NARUTO
〜九妖忍法帳〜 11話目
―教室―
昼の騒ぎも無事?収まった。
ナルトと一緒に教室に入った紅は、自分の担当であるシノ・ヒナタ・キバの3人を連れてさっさと出て行った。
ついでに紅は、ナルトに次のことをしつこいぐらい念を押した。
@ナルトの担当上忍はカカシって変態だから、絶対に気を許してはいけない。(これは素直に頷いた)
Aもしもイジメられたら、すぐに自分に報告しろ。(イジメ?誰に?
と思ったが一応頷いておいた)
B自分のことはお義姉さんと呼べ。(かなり戸惑ったが、紅が期待に満ちた目を向けていたので渋々ながらも了承した)
Cお義兄さん(九妖)によろしく。(激しく疑問だったが、反論すると話がややこしくなるので返事だけは返した)
ナルトは色々とつっこみたかったが紅に両肩を掴まれて力説された為少しビビッてしまい、結局聞きたかったことを何も聞けなかった。
その様子を遠くから見ていた生徒達が、ア然といたのは言うまでも無い。
んで、考えがまとまらない内に雑木林に放置してきたアスマが教室に入ってきた。
アスマは普段から気絶し慣れているのか、結構早めに回復した上ダメージなど感じさせない動きで近寄ってきた。
そしてアスマにも紅と同じ事を言われた。
@担当上忍はカカシってアホだから、絶対に信用するな。(お前もだよ。 と叫びたかった)
Aもしもイジメられたら、すぐに自分に報告しろ。(だから誰にだよ? と心の中でつっこんだ)
B自分のことはアニキと呼べ!(また襲われるのは嫌なので、聞こえないフリでやり過ごした)
C義姉さん(紅)によろしく。
最後のを無視したらもの凄い勢いで詰め寄られたが、これは猪鹿蝶の3人が助けてくれた。
自分の担当の下忍に引きずられて泣き叫びながら教室を出て行くアスマを見て、『シカマル達も大変だなぁ』と思ったナルトだった。
どうやら旧家の子供たちは、自分の父親達のおかげで変人には免疫がある様だ。
まぁそんなわけで最早つっこむ気力も消え失せ、ナルトは机に突っ伏していた。
「・・・・・・・・・・・・」
ナルトはアスマと紅の言動を思い出しながら、状況の整理を試みた。
アスマの奇怪な言動はいつもの勝手な妄想として片付けられる。
だが紅の言動については丸っきり見当が付かない。
解決の糸口が見つからぬまま、静まり返った教室に時計の音だけが虚しく響いている。
他の生徒達はそれぞれの担当上忍と一緒に教室を出て行ったが、ナルト達7班の担当であるカカシはまだ来ていない。
それ故現在教室にはナルト・サスケ・サクラの3人のみが残っている。
「アンタ・・・さっきからずいぶん大人しいわね・・・」
班決めの時にヒステリー呼ばわりされて未だに不機嫌なサクラが、腕組みをしながらボソリと呟いた。
「・・・・・・頼むから、放っといてくれ」
ナルト頭を使いすぎて知恵熱状態になっていて、口論する気も説明する気も起きない。
しかし、
「もういいや・・・考えても意味ねぇ・・・分かんねぇモンはしょうがねぇ」
席を立ち、そう自分に言い聞かせるナルト。
ナルトはふっきれた。いや、ふっきれたというより考えるのを放棄しただけだ。
考えて分からないのなら直接確かめれば良い。
さっさと説明会を終わらせて、帰って九妖として紅の家に事情を聞きに行こう。
ついでにカカシが担当なのも仕方がない。
そう割り切る事で自分を誤魔化した。
「「?」」
サスケとサクラはナルトの呟いた言葉の意味が分からず、互いに顔を見合わせた。
それから暫くして、3人はいつまで経っても現れない担当を未だに待ち続けていた。
この中でナルトだけは、アカデミー内にいるカカシのチャクラを感知している。
だが、カカシのチャクラは一定の場所から動こうとせず、一向に教室に来る気配が無い。
だからと言って下忍の自分がカカシを連れてくるわけにはいかない。
―居るんだったら、さっさと来い変態が!!
ナルトは心の中で毒を吐く。
早く帰って一連の謎の真相を確かめたいので、黒板の前を行ったり来たりしてどうにも落ち着かない。
サスケも文句一つ言わず席に座ってはいるが、内心かなりイラついている。
「ちょっとナルト! じっとしときなさいよ!!」
そわそわするナルトの行動を見て、机の上に腰掛けたサクラが注意する。
「・・・・・・・」
サクラの言う事が正論なので、反論できずちょっと悔しいナルトだった。
―くそ・・・・・・全部カカシが遅いのが悪いんだよ・・・・・・あの野郎どうしてくれよう?
責任をカカシに擦り付け、何かを思いついたのか自分とこの居候の様な黒い笑みを浮かべた。
ナルトは目の前の黒板消しを手に取ると、せっせと中身の綿を抜いて何かをギッシリ詰め込む。
ちなみにサクラとサスケに背を向けている為、2人には何をしているか分からない。
そして作業が終わると、椅子を踏み台にして黒板消し(改)を戸口の隙間に挟む。
だだ、その時ジャラッ! と黒板消しでは有り得ない音がした。
「ちょっと!! 何やってんのナルト!!」
「時は金也! 人様の貴重な時間を潰してくれたクソ野郎には、それ相応の天罰が下るべきだ!」
椅子から飛び降りて、『罪人に人権無し』の持論を思う存分に発揮する。
―ん? やっとカカシのチャクラが動き出した・・・・・・さぁ、来い!
ナルトは期待に胸を膨らませる。
「ったくも―――! 私!知らないからね!」
両手を腰に当てながら、持ち前の優等生ぶりで表面上はたしなめているサクラ。
―こうゆーの、けっこー好きなのよね―――!!
だが内に秘めたるもう1人の人格は、まったく正反対の事を仰っていらっしゃる。
彼女はお約束のネタが好きらしい。
「フン、上忍がそんなベタなブービートラップに引っかかるかよ」
横目で流し見て、レベルが低いとばかりに一蹴するサスケ。
だがその時、戸口に手を掛けてガラガラと戸を開けてカカシが教室に入ってきた。
カカシは仕掛けられた黒板消しなどお見通しだったが、『カワイイイタズラだなぁ〜♪』と軽く考えてワザと避けなかった。
だが。
ザク!! と絶対に有り得ない音と共に、落下した物体が突き刺さった。
「ぐおおおおおおおお!!!」
予想していなかった激痛に、頭を押さえて床を転げるカカシ。
彼特有の銀髪が血で真っ赤に染まっている。
ナルトが黒板消しに詰めたのは、大量のまきびし。
黒板消しは見抜いても、その中身までは見抜けなかった里一番。
「ごごごご、ごめんなさい!! 私は止めたんですよ!!? (ナルト!!アンタ何したのよ!!?)」
表のサクラと内なるサクラ。両者一致で、予想外の事態に大慌て。
―・・・・・・これで本当に上忍か? 頼りなさそうな奴だ・・・・・・。
カカシの事など欠片も心配していない・・・・・・サスケが冷めた目でカカシを見る。
むしろ『アホかお前は?』とでも言いたげである。
「・・・お前・・・これはヒドイんじゃないの・・・・・・」
カカシとしては、雪ゲットの為にナルトを攻略しようと考えていた。
その為イタズラにワザと引っかかって笑いを取り好感度を上げようとしたのだが、こんな手の込んだマネをするとは思っていなかった。
悪質なイタズラに本気で腹を立て、刺さった黒板消しを抜きながら恨めしそうにナルトを見上げるカカシ。
既に当初の目的など頭にない。
「こんなのに引っかかる方が悪いんじゃねぇの? 上忍のクセに・・・」
カカシの視線などサラリと流し、ナルトは更に追い討ちをかけて鼻で笑った。
「・・・・・・・・・」
言い返したい。
すっごく言い返したいのだが、至極正論なのでぐうの音も出ない。
カカシは奥歯を鳴らし、拳を握って1人で怒りに震えていた。
「・・・・・・お前らの第一印象は・・・嫌いだ!」
涙目で叫んだカカシは、拗ねた子供そのものだった。
そんな自分達の担当を見て、サスケとサクラは大きなため息を吐いた。
―校舎の屋上―
「そうだな・・・・・・、まずは自己紹介してもらおう」
暫く経って何とか冷静さを取り戻したカカシが、手すりに腰掛けて眠たそうな目で提案する。
真っ赤になっていた頭髪は何故か元の銀色を取り戻している。
「・・・どんなこと言えばいいの?」
地面にひざを抱えて座ったサクラが問い返す。
「・・・そりゃあ、好きなもの嫌いなもの・・・将来の夢とか趣味とか・・・。 ま! そんなのだ」
教室では失態を演じたが思考を切り替え、これを機にナルトのリサーチをしようと密かに眼を光らせるカカシ。
「まずは言いだしっぺからだろ? つーことで先生からな」
ナルトがカカシに『どうぞ』と、掌を向けて先を譲る。
「そうね。 見た目、ちょっと妖しいし」
子供とは残酷である。初対面で既に軽く見られている里一番の忍。
だがこの男、あやしいのは見た目ではなく中身の方である。
「あ・・・・・・オレか?オレは【はたけ カカシ】って名前だ
好き嫌いをお前らに教える気はない! 将来の夢・・・って言われてもなぁ・・・。 ま!趣味は色々だ・・・」
まったく自分の情報を教える気がないカカシ。
―ふふふっ・・・謎の多い男。 これでナルトのハートは鷲掴みだ!
後は担当になってじっくりとオレの魅力を見せ付けてやれば
いずれはナルトから雪さんの耳にオレ勇姿が・・・・・・・・・。
口には出さないが、顔に出ていたりするカカシだった。
「ねぇ・・・結局わかったの・・・・・・名前だけじゃない?・・・」
だがサクラに話を振られ、3人で顔を見合わせていた為気付かなかった。
この時ばかりは滅多に意見の合わないサスケとナルトも同時に頷いた。
「じゃ、次はお前らだ・・・まずは女の子」
「私? 私は【春野 サクラ】
好きなものはぁ・・・ってゆーかぁ好きな人は・・・
えーとぉ・・・将来の夢も言っちゃおうかなぁ・・・」
かなり熱のこもった視線をサスケに浴びせながら、顔を緩ませているサクラ。
ちなみにサスケは、少し照れて頬がほんのりと赤くなっている。
「キャ―――!!」
恥ずかしいなら言わなければ良いのに・・・なんてツッコミはない。
どうやら彼女の頭はサスケでいっぱいのようだ。
「「・・・・・・・・・」」
ナルトとカカシは絶叫するサクラにちょっと引いた。
「嫌いなものはナルトです!」
「あ、そう」
分かり易すぎる顔できっぱりと拒絶の言葉を吐いたが、ナルトは耳をほじりながら気にも止めない。
―この年頃の女の子は・・・忍術より恋愛だな・・・・・・
カカシは頬に手を当てながら、呆れたような表情をしていた。
「次!」
カカシは、このままでは埒が明かないのでサスケを指名した。
「名は【うちは サスケ】
嫌いなものならたくさんあるが、好きなものは別にない
それから・・・夢なんて言葉で終わらす気はないが、野望はある!」
顎の前に両手を組み、瞳に確固たる意思を宿らせ淡々と言葉を紡ぐ。
「一族の復興と、ある男を必ず・・・」
サスケは一度息を吸い込み、
「殺すことだ」
憎しみと殺意を込めて言い放った。
一陣の風が通り抜け、辺りの空気がギシリと軋んだ。
―かっこいい・・・♪
事情を知らないサクラは、サスケの言葉を深く捉えてはいない。
―・・・・・・やはりな・・・。
事情を知るカカシは、サスケの言葉を聞きイタチの姿が脳裏を過ぎり、その右目が険を帯びた。
―イタチも大変だねぇ・・・まぁ、どこまでやれるか見せてもらおうか・・・なぁうちは?
サスケの殺気を余所にナルトは白けた顔をしていた。
イタチによって一族が滅ぼされるまで、里の中で最もナルトを憎んでいたのは彼等だった。
うちは一族は14年前の事件で多くの同胞を失った。
そして多くの者と同様に、その怒りと悲しみの捌け口になったのがナルトであった。
殴られ、蹴られ、刃物で斬りつけられ、挙句の果てに毒を盛られた。
見るに見かねた旧家の当主達がいくら説得しても、彼らは頑なに耳を閉ざし真実を理解しようとはしなかった。
そもそも玉藻の子を殺した忍の中には、うちは一族の人間も含まれていたのに・・・。
それ故にナルトは、うちは一族を嫌っているのだ。
もっとも、サスケを嫌う理由はサスケが無意識に自分の不幸を周囲に吹聴している節があるからだが・・・。
「んじゃ、最後にお前だ」
暫く気まずい雰囲気だったのが、黙っていても仕方がない。
そう思ってカカシがナルトに催促する。
「俺は【うずまき ナルト】
好きなものは美人のお姉さん(里人以外)、嫌いなものは変態・・・趣味は貯金かな」
ウソではないのだが本音を言うつもりは無く、リアクションに困るような事を次々と並べていくナルト。
「「・・・・・・・・・・・・」」
唯一まともなのは趣味だけ。 サスケとサクラはどうつっこめば良いのかがわからずデッカイ汗を浮かべている。
「将来の夢は?」
担当上忍にはアカデミーの資料が渡されるので一通りの事は知っているが、カカシは『念には念を』でリサーチに余念が無い。
「将来の夢は・・・・・・秘密ってことで」
「ナルト・・・先生とっても知りたいなぁ・・・」
「先生だって名前以外のことは言ってないだろ」
「だったらオレの夢「結構です」
雪攻略に必死なカカシがナルトに食い下がったが、相手にもされずあっさり一刀両断。
カカシの夢などまったく気にならない、どうせ碌でもない夢だろうから聞かない方が無難だと判断した。
自分の夢に興味も示してもらえなかったので、少しだけ項垂れるカカシ。
里一番の忍は案外打たれ弱かった。
「アンタ、『将来は火影になる』って言ってたじゃない」
「深く気にすんな・・・・・・俺の夢はそんなモンじゃない」
里の最高権力者の座をそんなモンと断ずるナルトに、サクラは疑問符を浮かべた。
ナルトが言っていた『火影になる』、それはドベを演じていた設定上の話。
実力は出さずとも演じる事をやめたナルトに、そんな必要はなくなったのだ。
ほんの一部の者にしか教えていないナルト本当の夢。
それは、自分が仲間と認める者達と共に新しい里を創ること。
ナルトが里を創ろうと考えるのには、2つの理由がある。
1つは自分や玉藻が木ノ葉に受け入れられる事など有り得ないからだ。
いや、そもそも受け入れてもらう気もないのだが。
木ノ葉の里で憎しみと殺意の中、一生を終える気など毛等ない。
居場所が無いというのなら、居場所を創ってしまえばいいだけの話だ。
その為に暗部としての任務をこなし、将来の軍資金を着々と貯めているのである。
ちなみに今のところ里のメンバーは次の通り。
里長=ナルト 里長婦人=アンコ 御意見番=自来也 里長補佐=夜空・雪 特別顧問=玉藻
自分の里を旗揚げした暁には、テウチやアヤメ、イルカなども里に移ってもらうつもりでいるのだ。
そしていずれ紅に正体を明かした時には、同じく誘うつもりでいる。
その他にも旧家の子供達や当主達には是非来て欲しいと考えているし、将来、里の支えになる優秀な人材の発掘にも余念が無い。
とまぁ、ナルトがアカデミーに通っていたのには、そういった目的もあったのだ。
2つ目の理由は、ナルトが里を創るキッカケとなった1つ目以上に重要な理由。
・・・それは玉藻の寿命である。
妖魔の寿命は、人間とは比べ物にならない程長い。
自分達が生きている間は良いが、自分達が死んだ後は玉藻は孤独のなかで生きねばならない。
ナルトは口ではなんだかんだと言いながらも、玉藻のことを本当に大切に想っている。
人との別れは止められない。だが、新しい出会いを作ってやることは出来る。
自分の子供。 子供の子供。 孫の子供。 そのまた子供。
『子々孫々に渡るまで玉藻に家族を』
気休めかもしれないが、玉藻が心から安らげる里を自分の手で創ってやる。
言うなれば人と妖魔が共存できる里。
それがナルトが幼い頃から心に誓い、今も、そしてこれからも目指し続ける理想である。
ナルトはどこか面白そうな・・・・・・挑むような表情で空を見上げた。
―・・・・・・先生。
カカシはナルトの表情に四代目火影の姿を重ね、どこか懐かしいものが込み上げてきた。
―ナルトは嫌いだけど・・・・・・なんだろ・・・? ・・・何か変な感じ・・・。
サクラは今までのナルトとのギャップについて行けない。
―・・・・・・こいつ・・・・・・。
困難な野望に燃えるナルトの顔。 そして感じさせる風格は、騒がしいだけのドベとは到底思えなかった。
それがサスケの認識をほんの少しだけだが、改めさせた。
「よし!自己紹介そこまでだ。明日から任務をやるぞ」
自己紹介も終わり、カカシの口から任務の2文字が出てきた。
「任務ってどんな?」
カカシの言う任務が試験だと知らないサクラが、任務の内容を尋ねた。
「まずはこの4人だけで、あることをやる」
カカシはそう言って腕を組みなおす。
「あること?」
もったいぶったカカシの言葉に、サクラの首が斜めに傾く。
「サバイバル演習だ」
「なんで任務で演習やんのよ? 演習ならアカデミーでさんざんやったわよ!」
なぜ卒業してまで演習をやるのか? 既に下忍となった気でいるサクラが不満をぶつける。
だがカカシは1人で含み笑いを漏らし、その態度をサクラが責めた。
「いや・・・ま! ただな・・・・・・オレがこれを言ったら、お前ら絶対引くから」
サクラの叱責など何処吹く風・・・・・・、カカシは飄々とした態度を崩さない。
「卒業生二十七名中、下忍と認められるのはわずか9名
残りの18名は再びアカデミーへ戻される
この演習は脱落率66%以上の超難関テストだ!」
一変して真顔になったカカシのセリフに、サクラの目元が引き攣り、サスケの表情も険しくなった。
ナルトは子供相手にプレッシャーをかける大人気ないカカシに、渋い顔をしていた。
「ハハハ、ホラ引いた」
ドッキリが成功して、3人を指差しながらはしゃぐカカシ。
「「「・・・・・・・・・」」」
それぞれ思うことはあっても口には出さなかった。 というか今はそんな余裕がない。
「じゃ、そういうことで明日は演習場でお前らの合否を判断する
忍び道具一式持って来い。それと朝飯は抜いて来い・・・・・・吐くぞ!
ま!詳しい事はプリントに書いといたから、明日は遅れないよーに!」
カカシは自分の事を棚に上げて、3人の元へプリントを渡すために歩み寄った。
「吐くって!? そんなにきついの!?」
明日のことを想像したのか、サクラが頭を両手で掻き毟りながら絶叫する。
―・・・けどこの試験に落ちたら、サスケ君と離ればなれになっちゃう・・・これは愛の試練だわ!
拳を握り締め、決意を新たにする恋する乙女。
彼女にとっては合格よりも、サスケと一緒になることの方が重要らしい。
「・・・・・・・・・」
受け取ったプリントを握り潰し、サスケは眼を細める。
たとえどんな内容であったとしても、必ず受かってみせる。
サスケにとって、すべては野望のための通過点にしか過ぎない。
―さっさと帰って、紅さんとこに行こう・・・
ナルトは明日の試験よりも、昼休みの謎を解く方が先決であった。
「ああナルト、ちょっと・・・」
すぐに立ち上がりそのまま帰ろうとしたのだが、カカシがニコニコしながら手招きをしたのでその場に立ち止まった。
「俺急いでるんだけど」
他の2人が帰る中、片手で頭を掻きながらめんどくさそうにカカシの元へ足を運んだ。
「あのさ・・・お前のお姉さんの好きなものって何か知ってる?」
ナルトの肩に手をまわし、少しでも雪の情報を探ろうと期待に胸を膨らませ耳打ちをする。
「お姉さん?紅さんのこと?」
ナルトが思い浮かべたのは、本日めでたく義の姉となった紅であった。
しつこいようだがナルトは、カカシとうずまき一家の間で行われた陰謀めいたやり取りを知らない。
カカシは雪のことを言っているのだが、カカシと雪に面識があるなどナルトは夢にも思っていない。
だがカカシが知りたいのは雪の好みあって、紅の好みではない。
「紅? なんで紅が出てくるのか知らないけど、先生が聞きたいのは雪さんのことだぞ〜♪」
「・・・・・・は? 先生・・・今何て?」
「ん? 雪さんのことだぞ〜♪」
ご丁寧にも同じセリフ同じ口調でリピートしてくれた、里一番の忍【はたけカカシ】。
「・・・何でせっちゃんのこと知ってんの?」
内心かなり動揺しているが、極めて平静を装うナルト。
「昨日の夜に会ったんだよ? ・・・っと、そんな事よりも早く教えてよ〜」
お預けを食らった犬のように息を荒くして、ナルトに余計に顔を近づけ雪の情報をねだるカカシ。
「・・・・・・あのさ、その時紅さん達も一緒じゃなかった?・・・」
ナルトが1つの可能性に気付き、両手でカカシの顔を遠ざけながら尋ねた。
「ん? そうだよ? ああ、雪さんのお友達も一緒だったぞ」
―せっちゃんの友達?・・・・・・・・・まさか・・・・・・。
当然ナルトの頭に2人の人物が浮かび上がる。
下手人の目星はついた。後はもうカカシから証言を得るだけ。
「その友達って・・・・・・やたら偉そうな金髪赤眼で20歳後半位の女と、言葉遣いが妙な片腕の男じゃなかった?」
「うん、そうだけど?」
すべての謎が解た。
アスマの奇行や、紅の不可解な発言。
頭を悩ませていた難解な疑問が解け、清々しい気持ちになったと同時に、ナルトの心に怒りの炎が燻り出した。
心臓から額の血管に、大量の血液が送り込まれる。
何故こんな自分があんな目に遭ったのか・・・。
それは自分の寝ている間に、玉藻達が何か余計な事をやらかしてくれたのだろう。
何が目的だったのかは知らないが、毎度お馴染みのとばっちりが自分に来た。
それだけで理由は十分。
「カカシ先生・・・・・・せっちゃんに送るなら、菊の花がいいと思うぞ・・・」
ナルトはそう言い残して、居候に制裁を加えるべく自宅へと向かった。
ちなみにカカシはナルトの言葉を信じて疑わず、すぐにやまなか花へと向かった。
だが、カカシは肝心の雪の住所を知らなかった。
その為大量の菊の花束を抱えたカカシの姿が、里内各所で多数目撃されたそうだ・・・・・・・・・。
―火の森・ナルトの自宅―
うずまき邸の庭先に2人の男女が立っている。
「お帰りなさい〜」
「ナルト、お帰り」
家主の帰りを迎えたのは、洗濯物を干す雪とダルそうに背伸びをする夜空。
家の周りは木々が無く開けた場所になっていて、日の光が差し込んで洗濯物が良く乾く。
雪は風になびく洗濯物を眺めながら、満足気に微笑んでいた。
隣の夜空は、さっきまで寝ていたらしく眠たそうに目を擦りアクビをする。
戦闘態勢に入っっているナルトだが、殺気を一切出さないので2人はまだ自分達の危機に気付いていない。
「ナルトさん、どうしたんですか〜?」
「元気がなかね?」
それはひとえにあなた達のせいであります。
「・・・・・・・・・・・・俺に兄貴がいるんだってなぁ? 初耳だったよ」
顔を伏せたままのナルトが、眼光だけで2人の心臓を射抜く。
「よ、よ、よかったやんね!!」
「ほ、ホントに良かったですね〜!!!」
心臓を握り潰される様な圧迫感が覆いかぶさり、自分達の悪行が露呈してダラダラと冷や汗を流す死刑囚2人。
「あと俺結婚するんだってよ? それから変態のアニキが出来たよ・・・・・・いや〜嬉しくって涙が出そうだよ」
数々の罪状を並べ立て、振りかぶった腕の周囲にチャクラが渦巻き、直径10cmの螺旋の弾丸が六発程現れた。
ナルトが螺旋丸を改良して創り上げた、対遠距離用【螺旋丸弐式 穿翔】である。
「か、かか、家族が増えて嬉しかね!!」
「そ、そうですね〜!! お赤飯炊きましょうか〜!!?」
「その必要はねぇ・・・・・・」
「ゆ、許してくれるとね!?」
「ナルトさん! 信じてました!!」
死中に活を見出すため、2人はここぞとばかりにナルトの機嫌をとるが、
「俺が真っ赤に染めてやる!!!」
貞操の危機まで感じたナルトが許す筈も無く、容赦なくチャクラの弾丸を投げつけた。
「あぶねっ!!!」
「ヒィィ!!」
上下左右、ありとあらゆる方向から迫るチャクラの塊を、紙一重で避け続ける夜空と雪。
目標を外した螺旋丸の着弾点は、見るも無残に抉れ隕石が落ちた様にクレーターが出来ている。
あんなのを喰らえば一溜まりも無い。
そう思って兎に角避ける! 避ける! 避け続ける!!
「避けるんじゃねぇ!!!」
だがかわす度に投擲! 投擲! ひたすらに投擲!!
しかも投げるたんびに数が増えていき、次第に避けるのが困難になってきた。
暫くその攻防が続いたが結局2人は白旗を揚げて、鉄拳による制裁が行われた。
・・・・・・・・・・・・周囲の地形がかなり変わっていたが、不思議な事に家だけは無傷であった。
―玉藻の部屋―
うずまき邸の中で最も豪華な装飾が成された玉藻の部屋。
「・・・・・・夜空め・・・何なのだ、やかましい・・・・・・おちおち寝ておれぬではないか」
部屋の主は、外でけたたましく鳴り響く轟音に目を覚ました。
おそらくは夜空であろうと勝手に決めつけているあたり、彼女と夜空のうずまき家においての上下関係が窺える。
騒がしい同居人に不満を漏らしながら、大きなベットから渋々抜け出る。
彼女の寝巻きである白い浴衣の上から黒い羽織をひっかけ、ドアを開けると・・・・・・。
「・・・・・・おはよう玉藻」
ニッコリと笑った鬼が、ドアの前で腕組みをして立っていた。
だが顔は笑っているが目は全然笑っていない。
―ヒィ!!
玉藻の第六感が警鐘をならし、本能に従ってドアを閉めようと自分の側に引っ張ったが、
「ヒデェなぁ・・・・・・閉めなくても良いだろ?」
ドアの隙間に足が滑り込んで閉められなかった。
「あ、主よ! な、何用だ!? それと! その手に持った縄は何だ!?」
一瞬の隙をついて部屋に踏み込んだナルト。
自分とこの家主に本気で焦る最強の妖魔。
「いや、玉藻のおかげで素敵な兄弟が出来たんで・・・・・・そのお礼をしようと思ってな」
邪悪に口を歪め、扉を閉め片手で鍵を掛る。
「れ、礼には及ばん!当然の事をしたまでだ!!」
言葉だけは偉そうだが、膝が笑っている。
震える足でじりじりと後退しながら、逃げる隙を窺うがそんなものは何処にも無い。
そうこうする間に一歩。また一歩と、ナルトとの距離は縮んでいく。
「へぇ〜? じゃあ当然礼も受け取るよなぁ?」
「ん!」
遂にナルトの手が玉藻の腕を掴み、そのままベットに押し倒す。
「・・・・・・・・・やさしくしてくれよ・・・・・・・・・」
ようやく観念した玉藻は、目を閉じて胸の前で十字を切った。
こうして一連の騒ぎは一応終わりを迎えた。
そして制裁を受けた夜空と雪が悪夢にうなされる中、玉藻だけはどこか幸せな顔をしていた・・・・・・・・・。
キャラプロフィールA
【奈良 シカマル】12歳
影使い奈良家の跡取り。
極度のめんどくさがりで、授業やテストも寝ていたためアカデミーの成績は下から2番目。
だが本当はIQ200の超天才で、非常の事態にも対応し実戦で力を発揮できるタイプ。
自分達の父親同様【いの】【チョウジ】とは幼馴染であり、ナルトとは頻繁に将棋を打っていてかなり仲が良い。
この作中では、数少ない常識人の1人。
【山中 いの】12歳
【秘伝・心転身の術】を伝える山中家の一人娘。
サスケに惚れていたのだがナルトが素を出した為、若干気になりだした。
今のところは恋愛感情までは発展しておらず、『ちょっとイイかな〜』って思うぐらいである。
だが、一度思い込んだら止まらないタイプだったりする。
ナルトも対象年齢外なので今のところは手を出す気は無いが、あと2〜3年したら美味しく戴くつもり。
【秋道 チョウジ】12歳
【秘伝・倍化の術】を伝える秋道家の跡取り。
『お前、胃袋いくつ持ってんだ?』と聞きたくなるほどよく食べる。
【デブ】の単語に過敏に反応するが、ポッチャリ系はセーフらしい。
アカデミーの成績は思わしくないが、シカマル、いの、と3人揃えば無類のチームワークを発揮する。
何故かナルトのことを気に入っていて、自分の命の源泉である筈のお菓子をよく分け与えている。
【油女 シノ】12歳
蟲使い油女家の跡取り。
無口で表情が読めないがナルトには好意的で、ナルトとしてもアカデミーの中ではシカマルと同じぐらい好感が持てる相手。
ちなみにシノは、ヒナタの親父が娘の近くにいることを許す唯一の異性だったりする。
ヒナタとは幼馴染で自分の妹のように思っているので、引っ込み思案のヒナタのために『ナルトをヒナタの婿に』と密かに画策している。
常識人のようで、結構手段を選ばないエゲツない子だったりする。
【日向 ヒナタ】12歳
木ノ葉最古の名門【血継限界・白眼】、そして【柔拳】を伝える日向家の長女。
ずっと前からナルトに惚れていたのだが、ナルトが素を出してもそれは変わらない。
普段は引っ込み思案だが、ナルトのことになると人が変わった様に暴走する。
アスマ程ではないが若干妄想癖があり、これまた手段を選ばない子だったりする。
いの同様に対象年齢外で今のところ手を出す気は無い。・・・・・・・・・・・・今のところはだが。
【犬塚 キバ】12歳
忍犬使い犬塚家の跡取り。
いつも相棒の赤丸を連れていて、年相応に騒がしく結構目立ちたがり屋だったりする。
アカデミーの成績はわりと上の方だが、筆記の方はイマイチ。
旧家の子供の中では最も、ナルトを年上として尊敬していないが別に嫌っているわけではないので、ナルトも気にしていない。
ナルトとはイルカに説教されて、よく一緒に廊下に立たされた間柄でわりと仲は良い。
ちなみにキバには少し年の離れた姉がいて、ナルトは『良い乳してるな〜』と常々思っている。
【うちは サスケ】12歳
木ノ葉の名門で【血継限界・写輪眼】を伝えるうちは一族の末裔。
容姿端麗で成績優秀だが、性格の方が最悪。
一匹狼を気取ってる割に、相手にされないとすぐに拗ねるので扱いが難しい。
バカのフリをしていたナルトを見下しバカにしていたのだが、ナルトが素を出したので全く相手にされずかなりご機嫌斜め。
だがナルトはこれからも無視を決め込む姿勢でいる。
【春野 サクラ】12歳
ごくごく普通のくの一見習いで、親を真似てナルトを嫌っている。
ペーパーテストは優秀だが、実戦に出せばあまり役に立たない。
サスケの追っかけに全精力を注いでいる節があり、一体何の為に忍を目指しているのか今一分からない。
ナルトが素を出してヒステリー呼ばわりされ、これまたご機嫌斜め。
ナルトはサクラが何か言ってきたら、怒りを煽ってやろうと思っている。
【日向 ヒアシ】41歳
ヒナタの親父にして、日向家の現当主。
周りの者からは厳格な当主として尊敬されているが、その実ただの親バカで頭のネジがとれた部分がある。
しかし、やっぱり実力はかなりのもので、木ノ葉でも有数の強者である。
ただ、ヒナタが三歳の時に何気なく言った『将来お父様のお嫁さんになる』との言葉を真に受け、現在に至るまで10年近くその言葉を信じて疑わない、ちょっと頭のイタイ人だったりする。
以来娘に近付く男はシノを除いては、たとえ火影であっても許さない。
四代目火影とは同期でナルトには結構優しかったりするのだが、娘に近付けば殺すつもりでいる。
【うちは イタチ】17歳
不肖の弟サスケの兄として、多分苦労したであろう人。
うちは一族始まって以来の天才で子供の頃から将来を期待されていたが、うちは一族を皆殺しにして里を抜けたSランクの罪人。
ナルトが九妖とは知らないのだが、【ナルト】【九妖】のどちらとも面識がある。
2人が知り合ったのはイタチが10歳、ナルトが7歳の頃。
里人に暴行を受けている時に偶然通りかかったイタチが、ナルトを助けたことで知り合いそれ以来2人は仲良くなった。
その後イタチが11歳で暗部に入って、天才のイタチの教育係として相応しい者がいなかった為、九妖(この当時、表向きの設定上19歳)が教育係として指名され知り合う。
それまで自分以上の実力者など居なかったこともあり、イタチは九妖を心から尊敬し追いつこうと現在も修練に励んでいる。
ちなみに、イタチの里抜けの理由はナルトにも分かっていない。
シカマル同様この作中で数少ない常識人の1人。