺は一瞬『ホントかよ?』と疑ったが、
『うん、私もう満ち足りてるから・・・♪』
どうもマジらしい。
まぁアンコの妊娠も相当驚きだったのだが、それはほんの序の口に過ぎなかった。
この後待ち構えていた現実は、俺の予想を遥かに上回っていた。
つか、あんなもん予想出来る奴はいねー。
何故なら玉藻が出産したのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、出産。
俺だって信じられなかった。
だが一昨日の夜、実物をこの目で見たのだ。
『主と私の愛の結晶・・・ツクモたんだ』
玉藻は家の住人を居間に集め、デレッとした顔でそんな事をのたまった。
全員が固まった。
俺など一瞬昇天しかけた。
玉藻がツクモと呼んだ少女は、間違いなく俺の娘だった。
目が合った瞬間、理屈抜きで理解してしまった。
真新しい絹糸のような金髪。
透き通った薄紫の瞳。
顔立ちは玉藻によく似ているのだが、雰囲気はどことなく俺に似ていた。
そしてそれ以上に、内包するチャクラの質が俺と殆ど変わらなかったのだ。
しかし理解はしたが、どうしても納得のいかない事があった。
『一つ聞きたいんだが・・・・・・その子いくつだ?』
ツクモは背格好から見て、いのやヒナタと同年代くらいだった。
さらに玉藻ゆずりなのか、スタイルもかなり良い。
『生後2週間だ』
『嘘吐け!!』
『嘘ではない。 正真正銘、私が腹を痛めて産んだ子だ』
『アホかお前は!! 子供っつーのは生まれるまで十月十日掛かるんだよ!!!』
『私は狐だ。 人間を基準に考えるな』
『狐だってこんな早く生まれねぇだろうが!!!』
『私は妖狐だ。 そんじょそこらの狐と一緒にするな』
『あぁもう! 俺が言いたいのはそんなんじゃなくて・・・!!!』
いくら妖魔と人間が異なるとはいえ、生後2週間であんな大きさ有り得ないだろう。
俺はそう訴えたかったのだが、
『父上って呼んじゃ・・・・・・駄目なの・・・?』
ツクモは心底悲しそうな表情になり、玉藻の着物の袖を握り締めて涙を堪えていた。
『な、泣くなツクモ!! 例え父が見捨てようと、おぬしにはこの母が着いておるではないか!? な!?』
膝を曲げ、ツクモを慰めようと試みる玉藻。
普段では考えられない程、オロオロと慌てふためいた。
『ひっどーい!! 信じられない!!』
ゴキブリでも見るような眼差しを向けてくるアンコ。
『ナルト君がそんな人だったなんて・・・』
歯軋りをしながら目を伏せる白。
『河矢久・・・・・・お前の息子はどうしようもない人でなしになっちまった・・・・・・残念だ』
仏間から持ってきた親父の遺影を悲しそうに見つめる師匠。
『・・・このクズが』
『責任は取りますよね?』
武器を構える鬼人と紅姫。
『ナルト、返事によっちゃオレも敵に回っけんな』
ゴキゴキと指の関節を鳴らし2人に賛同する夜空。
俺はこの連中の誤解を解くのに明方まで掛かった。
とまぁそんな具合で、俺は父親になってしまったわけだ。
騒ぎが収まった後、ツクモの事に関してはきちんと説明してもらった。
普通人間と妖魔の間に子を成す事は出来ないのだが、俺が玉藻と同質のチャクラを持っていたからだ可能だったのだと玉藻は言っていた。
とどのつまり、俺が普通の人間じゃなかったから子供が出来ちゃったという事だろう。
ちょっと凹むのだが、なるべく考えないようにする。
ツクモは玉藻の子宮に入った俺のせ・・・げふん・・・遺伝子を術で強制的に受精させ、これまた術で持って体内で成長させた分身のような存在らしい。
まぁ分身といっても受精した時点で玉藻とは別の存在になっているらしいので、例え玉藻が死んだとしてもツクモが消える事はない。
ちなみに俺の遺伝子を取り込んではいるが、元のベースは玉藻なので獣化も可能だ。
ツクモの力は人型の時は下忍並だが、完全に獣化した場合上忍に匹敵する。
前回息子を失った轍を踏まぬようにと、ある程度の知性や力を備えて誕生させたのだろうが、その必要はないと思う。
何故なら、
『ツクモ、困った時はこのワシを・・・・・・おじいちゃんを呼ぶんだぞ?』
『いえ、それには及びません。 ツクモちゃんは私が護りますから』
『ははは、2人共引っ込んどけ。 ツクモちゃん、全部この夜空君に任せとかんね』
『ふん。 テメェ等の力なんざ必要ねー。 なにしろこの再不斬様が付いてるんだからな』
我が家の姫様には凶悪な護衛がごろごろ居るのだ。
しかし、再不斬が子供好きだったのは驚いた。
・・・・・・・・・とそんな事はどうでもいい。
俺は父となり家族が増えた。
最初こそ驚きはしたが、確かに嬉しかった。
しかし・・・・・・しかしですよ?
旅先から帰って来たらいきなり娘が生まれてたんですよ?
それもまだ15歳の俺に対し、生後間もない筈の娘の外見は12歳。
知り合い(三代目、イルカ、テウチ、アヤメ)とかにどう説明したらいいか考えると、嬉しさ以上にとてつもない重圧があるのだ。
そして俺はその重圧によってもろに体調を崩した。
夏も近いというのに全身に鳥肌が浮き、寒い筈なのに脂汗がダラダラ流れる。
頭痛と鼻水が止まらず、視界が歪みまくっている。
家を出る直前、体温計が叩き出した数値は40度3分。
まともな人間なら病院に運ばれております。
しかし、それでも休むわけにはいかない。
色々と複雑な事情はあるが、俺としてもやっぱり娘が可愛いのだ。
昨夜。
『今日ね、父上と一緒に寝てもいい?』
『んなっ!? 私と寝るのではないのか!?』
『んーん。 父上と一緒がいいの』
『何故だ!? 何故父なのだ!? 母と寝るのは嫌だというのかぁああああ!!!?』
泣き縋る玉藻を振り払って俺の布団に潜り込んできたツクモを寝かし付けてみて、よ〜〜〜〜〜〜〜〜く分かった。
高飛車な玉藻と捻くれた俺の娘であるにも拘わらず、無邪気で純粋で穢れを知らないいい子なのだ。
今朝など、
『父上、いってらっしゃい。 お仕事がんばってね』
と微笑で送り出してくれた。
子は親の背中を見て育つ。
広い背中を見せるべき父親が、情けない背中を見せてどうする?
弱音を吐いてどうする?
熱如きに膝を折り、床に伏してどうするというのだ?
例えこの身が朽ちようとも、ツクモの前で弱音を吐く事はまかりならん!
今日の演習は昼で終わる予定なのだから、それまでの辛抱だ。
そして任務が終わったら家にすっ飛んで帰って、ツクモに昼飯を作ってやるのだ。
―第一演習場―
ここは木ノ葉に存在する50を越す演習場の内の一つ。
ナルト達第7班が下忍選定試験を行った場所であり、カカシが指定した待ち合わせ場所である。
意外と親馬鹿なナルトは、死にそうな体に鞭打って意地で目的地に辿り着いた。
その時点で既に体力はレッドバーに突入。
だが4時間に及ぶカカシの遅刻で、残り少なかったライフゲージはさらに減少。
弱パンチ一発でゲームオーバーという所まで追い込まれていた。
「おはよう諸君、今日は飼い犬が熱を出してな」
飼い犬の前に真っ青な顔でガタガタ凍えている部下の異変に気付くべきである。
もっとも気付いていないのはサスケとサクラも同じだが。
「今回の演習は7・8・10の3班合同の為、第三演習場でやるから」
カカシは悪びれる素振りも見せず、本など読みながらそうほざきやがった。
殺してやりたいが、悲しいかなそれだけの体力がない。
「このダメ教師・・・! だったら遅刻するんじゃねェ!」
「サスケ君のゆーとおりよ! こんな時ぐらい時間守ってよね!!」
「ん〜・・・ま、それはまた考えとくとして・・・急がないと怒られるぞ?」
「「お前が言うな!!」」
カカシはサスケとサクラの言葉をスルーし、3人をほったらかして歩き始めた。
サスケとサクラは、担当の背中に殺気を叩き付けながら渋々着いて行く。
そしてナルトは、よろめきながら最後尾を歩き出した。
―第三演習場―
案の定というか、遅刻してきた7班を出迎える視線は冷たい物だった。
集合時間は9時の筈だが、現在の時刻は10時30分。
紅率いる第8班とアスマ率いる第10班、総勢7名は時間通り演習場に集まっていた。
ちなみに何故7名なのかというと、自来也と綱手の引き起こした一件の後、アスマが未だ里に帰還出来ていないのだ。
その為、現在10班は一時的に紅の指揮下に入っている。
「おせーぞお前ら。 集合何時だと思ってんだ」
8・10班を代表して、犬塚キバは不機嫌そうに言った。
頭の上の赤丸も、主人に賛同するように吼えたてている。
「キバ、文句ならこのダメ上忍に言ってくれ」
サスケが隣の上忍を睨み付ける。
それに気付いているのか気付いていないのかは分からないが、まったく持って気にした様子が見られないカカシ。
とゆーかそれ以前に、怪しい本に熱中し視線すら向けようとしない。
キバは即座に納得した。
―・・・・・・この上忍ダメだ。
カカシという男は人として間違っている。
現状において被害者を上げるとすれば、そんな奴の部下になってしまった7班の下忍達。
毎度毎度待たされている彼らに比べれば、一度きりの待ち惚けを喰わされた自分達などどうという事はない。
むしろ腹を立てるのではなく、優しく接してやるべきだろう。
「次からは置いて来い」
「ああ、言われなくてもそうする」
「出来る事なら今からでも他の先生とトレードしたいわ・・・」
肩に手を置かれ同情めいた言葉を投げられたサスケとサクラは、少しだけ感謝すると同時に深い溜息を吐いた。
「・・・あの」
キバの話が終わったのを見計らい、サスケとサクラに声を掛けるヒナタ。
「ナルト君はどうしたの?」
「あれ? そう言えば居ないわね・・・・・・どうしたのかしら?」
辺りを見渡すがナルトの姿はなく、サクラは首を傾げた。
「ヒナタ、ナルトならここだ」
少し離れた所から、シノが手招きをしている。
視線を向けると、シノの隣の樹の裏側からナルトのものであろう金髪が少し見えた。
ヒナタは嬉しそうに駆け寄った。
「な、ナルト君!?」
ところが、正面に回って凍りついた。
驚いたヒナタの声に反応し、他の面々がぞろぞろ集まってくる。
そしてナルトを見た全員、ヒナタと同じような反応を示した。
さもありなん。
第一演習場からここに辿り着くまでの間で、ナルトのライフゲージはほぼゼロに。
ガードしても削れて死ねます・・・ってとこまできていた。
「ちょっとアンタ! その汗異常よ!?」
いのが驚くのは当然だ。
ナルトの着ている服は、ビショビショになっている。
「・・・大丈夫、ただ・・・暑がりなだけだ」
「・・・・・・大丈夫な筈はない。 ナルト、今の自分の状態を正直に言ってみろ」
「一面の花畑に囲まれてるみたいで・・・清々しい気分だ」
「全然大丈夫じゃねーじゃねぇか!! ホラ、鏡見てみろ!!!」
『へへへっ』 というヤク中みたいな笑い方に危機感を覚えたキバが、ポーチから取り出した手鏡を目の前に突き付ける。
「いつ見てもいい男だ」
「ちげーよ!! つーかお前、まともに見えてないだろ!!」
が、虚ろな笑みが浮かぶのみだった。
ならばと、今度はシカマルが二本の指を立ててみせた。
「おいナルト!! これが何本あるかわかってっか!?」
「6? ・・・8? ・・・ふふふ・・・そうか、実は一本も立ててないんだろ? ・・・引っかかんねぇよ」
いくらなんでもそれはないだろう・・・。
というか数云々の前に、顔が明後日の方向を向いている。
シカマルは口元が引き攣るのを抑えられなかった。
「ナルト・・・・・・これ食べて元気出しなよ」
「・・・・・・悪ぃなチョウジ」
チョウジが渡そうとしているのはガルB・焼肉味である。
善意からの行動だろうが、粥も受けつけそうにない病人に食わせるものではない。
「んなもん食えるかバカ! つーかナルトも口開けんじゃねェ!!」
まともな判断力が欠如している本人に代わって、シカマルがガルBを叩き落した。
「・・・わかったよ。 ガルBはダメでも、これはいいでしょ」
チョウジは一瞬殺人鬼の目になったが、ナルトに負担を掛けない為にグッと我慢し、持参したスポーツドリンク入りの魔法瓶を渡した。
何処ぞの変態上忍よりよっぽど大人である。
「カカシ! 一緒に居て気付かなかったなんて、あんたそれでも担当なの!?」
んで、無駄に歳だけ食ってる変態上忍は、紅にこっ酷く絞られている最中。
同じ教師として許せないのか、無理矢理正座させて物凄い剣幕で怒鳴り散らしている。
「部下の体調に注意を払うのも私達の仕事でしょうが! それをこんなになるまで放っておいて・・・!」
紅の視線は、ナルトに向いた時は憂いを含んでいたが、カカシに戻った時は殺意を孕んでいた。
「そうよね。 私達早朝から4時間も待たされたし」
「まったくだ。 これに懲りたら少しは態度を改めろ」
普段から迷惑を被っているサクラとサスケは、内心の笑いを堪えてカカシに追い討ちを掛けた。
「あんた達も同罪よ!」
だがその一言が余計だったらしく、紅の怒りの矛先は2人にも向けられた。
「同じ班の仲間ならもう少し気遣ってやるべきでしょう!」
「「・・・・・・」」
カカシ同様に正座させられ、サスケとサクラはげんなりとした表情を浮かべる事になった。
7班の3人が紅の叱責を受けている後ろで、ナルトは体力も気力も限界を迎えようとしていた。
ヒナタが覚えたての掌仙術を使ってはみたのだが、弱りきっていた為応急処置にしかならなかった。
「ナルト君・・・今日は帰った方がいいよ」
「そうだぜ。 なんならオレ達が家まで送ってくから、帰ってすぐに休めよ」
ヒナタとキバは自宅で養生しろと進める。
「・・・でもな・・・」
「でもじゃない、そんな体で演習なんか出来っこないでしょー」
「無茶すっとマジで死ぬぞ、お前」
渋るナルトにいのとシカマルは呆れたように顔を顰める。
「今のお前に必要な事は、訓練ではなく十分な休息だ」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
子供達の熱意が通じたのか、ナルトはややあって頷いた。
だが足に思うように力が入らず、中々立ち上がれない。
見かねたチョウジは右手を差し伸べた。
「ナルト、ボクに掴まりなよ」
「すまん」
ナルトはその助けを借りて、ゆっくりと腰を上げた。
「・・・じゃあ、悪ぃけど先に帰るわ」
片手を上げて演習場を去ろうとする。
心配そうに見守っていた子供達は、心底ホッとしていた。
・・・・・・・・・のも束の間。
ナルトは数歩進むと、不意に足を止めた。
しかも何故か俯いて肩を震わせている。
現在ナルトの脳裏には、次のようなビジョンが映し出されていた。
『おかえりなさい父上』
玄関を開けるなり飛びついて来るツクモ。
『はっはっはっ、いい子で留守番してたか?』
病など吹っ飛んでしまったかのように、満面の笑みで力強く抱き締めるナルト。
『お仕事ご苦労様でした』
しかし、その何気ない一言に口元がピクっと引き攣る。
『どうしたの? そんなにお仕事大変だったの?』
抱き上げられているツクモは、小首を傾げながら問い掛ける。
言えない。
『お父さんキツかったからサボっちゃった』
なんて口が裂けても言えない。
ダラダラと冷や汗を流し、しどろもどろになる自分。
「・・・・・・やっぱり演習受ける」
妄想を終え、踵を返すナルト。
「あんたいい加減にしなさいよ!」
聞分けのないアホに青筋を立てて怒鳴るいの。
他の者達もうんうんと頷いている。
「うっせー!! 演習受けるまでは絶対帰らねぇ!!」
しかしナルトの決意は固かった。
子供達の説得を振り切って、未だカカシ達に説教をしている紅に顔を向ける。
「紅さん! そんなバカ共に構ってねぇで、演習初めてくれ!!」
ぜーぜー荒い息を吐きながら、気力のみで体を動かす。
「ほ、ホントに休まなくてもいいの?」
紅はかなり怯みながらもナルトの身を案じる。
「構わん。 今座ったら二度と立てなくなる」
だが血走った目で迫られた。
詳しい事情は分からないが、そこにある並々ならぬ覚悟は読み取る事が出来た。
紅は一度溜息を吐いたあと、ナルトの肩に手を乗せた。
「しょうがないわね・・・。 あんたの熱意に免じて参加を許可する。
・・・・・・ただし、限界だと思ったらすぐに私に申し出る事。 約束出来るわね?」
「・・・わかった、約束する」
ナルトは頷くと同時に、深い深呼吸をする。
そんな様子に子供達は、もう何を言っても聞かないだろうと悟り、これと言って口出ししようとはしなかった。
「今日は二組に分かれてのチーム対抗戦をやるから、これからあんた達にクジを引いてもらうわ」
紅が差し出した紙の束を一人一人引いていく。
クジが全員に行き渡ったのを確認し、紅は自分の手に残ったクジを確かめた。
「紙の端が赤く塗ってある者は私の所に集まって。 色の着いてない白いクジを引いた者はそのまま動かないで」
結果は次の通り。
赤組=【紅】・【カカシ】・【サスケ】・【サクラ】・【キバ(+赤丸)】
白組=【ナルト】・【シノ】・【ヒナタ】・【いの】・【シカマル】・【チョウジ】
紅は米神に指を当てながら難しい顔をした。
「・・・・・・いくら何でもバランスが悪いわね」
上忍が2人も含まれている赤組と比べ、下忍のみの白組。
しかも一人は立っているのもやっと。
まるで役に立ちそうにない重病人。
常識で考えた場合、これ程不公平な組み合わせはない。
「もう一度やり直しましょ・・・「絶対ダメ!!」
だが紅の提案にサクラが反対した。
―しゃーんなろー!! 折角サスケ君と同じチームになったんだから!!
両眼をぎらつかせ、炎まで背負っている。
―それに万が一、サスケ君といのが同じチームで私だけ別のチームになったら・・・・・・。
某光の巨人のような構えを見せ、サスケを後ろに隠すようにいのを牽制する。
だが。
―ナルトの奴ホントに大丈夫かしら・・・。
いのが見ているのはサスケではなくナルトであった。
―けどやっぱ静かにしてたらそこそこいい男ねー。
まぁそれでも見た目はサスケ君に分があるんだけど。
サスケ君が100点とするならナルト65点ってとこかしら?
あ〜・・・でも包容力とかはナルトの方が断然上っぽいのよねー・・・。
仮に結婚した場合、サスケ君お店告いでくれそうにないからお父さんと不仲になりそうだし。
・・・その点で考えたらナルトは花屋告いでくれるどころか、両親の老後の世話までやってくれそうだし・・・・・・。
徐々に脱線し始めたいのは、架空の未来をシュミレートしてみた。
『いらっしゃいませー』
『山中花』の三文字がプリントされたエプロンを身に着け、客に愛想を振り撒くナルト。
『あの〜、つかぬ事お伺いしますが・・・・・・お兄さんって独身なんですか?』
いきなり現れて妙な質問をする女性客。
だがナルトはニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、女性の首筋に顔を寄せる。
『それは君次第さ。 ふふっ・・・なんなら俺の種を育ててみるってのはどうだ?』
『え・・・?』
ポッと頬を染める女性。
「ふざけんじゃないわよ―――――!!!」
シュミレートを打ち切ったついでに血管までぶち切れた。
空気が震えるようないのの咆哮は、その場に居た者達の鼓膜に大ダメージを与えた。
かなり響いているらしく、全員が耳を抑えて目を回している。
いのは自らが作り上げた惨状に目もくれず、ナルトに怨嗟の視線を叩き付ける。
「あ・・・あたしという者がありながら他の女に手を出すってどういう了見よ・・・!!」
プルプルと震えながら呟いた言葉は、皆の聴覚が麻痺していたので聞かれなかった。
―・・・ハッ!? 私ってば何考えてんのよ!?
だが正気を取り戻したらしく、自分の頭をポカポカと叩き始めた。
「い、いの? あんたもやり直しが気に入らないって言うの!?」
「あ、あはは・・・」
そして、涙目の紅の言葉を、渇いた笑いで誤魔化した。
このいのの行動により、チームの変更はなしという事に。
演習は全員の聴力が回復してからという事になったのだった。