NARUTO
〜九妖忍法帳〜 14話目
眼球・眉間・米神・鼻・人中・喉・首・水月・股間・・・・・・・・・・・・・。
ありとあらゆる急所を目掛けて、嵐の様な連撃が吹き荒れる。
ナルトの息も吐かせぬ猛攻を総て捌き、川を背にしたカカシがジリジリと後退していく。
「そらっ!!」
ナルトが握り固めた拳の人差し指を僅かに突き出し、鼻と口の中間・・・人中を一本拳で狙った。
カカシは一直線に急所に迫る拳を片手で払い、同時に腕を掴み力の流れに逆らわず後方に投げ捨てる。
自分の勢いに加重を掛けて投げられたナルトは、高く宙を舞い水飛沫を上げて川に落ちた。
―うわっ! 冷てぇ!!
《まぁ秋だからな》
川の水の冷たさに身を震わせたナルトだが、内側の玉藻には他人事だった。
ナルトは川底で体勢を整えポーチから2枚の手裏剣を取り出すと、川岸に向かってかなり手を抜いて投げた。
だが手加減していても狙いは正確。
水面から飛び出した2枚の手裏剣がカカシの左右から飛来する。
―手裏剣術は下忍並みってとこか。 ・・・・・・力にバラつきがあるな。
当然カカシも涼しい顔のまま、しかも考え事をしながら、回転する手裏剣の中心の穴に指を通して受け止める。
―何なのよあの強さ! ほとんど反則じゃない・・・どーしろってゆーのよ!
自分とは比べ物にならない実力を見せ付けたナルト。
そのナルトを相手にいまだ一撃も許していないカカシ。
次元を超えた技量を誇る上忍から、自分が鈴を奪う姿など思い浮かばない。
それでも愛しいサスケと離れ離れになるのは嫌だ。
2人の戦いを観戦する間に無常にも時だけが過ぎていく・・・・・・。
サクラは途方に暮れそうになっていた。
―・・・・・・・・・。
最初はナルトの実力に動揺していたが、時間を置いて頭が冷えたのかサスケは冷静さを取り戻していた。
いかに上忍であってもこれは殺し合いとは違う。
カカシが攻撃せずに逃げ回るだけなら、付け入る隙は必ずある。
2人の戦いを観察しカカシの動きを分析しながら、サスケは自分の番に備えて綿密なシュミレートをしていた。
「う〜・・・、さぶっ!!」
ナルトは体を縮こまらせながら、川岸に這い上がった。
「ははは、早く鈴取って乾かさないと風邪ひくぞ?それにそろそろ腹もへってきただろ?」
「おのれ・・・・・・。 腹は減っても戦は出来る!! さぁ続きだ!!」
カカシの挑発に迫真の演技で応え、再び構え直す。
だが少しだけギュルルル〜!と腹が鳴った。
空腹に慣れていてもそれは我慢できるというだけで、やっぱり減るモンは減るのだ。
―私なんかダイエット中で、昨日の夜から何も食べてないのよ!!お、お腹へったぁぁあ〜〜〜!!
年頃の娘は色々と大変らしい。サクラは空腹に悶えていた。
ちなみにナルトは昨日の昼以降何も食べていないが、代わりに玉藻とアンコを美味しく戴いていた・・・・・・。
―・・・・・・・・・。
サスケも今まで鳴りを潜めていた腹の虫が一斉に騒ぎ出し、恥かしかったのか少しだけ頬を染めた。
「元気いいね〜。 で、次は何を見せてくれるんだ?」
「はっ! 驚いてちびるんじゃねぇぞ!!」
言葉と同時に背後の川から複数のナルトが飛魚の様に飛び出す。
―1・2・3・・・8人!なんだ?あの術は・・・。
―なに?残像じゃない、全部実体って?
アカデミーで習っていない初めて目にした術に、2人はカカシに迫るナルト軍団を凝視する。
「分身じゃなく影分身か・・・残像ではなく実体を作り出す術・・・。
読まれ易い攻撃を手数を増やすことで補おうってわけか・・・・・・
中々良い作戦と言いたいところだが・・・・・・ま! 相手が悪かったな」
上忍レベルの術を使えることには驚いたが、いかに数が増えたところでカカシには大した問題ではない。
一直線に自分だけを目指して来るナルト達を迎え撃つため、腰を落として構える。
だが、
「な・・・なにぃ!!! 後ろ!!?」
その光景に誰もが目を剥いた。
そして完全に虚を突かれ、カカシは今までにない程に驚愕の声を上げた。
いつの間にか背中にへばり付いたナルトが、ガッチリと両肩を押さえつけていたのだ。
カカシは目の前のナルト達に気を取られ、僅かな間周囲の気配を探るのを怠ってしまった。
「油断大敵!上忍が後ろを取らてりゃあ、ざまぁねぇよな!!」
―ナルト!! けっこうやるじゃない!! アンタ本当にどうしちゃったのよ!!?
度肝を抜かれたサクラだが、ナルトを見るその表情が初めて晴れやかなものになった。
重ね重ねのナルトの勇姿に、サクラの中でのナルトの評価が、『鬱陶しいだけのドベ』から『嫌いだがやる時はやる奴』に昇格していた。
「陽動作戦ってやつか」
ここまでやられては認めないわけにはいかない。
サスケはナルトを相変わらず見下してはいるが、一応賞賛し知らず知らずの内に笑みを浮かべていた。
サスケとサクラの見守る中、計8体の影分身がカカシの動きを封じ、助走をつけて飛び上がった1人が肘を大きく振りかぶる。
「水浸しにしてくれた礼だ!! ありがたく受け取りやがれ!!!」
ナルトは助走と空中からの落下で重力を味方につけ、凶器と化した肘を目標に向かって振り抜いた。
いかに攻撃が軽いと言っても、これを喰らえばダメージを受ける事は必至。
―チィ!! そうきたか!!
しかしナルトが攻撃したのはカカシではなく、自分の影分身の一体だった。
《なるほど、これなら里一番と言われていても肯けるな。 ・・・・・・・・・人格はアレだが》
―丸太の変わりに俺の影分身を変わり身に使う・・・・・・。 とっさの判断は悪くねぇな。
2人の主従は揃って(玉藻は少し違うが)、カカシの評価をまた少し上げてやったのだった。
自分の攻撃を利用されたナルトは、影分身を残らず消して周りを見渡し、カカシを探すフリをする。
すると木の根元に落ちている光り輝く鈴が視界に写った。
―鈴の真下に二重で罠仕掛けてんな・・・。 で仕掛けたカカシは土の下にいるけど・・・・・・まぁ引っ掛かっとくか。
ナルトはキョロキョロと辺りを見渡し、恐る恐る鈴に近づく。
「ぬおぉ!!」
もちろん鈴の一歩手前で足にロープが絡み付き、真っ逆さまに吊るされた。
―罠にきまってんだろが・・・。
縄に吊られ無様な姿を晒すナルトに、サスケは呆れてものが言えなかった。
ついでに、一瞬でも焦りを感じたことが、なんだかバカらしくなってしまった。
「・・・・・・まさか引っ掛かるとはな・・・・・・。 よー分からん奴だなお前は・・・」
地面が盛り上がり、地上に出てきたカカシは鈴を拾い上げながら、ナルトに向かってポツリと呟いた。
中忍並みのスピード。
平然と急所を狙う冷徹さ。
上忍でも困難な多重影分身をやってのけたチャクラの容量。
かと思えば気配はバレバレで手裏剣術は大した事ない。
その上単純なトラップには引っ掛かる。
頭が切れるようで何処か抜けている。
予測の出来ない出鱈目さに、カカシはどう評価を下してしていいのか分からなかった。
だがそれも束の間、宙吊りになったナルトが煙を上げて消える。
―これも影分身!? だったら本体は!? ・・・・・・・・・気配が遠いな・・・川底を移動して退いたのか?
カカシの予想通り、ナルトは寒さのあまり影分身を残してとっくの昔に撤退していたのだ。
そして現在は離れた場所でずぶ濡れに服を絞っている最中だったりする。
―・・・・・・ハハ、つくづく面白い奴だ。 少し名残惜しいが・・・、ま、次に期待するか・・・。
撤退した理由が分からず気勢を削がれはしたが、下忍を相手に楽しめるとは思わなかった。
中途半端な終わり方だったが、カカシにとっては色んな意味で本当に楽しい一時だった。
頭を掻きながら声を殺して笑うカカシだが、それがほんの一瞬だけ隙を作ってしまった。
―ここだ!やっと隙見せやがった!!
そしてそれを見逃さなかったサスケの放った無数の手裏剣は、寸分違わず目標に突き刺さった。
「!!!」
だが、凶器に貫かれ血塗れになった筈のカカシは、煙を立てて丸太へと姿を変えた。
―あそこか・・・・・・。
ナルトによって素で油断してしまったカカシだが、下忍の攻撃でやられる様な男ではない。
一瞬で危険を察し変わり身と同時に樹上に移動。
手裏剣の軌道からサスケの位置を割り出して、サスケの潜む枝を視界に納める。
―くそ! また変わり身か。・・・今の手裏剣でここがバレたな!
「わざと隙見せやがって! ざまぁねぇ・・・罠に掛かっちまった」
サスケは忌々しげにぼやき、素早くその場を離れた。
―・・・サスケ君・・・どこにいるのかな!?
サスケが移動した直後にサクラも動き始めていた。
―・・・まさか、もう先生に!? イヤ! サスケ君に限ってそんなことないわよねっ!
恋する乙女は想い人を探しながら一心不乱に樹上を駆け回る。
・・・・・・・・・・・・鈴取りはどうした?
(ガサ!)
「!!」
耳に届いた物音にサクラは息を殺して身を潜めた。
木々の合間からは、本を片手にたたずむカカシの姿が見て取れる。
―・・・セーフ気付かれてない・・・。
サクラはホッと胸を撫で下ろす。
だがカカシが気付かない筈がない。
「サクラ、後ろ」
条件反射で振り向いた先には、木々の向こう側に立っていた筈のカカシの姿があった。
サクラは悲鳴を上げる間もなかった。
カカシが印を結び、舞い上がった木の葉が体の周りを取り巻く。
サクラは自分を取り囲む木の葉を見つめ虚ろな表情になり、次第にトロンとした目に目蓋が下りる。
そして吹きつけた風によって木の葉は消え去り、意識が戻った。
「え!? え!? 今の何!? どうなってんの!? 先生は!?」
正気を取り戻したサクラが辺りを見回すも、木の葉など一枚も落ちておらずカカシも忽然と姿を消していた。
「サクラ・・・」
―! この声は・・・。
「サスケ君!」
不意に聞こえた声にサクラは再び条件反射で振り向く。
さっきと違って今度は嬉しそうに振り向いた。
「・・・サ・・・・・・サク・・・ラぁ・・・た・・・助けて・・・くれ・・・・・・」
しかしサクラの目に飛び込んだのは、ボロボロになったサスケだった。
夥しい量のクナイを突き立て血塗れになり、足があらぬ方向へ曲がった上に片腕が見当たらない。
サクラは顔面蒼白になり、目に大粒の涙を浮かべて震える。
「あぎゃあああぁあああああ!!!」
想い人の凄惨な幻に悲鳴を上げ、泡を吹き白目を剥きながら空を仰いだ。
「・・・・・・少しやりすぎたか・・・」
樹上からサクラを見下ろし、ポツリと言ったカカシの顔は『本当にそう思ってるんですか?』と聞きたくなる程平坦なものだった。
その頃ナルトは・・・・・・。
「・・・・・・春野か?」
絞ったシャツに袖を通しながら、サクラの金切り声を聞いていた。
《何とも色気のない嬌声だな・・・・・・》
「確かにな。もうちょっと色っぽくなんねぇのかね?ったく」
《期待するだけ無駄ではないのか?》
「いや・・・別にしてないし」
・・・・・・・・・・本人が居ないところで毒を吐きまくる遠慮のない2人だった。
《あの小娘はどーでもいいとして、これからどうするのだ?》
「時間もあんまりねぇし・・・次でどーにかするよ」
《ふむ。では参るか》
「何でお前が仕切ってんだよ・・・」
《気分だ、気分!》
「へいへい、わかりましたよ」
ナルトはブツブツ言いながら、緊張感のない表情でカカシの元へ向かったのだった。
「忍戦術の心得その2、幻術・・・。・・・サクラの奴簡単に引っ掛かっちゃってな・・・・・・」
―幻術か・・・一種の幻覚催眠法・・・。 あいつなら引っ掛かるのも無理ねーな・・・・・・しかし・・・。
「オレをその辺の奴等と一緒にするなよ・・・」
「そういうのは鈴を取ってからにしろ。サスケ君・・・」
木にもたれ掛かって本を読むカカシに、背中を向けたままのサスケ。
「里一番のエリート、うちは一族の力・・・楽しみだなぁ・・・」
カカシは木から体を放したが、ポケットに片手を突っ込み、視線は残る片手に持った本に釘付けだった。
言ってる言葉と取ってる態度が全然一致していない。
サスケはカカシに体を向けると、気にした様子もなく無言で両足を開き、上体を前に沈め右足のホルスタートと腰元のポーチに手を掛けた。
早撃ちの様な構えから手裏剣を投擲。
手元を離れた3枚の手裏剣がカカシを襲う。
「バカ正直に攻撃してもダメだよ」
カカシはそれを横っ飛びで回避する。
外れた手裏剣はカカシの背後の茂みに張ってあった綱を断ち切り、それを見たサスケはニヤリと笑った。
―トラップか!?
カカシが避けることなど計算済みのサスケは、あらかじめトラップを仕掛けていた。
カカシは茂みから飛び出してくる大量の刃を斜め後ろに飛んで再び回避。
夥しい量の刃物が、数瞬前までカカシの背後にあった木に突き刺さった。
あまりの量に冷汗を垂らすカカシだが、その後ろにサスケが現れる。
―!! なにっ!
背後に先回りしたサスケは、地面を滑るカカシが体勢を整える前に、空中で身を捻り渾身の後ろ廻しを放つ。
常人ならば間違いなく直撃したであろう一撃。
だがカカシは手甲で受け止めサスケの足を掴み取った。
サスケは足を掴まれながらも、すぐさま拳でカカシの顔面に殴りかかる。カカシはそれを手の平で受け止める。
「!!」
カカシは両腕が交差する状態になり、サスケはガラ空きになった頭部に真上から蹴りを落とすが、カカシは肘を跳ね上げて蹴りを防いだ。
蹴り・突き・蹴りの3連撃を受け止め、鈴への注意が散漫になったカカシ。
そこを狙って宙に浮いた状態のサスケが、残った左手を鈴へと伸ばす。
―こいつ!
カカシは寸前で腰を引き間合いを外すと、着地して肩を上下させるサスケを油断なく見据える。
―・・・なんて奴だ・・・。『イチャイチャパラダイス』を読むヒマがない。
こいつといい、ナルトといい・・・、今年の下忍は本当に楽しませてくれる!
微かだが鈴を掠めたサスケの力量に、さすがのカカシも動揺を隠せなかった。
《アレがイタチの弟か?似ているのは顔だけで、腕前の方は似ても似つかぬな》
―・・・・・・ついでに、性格も似てねぇ。
木の上で成り行きを見ていたナルトは、またも玉藻と一緒に毒を吐き散らしていた。
当然、気配などは絶ってはいないので、カカシもナルトの視線には気付いているが・・・・・・それはこの際おいておく。
《やはりあの一族は、イタチ以外碌な奴がおらんな・・・》
玉藻はうちは一族の中で、唯一ナルトに優しく接していたイタチにだけは好感を持っている。
だがその弟の方は気にくわなかったようだ。
―仰る通りで! あ〜、早く終わんなねーかな? ・・・つーか終われ!
鈴を奪いに来たナルトだが、先客が居たため挑戦できなかったのだ。
別にサスケと2人で鈴を取ってもいいのだが、そんな事をすればサスケが文句を垂れるに決まっている。
なるべくサスケを刺激しないように下手に出ればいいのだが、
『サスケさん自分もやるッス!御一緒させて下さい!』と、頭を下げてまで協力したいとは思わなかった。
「・・・・・・・・・・・・アレ?・・・私・・・・・・」
サスケとカカシが戦っている最中。
少し離れた場所では、幻術に掛かり気絶していたサクラが目を覚ましていた。
―! そうだわ! サスケ君が死にかけてて・・・・・・それを見て私・・・・・・。
先程の悲惨な光景が頭を過ぎり、サクラは慌てて立ち上がる。
「サスケく―――ん!! 私をおいて死なないでー!! どこなのォ―――!」
サクラはまたもやサスケを求め、大声で喚きながら走り出したのだった。
「ま!他の奴とは違うってのは、認めてやるよ」
手裏剣術・トラップ・判断力・鮮やかなコンビネーション、個人技能はどれをとっても文句なし。
またナルトと違って欠点らしい欠点も見当たらない。
ここまでの実力を見せられてはカカシも認めざるを得なかった。
「フン」
サスケはそんなカカシを鼻で笑い、複雑な印を組み始める。
【馬!】 【虎ァ!!】
印を組み終えたサスケは大きく息を吸い込み後ろに仰け反る。
「なっ・・・なにィ!!」
―その術は下忍にできるような・・・チャクラがまだ足りない筈・・・・・・!!
サスケの組んだ印を見て、これから放たれるであろう術にカカシの目が大きく見開かれる。
【火遁! 豪火球の術!!】
術の名と共に口から強烈な炎が吐き出され、サスケとカカシの間に熱の断層を作り出す。
そして数秒の間、その場を念入りに焼き払った。
―いない!
だが暫くして立ち込めていたが晴れると、カカシは姿は何処にもなかった。
―後方!? いや、上か!? どこだ!?
「下だ」
「!!」
辺りを警戒していたサスケがカカシの声に目を向けると、地中から突き出た腕が足首を掴んでいた。
―! なっ・・・。
【土遁 心中斬首の術・・・】
「ぬおぉ!」
サスケは呻き声と同時に地中に引きずり込まれ、代わりにカカシが地上に這い出て来た。
「忍・・・戦術の心得その3! 忍術だ。・・・にしても、お前はやっぱ頭角を現してきたか」
「・・・・・・・・・」
首から下が地面に埋まり、身動きの取れないサスケを屈んで見下ろすカカシ。
「でも、ま! 出る杭は打たれるって言うしな、ハハハ」
「くそ!!」
―ちくしょう・・・ここまでの差が・・・。
カカシは言うだけ言って去って行き、生首の様に晒し者にされたサスケは、忌々しげに舌打ちをした。
「「!」」
そんな中、サスケは茂みから飛び出してきたサクラと不意に目が合った。
2人の間に沈黙が流れる。
「あぎゃあああああ!!今度は生首ィ―――!!!」
「・・・・・・何なんだ、一体・・・・・・」
勘違いをして1人で倒れるサクラに、目を細めながら呟くサスケだった。
「あははははは! アホだ! あいつアホだ!!」
一部始終を眺めていたナルトは、腹を抱えて木の上を転げ回っていた。
《夢現の区別くらい付きそうなものだがな・・・・・・。 ん、主よ客が来たぞ》
玉藻は玉藻で呆れ返っていたが、カカシが足元に差し掛かったのを確認し、笑い続けるナルトをたしなめた。
「あ〜苦しかった! ・・・・・・うし! 昼まで後数分、行きますか!」
ひとしきり笑ったナルトは、両手で顔を張り飛ばし表情を引き締め木を飛び降りた。
「おりゃあ!」
そして挨拶代わりに跳び蹴りを繰り出した。
いきなりの奇襲だが、ナルトはずっと気配を絶っていなかったのでカカシは別に慌てなかった。
「よっと」
ナルトの蹴りをしゃがんで難なく避ける。
「カカシ先生! 第3ラウンド開始だ!」
蹴りをかわされたナルトは、カカシを指差し何故か胸を張って威張る。
「う〜ん・・・随分はりきっちゃってるけど、後4分しかないぞ?」
「問題ない!」
ナルトは手をかざすと4本の指を立てて不敵に笑った。
「?」
ナルトの意図が読めず、突き出された指を見つめるカカシ。
「4分じゃねぇ・・・・・・4発だ。 4発で鈴をもぎ奪ってやる!」
「・・・・・・なんちゅー、中途パンパな数だ・・・・・・」
どこかで聞いたようなセリフに、カカシはデカイ汗を垂らしながらつっこんだ。
玉藻はナルトの狙いが分かっているため、特に何も言わなかったが、カカシのツッコミには賛成だった。
そんな2人を気にすることなくナルトは地を蹴った。
「疾ッ!」
―左の膝蹴り・・・いや! 違う!!
ナルトが引き上げた膝は囮、本命はアバラへの後ろ廻し。
カカシは出しかけた右手を戻し蹴りを受け、そのまま腕を巻きつけ脇に抱えてナルトの足を捕らえる。
―まずは1発・・・。
「しゃあ!」
続いてナルトは、右足を掴まれた状態から上半身を捻り、米神を狙って右の拳を横一文字に薙ぐ。
右手が塞がったカカシは左手の掌でナルトの裏拳を止めた。
だがこの状況には覚えがあった。
―2発目・・・残りは2発。 ・・・しかしこの動きは・・・まさかサスケの!?
それもその筈。
多少の違いはあるものの、ナルトの動きはつい先程鈴に触れたサスケのものと似通っていた。
それに気付いた時には、ナルトは次の攻撃に移ろうとしていた。
サスケの時と同様に片手片足を封じた。ならば取るべき行動は1つ。
ナルトは片足で地面を蹴り、体を逆さまにしてカカシの脳天へ蹴りを打つ。
が、既にカカシは腕を引き上げていた。
―3発目・・・・・・最後の1発は鈴だな。
先程は鈴への警戒を怠ったが、今回は違う。
しかし、
「!!!」
最後の一撃に備えるカカシだったが、ナルトは残った左手を鈴ではなく顔面に放った。
さらに、今まで直線を描いていた横薙ぎの攻撃が、ここで初めて打突に切り替わった。
―なにっ!!! 狙いはオレだと!?
完全に不意を突いたナルトだが、カカシの顔面を狙った拳はギリギリのところで頬を掠め、空を穿った。
「惜しかったな、ナル「カカシ先生・・・俺の勝ちだ!」
カカシの声を遮り、ナルトが高らかに宣言した。
ナルトの攻撃はそれすらも布石だったようだ。
「なっ! ぐぅう!」
突如カカシは右目を押さえ膝を突き、ナルトは離れ際に鈴を奪い取り一回転して着地を決めた。
《フッ。 主よ、実に面白かったぞ・・・》
すべてを見届けた玉藻は、主にしか聞こえない賞賛の声を送ったのだった。