NARUTO
〜九妖忍法帳〜 24話目
―橋―
交差したクナイと千本がギチギチと音を立て、文字通り鎬を削っていた。
「君を殺したくないのですが・・・引き下がってもらえはしないのでしょうね・・・」
その鬩ぎ合いの最中。
千本を握った手に力を込め、酷く冷静な口調で白は言った。
「アホ言え・・・」
サスケは口元に笑みを浮かべ、余裕たっぷりに答える。
「やはり・・・しかし次、アナタはボクのスピードにはついてこれない・・・それにボクは既に2つの先手を打っている」
「2つの先手?」
サスケの眉が微かに動く。
「一つ目は辺りに撒かれた水・・・」
再不斬の水分身によって、辺り一帯は水浸しになっている。
「そして2つ目に、ボクは君の片手を塞いだ・・・従って君はボクの攻撃をただ防ぐだけ・・・」
白は言葉が終わった瞬間、自由な左手を用い恐ろしい速度で印を結んだ。
―なにィ! コイツ・・・片手で・・・!!
―片手の印だと!? あんなの見た事が・・・。
サスケとカカシ、2人の両眼が大きく見開かれる。
【秘術 千殺水翔!!】
大地を踏み鳴らす音に呼応して、針の様に鋭さを帯びた水が宙に舞い上がる。
―殺したくない・・・か。 ・・・本音かな。
「サスケ君!」
目標を貫かんと殺到する水の刃。
―思い出せ・・・あの修行を・・・チャクラを一気に練り上げ・・・。
サスケは目を閉じて意識を研ぎ澄ます。
―・・・脚へ!
互いにぶつかり合い、弾け飛ぶ水。
術者である白は、バックステップで術の範囲外へ離脱した。
―! 消えた!?
だが、サスケもまた回避したらしく、その姿が何処にも見当たらない。
「!」
それに気を取られた白は、頭上から飛んでくる手裏剣に気付くのが遅れてしまう。
寸でのところで回避し、矢継ぎ早に降ってくる飛び道具に舌打ちをする。
そして、すぐに迎撃すべく体勢を整える。
「案外トロいんだな・・・」
しかし、突然背後から聞こえるサスケの声。
「これからお前は・・・オレの攻撃をただ防ぐだけだ!」
顔に余裕の笑みをたたえ、先程のお返しと言わんばかりクナイで斬り付ける。
白は振り向きざまにクナイを持った腕を止める。
「!」
が、サスケは手首のスナップを利かせクナイを顔面に放つ。
回避の為に身を屈めると、それを読んでいたように体重を乗せた蹴りで顔面を打ち抜いた。
―何っ・・・! あの白がスピード負けするとは・・・。
サスケの成長振りには、再不斬も驚きを隠せなかった。
「どうやらスピードはオレの方が上みたいだな・・・」
「ぐっ!」
勝ち誇ったサスケの言葉に、受身を取った白が小さく呻く。
「ガキだガキだと、ウチのチームをなめてもらっちゃあ困るねェ・・・こう見えてもサスケは木ノ葉の里の・・・NO.1ルーキー・・・」
その様子に頬を緩めるカカシ。
「此処にいるサクラは里一番の切れ者・・・・・・」
「エヘ・・・ (エッヘン!しゃーんなろー!!)」
照れたように舌を出しているサクラ。
毎度の事ながら、心の中で有りもしない胸を張って踏ん反り返っている。
「そしてもう一人は」
「(ピク!) ・・・・・・」
残る1人に思う節が有り過ぎて、再不斬の米神に血管が浮く。
「目立ちたがり屋で意外性NO.1の・・・・・・・・・」
カカシにも思う節が有ったらしく、顔から笑みが消えて言葉に詰まる。
「・・・・・・NO.1の・・・・・・」
色々考えてみるが、中々しっくり来る表現が浮かばない。
「NO.1の・・・?」
白は森で会ったナルトの評価が気になるのか、腕組みをして首を捻っているカカシに続きを促す。
「・・・・・・オトボケ忍者?」
「・・・・・・色ボケ忍者だ」
上がサクラ、下がサスケ。
「「それだ(よ)!」」
全く以って酷い評価である。
ただ否定する要素が全く見当たらないだけに、納得する者はあってもフォローする者は居なかった。
「・・・・・・・・・」
「再不斬さん?」
「・・・・・・何も言うな」
再不斬は情け無くなった。
『霧隠れの鬼人はそんな奴に虚仮にされたのか・・・』と。
例え油断していたとはいえ、仲間から色ボケ忍者(しかも下忍)呼ばわりされるような奴にしてやられた事実が世間様に公表されたのでは、『鬼人 再不斬』の名は堕ちるとこまで堕ちる。
いや、それだけで済めば良いが、まかり間違って自分の恥かしい過去を吹聴された日にゃあ、依頼激減で沽券云々の話では済まなくなる。
まだ自分にはやる事が山程あるのに、志半ばにして忍者廃業は洒落にならない。
洒落にならないというか、お話にすらならない。
現実問題として忍者を辞めたら職に有り付けないからだ。
力仕事なら難なくこなせるが、上司から『再不斬君もう少し周りとのコミュニケーションをだね』などと言われたら、即座に首切り包丁を振るってしまう。
無くても良いのに・・・いや有っちゃいけないのに自信がある。 自信を通り越して確信がある。
客商売など論外、つーかそれ以前に面接でアウトだろう。
ではどうやって生活していく?
プライドを捨てて白の世話になるか?
まぁ白が自分を見捨る事は無いだろうから、養ってもらう事は可能だ。
現に今でも炊事洗濯など、身の回りの世話をやってもらっている。
白は嫌がるだろうがその徹底振りは凄まじく、下手な女よりも余程女らしい。
以前、愛刀の柄に『再不斬』と油性マジックで名前を書かれた事を覗けば、比の打ち所が無いと言っても過言ではない。
女に生まれていれば、それこそ世の男共は我先にと求婚するに違いないのである。
実際、女と間違われてプロポーズされた経験も一度や二度ではない。
昔の話になるが、鬼兄弟も白を巡って壮絶な殴り合いを繰り広げていた。
まぁそれはさておいて、いざ自分が世話になったとしても、世間体と言うものがあるので余りよろしくない。
何だか考えれば考える程、マイナスのイメージが浮かんでやるせなくなってくる。
「・・・・・・オレは・・・オレは・・・」
戦闘中という事を忘れ、ガックリと肩を落とす再不斬。
「・・・・・・再不斬さん・・・ボクは再不斬さんを見捨てたりはしませんよ」
滲み出た負の気配を読んだ白が、優しい言葉を掛けてくれる。
面の下では微笑みさえ浮かべているだろう。
「ほら、元気出して下さい・・・・・・・・・今月のお小遣い増やしてあげますから」
「白・・・(涙)」
ちなみに再不斬の月の小遣いは500両である。
小遣いアップが嬉しくないと言えば嘘になるが、今この場で口にする白が恨めしかった。
「・・・名前が売れてる忍者ってこんな奴ばっかな訳・・・」
「・・・かもな・・・」
「そこでどうしてオレを見るのかな?」
身近なダメ人間を流し見て、ゲンナリした顔になる下忍達。
カカシは身に覚えが無いと、ずうずうしくも首を傾げた。
両陣営、緊張感皆無である。
この場で緊張感を持っているとすれば、命を狙われているタズナだけだろう。
タズナとしては、このまま再不斬達に帰ってほしいと思っている。
「ゴホン・・・あのそろそろ始めませんか?」
「・・・ああ」
だが、ガトーから依頼を受けている再不斬達としてはそういう訳にもいかず、白の提案により戦闘が再開された。
「待たせたなカカシ」
とりあえずシリアスな雰囲気が戻り、再不斬達が言う。
「立ち直るまでに結構かかったな」
「・・・・・・・・・白・・・オレはカカシと闘る。 お前はあのガキを早々に始末しろ・・・・・・あの糞ガキが来る前にな」
カカシに痛い所を衝かれたが、とりあえず無視する事にした。
「そうですね・・・彼はあの子以上に厄介そうですから」
白は構えを取っておらず、自然体のままだ。
「・・・残念です・・・・・・本当に」
―な・・・何だ・・・これは・・・冷気・・・?
急激に下がり始める周囲の気温。
戸惑うサスケを他所に、青白い冷気を纏った白が、彼独自の特殊な印を結んだ。
すると、発せられた冷気によって、辺りの水が結晶と化し、更に天へ向かって伸びてゆく。
【秘術 魔鏡氷晶!!】
「!!」
気が付けば既にサスケは、白の作り出した冬の世界の中にいた。
成長を遂げた氷柱が、幾枚もの薄い鏡を形成しサスケを取り囲んでいる。
―何だこの術は!?
白の術は、千以上の術をコピーしたカカシさえも驚愕させた。
「な・・・っ!」
だがそれだけでは終わらなかった。
白が氷の一枚に近付き、厚みの無い板の中に、まるで吸い込まれるように姿を消したのだ。
するとサスケを取り囲む全ての鏡に、白の姿が映し出された。
「くそっ!」
白の術に脅威を感じたカカシは、タズナの元を離れ加勢に向かおうとする。
「お前の相手は・・・オレだろ。 ・・・あの術が出た以上・・・アイツはもうダメだ」
―ぐっ!
しかし、その行く手を再不斬に遮られた。
《じゃあ・・・そろそろ行きますよ》
―これは・・・鏡!? ・・・一体何を・・・!!
壁の内側では、既に戦いが始まっていた。
《ボクの本当のスピードをお見せしましょう》
鏡に映る白が千本を構える。
―痛っ!
同時に左腕を何かが通り過ぎ、一筋の傷が出来た。
「うぐぅっ!!」
だが今度の痛みは一つでは済まず、夥しい数で襲い掛かってくる。
「サスケ・・・!!」
カカシは遠巻きに、全身を切り裂かれるサスケの姿を見た。
「ぐあぁああ!!」
「サスケ君!!」
「迂闊に動けばそっちの2人を殺るぞ!」
「・・・くっ」
それでも再不斬に足止めされ、助けに行く事が出来ない。
「ぐっ・・・うわぁ・・・!」
サスケは反撃の暇さえ与えてもらえず、頭を抱えて攻撃を受け続ける。
「・・・タズナさん、ごめん。 ・・・少しだけ此処を離れるね・・・」
サクラはタズナを振り返り、微かに震えた声で言った。
「ああ・・・行って来い・・・」
タズナはサクラの心中を察し、すぐに頷いてくれた。
「サスケ君!!」
駆け出したサクラが高く跳躍し、氷の鏡に向かってクナイを投げた。
だが白は鏡から見を乗り出すと、不意を衝いた筈のクナイを事も無げに受け止めた。
―かわされた!!
サクラがその実力に驚いたのも束の間。
「うっ!」
どこからか飛んで来た四角い物体が、白の顔に直撃。
強制的に鏡から引きずり出された。
「「!」」
「・・・・・・誰?」
ボーン! という破裂音に立ち昇る白煙。
―あのバカ・・・目立ちたがり屋が・・・。
カカシと再不斬、サクラの視線が集まり、傷だらけになったサスケの顔には苦笑が浮かんでいた。
―やはり来ましたか・・・・・・・・・ん?
白は体を起こそうとして、地面に落ちていた一冊の本を見つける。
結構厚みのある本で、表紙には裸のおねぇちゃん達が載っていた。
―・・・意外性NO.1の・・・色ボケ忍者・・・・・・・・・納得ですね。
「ごふッ・・・ゲホッゲホッ!!」
まぁそれはおいといて、煙を割って現れたのは、自分で焚いた煙に咽るナルトであった。
―・・・あのバカ。
―・・・ウスラトンカチが。
―・・・アホね。
至極真っ当な感想である。
一方、ナルトの姿を確認した白は、仮面の下で渋い表情をつくっていた。
『大切な奴等が居て、そいつ等には笑っててほしい』
互いに争わずに済むのであれば、どんなに良かっただろう。
だがそんな白とは裏腹に、再不斬は殺る気満々だった。
「! しまった!」
カカシの注意がそれた瞬間を狙い、必要以上に殺気を込めて手裏剣を投げ付けた。
それを見た白は、咄嗟に足元にあった本を投げる。
「!」
そして回転する本が手裏剣の軌道を塞ぎ、引き裂かれたピンクのページが紙吹雪となって舞う。
ただ、風に乗って流れてきた切れ端を目にしたサクラが、『最低・・・』と呟やき軽蔑の視線をナルトに向けていたのは余談である。
「白ぅぅ・・・どういうつもりだぁ・・・」
邪魔をされた再不斬は鬼の様な視線を投げ掛けていた。
よっぽど悔しかったらしい。
「再不斬さん・・・この子はボクに・・・この戦いはボクの流儀でやらせて下さい」
「チッ・・・手を出すなって事か・・・。 白、相変わらず甘いヤローだ・・・お前は・・・」
―甘いか・・・確かにな・・・。
サスケは自分の体に出来た傷を眺め、再不斬の言葉に納得した。
―この傷から見て、千本で攻撃されいるのは確かだが・・・。
今の所、急所という急所は狙われていない・・・生殺しのつもりか・・・。
見た目こそボロボロだが、どの傷も致命傷にはなり得ないものばかり。
―・・・しかし、この術は何だ!? 分身を鏡に潜ませ、全員で同時に千本を投げ付けて・・・。
いや・・・それにしちゃ速すぎる・・・武器の軌道すら見切れないのはどういう事だ・・・。
問題なのはその恐るべき攻撃速度。
何せダメージを確認した瞬間も、白の姿を捉える事が出来ないのだ。
―それに単なる『分身の術』だとすれば、この氷の鏡を必要とする理由が見当たらない・・・。
兎に角、この鏡が奴の攻撃の要である事は疑いようがない・・・。
此処はとりあえず・・・オレは内側・・・そしてナルトに鏡の外側から攻撃させてみるしか・・・。
分析を終えたサスケが、ナルトに伝えようと顔を上げた時。
「よっ! 助けに来たぞ!」
「!!!」
件の人物は鏡の内側に居た。
「こっ・・・このウスラトンカチ! 忍ならもっと慎重に動けェ! お前まで鏡の中に・・・くそ! もういい、このバカ!」
「なんだとこの糞ガキ! 助けに来てやっただけありがたいと思え!!」
サスケにとっては、全然ありがたくない。
むしろこれ以上無い程最悪だった。
―流石意外性NO.1の忍者だ・・・助太刀に来てドンドン状況が悪化してやがるな・・・。
カカシはナルトの実力を認めてはいるのだが、その行動が今一つ読み切れないのが頭痛の種であった。
―・・・ナルトとサスケの方へ行けば、タズナさんが危ない・・・が、と言ってアイツらを放っておくわけにも・・・・・・。
中途半端な影分身をやってみても、こいつもすぐに水分身で足止めに来る・・・余分なチャクラを使うだけだ・・・。
だが自分が動けない以上、ナルトの活躍に期待するより他はないのだった。
白は再び、自らが作った氷の鏡に身を潜ませた。
―よし! あそこが本体か・・・。
サスケはその鏡を狙って、右足のホルスターに手を掛ける。
《こっちだよ》
しかし聞こえてきた声は、全く逆の方向からだった。
―移動した・・・!?
振り向いたサスケの頬には、新たな傷が刻まれ血が伝っている。
―速い・・・いやそれ以上に・・・・・・この術・・・どう見ても普通の術じゃねぇ。
ナルトも目を細め、観察するように周囲の鏡を見渡した。
―こうなったら・・・鏡をぶっ壊すまでだ!!!
両手を合わせるように印を結ぶサスケ。
指先が示すのは虎の印。
―こいつは氷を凍らせて作った鏡・・・なら!
一つの結論に至り、体内のチャクラを練り上げる。
【火遁!! 豪火球の術!!】
吐き出した炎で、前方の空間を焼き払う。
・・・・・・しかし。
「・・・・・・効果無しだな」
「くっ・・・」
白が支配する冬の世界が、雪解けを迎える事は無かった。
《そんな火力では、この氷の鏡は溶けませんよ》
白が千本を構え、鏡の面が光を反射する。
「うぐっ!!」
同時に大きく後方へ弾かれるサスケ。
「チィ!!」
両腕を交差して踏み止まったナルト。
―どういう仕組みか知らねぇが、ネタがあるのは間違いねぇな。
腕に刺さった千本を引き抜き、本体の潜む鏡を流し見る。
《目で追おうとしても無駄だよ・・・ボクは絶対に捕まらない》
「(んじゃ、お手並み拝見と行こうか) やってみねぇ事には分かんねぇだろ! 【影分身の術!!】」
「よせ!」
サスケの声を無視し、ナルトの影分身が一斉に鏡に襲い掛かる。
「!!!」
刹那、氷の表面が一際強く輝いたかと思うと、影分身はたちまち煙を上げて消滅。
その業はまさに電光石火。
《この術はボクだけを写す鏡の反射を利用する移動術。 ・・・ボクのスピードから見れば、君たちはまるで止まっているのかのよう・・・」
―!! ・・・やはり・・・。
再不斬の肩越しに部下達の戦いを見守っていたカカシは、白の術に心当たりがあるようだった。
「まさか、あの少年があんな術を体得していようとは・・・・・・」
「クククク・・・・・・」
「! あんな術・・・?」
喉を鳴らす再不斬を見て、思わずサクラは尋ねた。
「血継限界・・・深き血の繋がり・・・超常固体の系譜・・・それのみによって子々孫々伝えられる類の術だ・・・」
「じゃあ・・・」
「そう・・・言ってみりゃあ、このオレの『写輪眼』と同種のもの・・・。
このオレを持ってしても、あの術はコピー不可能・・・破る方法は皆無・・・」
カカシの言葉を聞き愕然となる。
「クッ・・・」
「!」
「クク・・・クククククク」
だがサクラとは逆に、絶望的な状況にいる筈なのに、何故かいきなり笑い出すナルト。
ハッキリ言って怖い。
「・・・何が可笑しいんです?」
「ああ気にするな・・・こっちの話だ。 これで・・・これでまた、夢の実現に一歩近付いた」
「「?」」
理由が分からず、白だけでなくサスケまでも首を傾げている。
―素の実力だけでも結構なモンだってのに、血継限界まで・・・・・・こりゃとことんツイてるな。
ナルトの笑みは更に深くなり、誰も気付いていないがドス黒いチャクラが漏れ始めていた。
黒いチャクラにロックオンされているとも知らず、白の頭に様々な想いが浮かぶ。
『大切な奴等が居て、そいつ等には笑っててほしい』
『夢って叶わなきゃ意味ねぇだろ? だから実現出来る程強くなりてぇ』
それはナルトの言葉であったり。
『クク・・・憐れなガキだ。 ・・・お前みたいなガキは誰にも必要とされず・・・この先自由も夢もなく・・・野垂れ死ぬ』
『・・・・・・お兄ちゃんもボクと同じ目してる・・・』
あるいは自分の過去であったり・・・・・・。
《ボクにとって忍になりきる事は難しい・・・出来るなら君達を殺したくないし・・・君達にボクを殺させたくもない・・・けれど」
ナルトは大切な人達に笑ってほしいと言った。
その気持ちは痛い程理解出来る・・・・・・けれど、自分にも成すべき事がある。
《君たちが向かってくるから・・・ボクは刃で心を殺し忍になりきる》
それがナルトの言葉に対する答えだったのかもしれない。
《この橋はそれぞれの夢へ繋がる・・・戦いの場所。 ・・・ボクはボクの為に・・・君達は君達の夢の為に・・・》
透き通った静かな声は、不思議なくらいハッキリと、全員の耳に届いた。
《恨まないで下さい・・・。 ボクは大切な人を護りたい・・・。
その人の為に働き、その人の為に戦い、その人の夢を叶えたい・・・それがボクの夢・・・》
鏡の中で音も無く千本を掲げる。
《その為ならボクは忍になりきる。 ・・・あなた達を・・・・・・殺します》
ひしひしと感じる凍て付くような殺気。
「・・・・・・面白ぇ」
しかし、ナルトとサスケに恐怖など微塵も無かった。
「「やってみやがれ!!」」
逆にその顔に笑みすら浮かんでいた。
「サスケ君! ナルトォ! そんな奴に負けないでェ!!」
「やめろサクラ・・・あの2人をけしかけるな!」
「え?」
サクラが声援を送ると、カカシは厳しい顔をした。
「例え万に一つ、あの術を破る方法があったとしても・・・あいつらにあの少年は倒せない・・・」
「! ・・・ど・・・どーゆーことよ?」
「クク・・・ククク・・・」
「あいつらにはまだ、心を殺し・・・人を殺める精神力はない・・・あの少年は忍の本当の苦悩をよく知っている」
戸惑うサクラを流し見、カカシはそう続けた。
「・・・お前らみたいな平和ボケした里で本物の忍は育たない・・・」
言葉を選ばずに再不斬は笑う。
「忍の戦いにおいて最も重要な、『殺しの経験』を積む事が出来ないからだ・・・」
「じゃあどーすんのよォ! 先生!!」
激昂するサクラ。
「悪いが・・・・・・一瞬で終わらせてもらうぞ」
再不斬を睨み付け、額当てに手を掛ける。
「クク・・・写輪眼・・・芸の無ぇ奴だ」
「写輪眼!!」
サクラの叫び声が合図となり、短刀を引き抜いた再不斬が爆ぜるように駆け出した。
「!」
躊躇無く突き出される鍵状の刃。
狙いは顔面・・・・・・左眼の写輪眼。
一瞬にして2人の間合いは詰り、鮮血が迸る。
「・・・・・・『芸が無い』と凄んで見ても、やはり写輪眼は怖いか・・・・・・再不斬」
だが、突き出された短刀は写輪眼ではなく、顔前に掲げられた右手を貫いていた。
「ククク・・・忍の奥義ってのは、そう何度も相手に見せるもんじゃねーだろ」
「感謝しろ。 ・・・2度もこの眼が拝めるのはお前が初めてだよ・・・そして3度目はない」
傷口に短刀をねじ込むと、カカシは痛がる素振りも見せずに言った。
「クク・・・仮にオレを倒せたとしても、お前は白には勝てねーよ・・・」
「先生・・・! (カカシ先生が勝てないって・・・あのお面の子ってそんなに強いの?)」
サクラは言い知れぬ不安に駆られる。
「オレはアイツがガキの頃から、徹底的に戦闘術を叩き込んできた。
アイツは信じがたい苦境の中においても、常に成果を上げてきた」
「・・・・・・・・・」
「『心』もなく『命』という概念すら捨てた、忍と言う名の戦闘機械だ。
その上、奴の術はオレすら凌ぐ! 血継限界と言うなの恐るべき機能」
再不斬がカカシ右手から、乱暴にクナイを引き抜く。
「オレは高度な道具を獲得したわけだ。 お前の連れてる廃品とは違ってな・・・・・・!!」
「他人の自慢話ほど退屈なモノはないな・・・そろそろ行かせてもらおう!」
額当てがせり上がり、カカシの写輪眼が発動する。
「まぁ待て・・・話ついでにお前の台詞を借りて、もう一つ自慢話をしてやろう。 お前は確かこう言ったな・・・」
「!?」
「!」
「?」
カカシは元より、サクラとタズナの視線まで集まる。
「クク・・・オレはその台詞をサルマネしたくてウズウズしてたんだぜ」
「・・・・・・・・・」
「『言っておくが、オレに2度同じ術は通用しない』・・・だったか・・・」
カカシが眼を細め、再不斬は右手で印を結んだ。
「オレは既に、お前のその眼の・・・下らないシステムを全て見切ってんだよ」
キッパリと断言し、再不斬はチャクラを練り始める。
「この前の闘い・・・オレはただバカみたいにお前にやられてたワケじゃない。
傍らに潜む白に、その戦いの一部始終を観察させていたワケだ。
・・・白は頭も切れる・・・大抵の技なら、一度見ればその分析力によって対抗策を練り上げてしまう」
「!」
辺りに漂っていた霧がより深くなった。
【忍法 霧隠れの術】
再不斬の姿が掻き消えた後も、霧は濃度を深めていった。
「いってーな畜生! あんにゃろぉ・・・マジでハリネズミにする気か・・・」
体のあちこちに千本を突き立て、それをせっせと抜いているナルト。
「うるせェ! 少し黙ってろ! お前の面倒まではみきれねーんだよ!」
―俺が何時お前に面倒をみてもらったんだ・・・よ!
少しムカついたらしく、引き抜いた千本をグニャッとひん曲げる。
「多少の傷はやむを得ない、取り敢えず致命傷を避けて動くんだ!
恐らくアイツのチャクラにも限界がある!! 現に少しずつ・・・・・・」
言い終わる前に、鏡の中で白が構えるのが見えた。
―来る!!
攻撃に備えクナイを構えた。
だが横に移動しようとして、それよりも早く膝の裏を貫かれる。
ナルトは兎も角、既に体力の限界が近いサスケ。
対する白は、まだ一撃も許してはいなかった。