NARUTO
〜九妖忍法帳〜 05話目




―里のとある居酒屋―

俺達は半壊したホテル(修理代はエロ爺に払わせた)を後にして、忘年会の二次会を開いている。

二次会のメンバーは俺と紅さん【はたけ カカシ】【猿飛 アスマ】【マイト・ガイ】【森乃 イビキ】【月光 ハヤテ】の七人。

流石に紅さんと2人きりだとマズイので、ホテルで倒れてた連中を何人か無理やり引きずってきた。

現在ここに俺達以外の客はいない。

・・・俺達が店に入った瞬間そそくさと帰りやがった。

多分俺と紅さん以外の連中がボロボロの服なんか着てるからだ。・・・まったく、身だしなみには気を配ってもらいたい!

俺を見てみろ! 新品の忍装束、仮面なんか艶々してるのに!

・・・・・・出て行く客の半数が俺の方を見ていたのは多分何かの間違いだろう。

店に入って1時間が経過、コイツ等にも学習能力というものが存在したらしく、酒は程々にして主に飯を食っている。

カカシは秋刀魚の塩焼き・麦飯(中)、ガイはカレーうどん・カル酎・・・どこからともなく取り出したプロテインを混ぜてはいたが。

アスマは生ビール(大)・枝豆・ソーセージ単品、イビキは馬刺し・焼肉定食。

あとチューハイと結構偏った物を。

ハヤテはドクダミ茶単品と普通の居酒屋では絶対に出てくるはずの無い物を当たり前のように注文していた。

紅さんは焼酎をロックで、本人の話によると甘いものが苦手らしい。

皆それぞれ自分の好物を注文していく。

だが、俺はさっきから何も食べていない。

いや、食いたいんだが面が邪魔で食えない。

知恵を振り絞って試行錯誤してるんだが、どうも上手くいかんのだ、これが。

唯一の救いは、飲み物がストローを使えば何とか飲めることだな。

そして、何故か先程から紅さんは俺の腕に自分の腕を絡ませて、何やら嬉しそうにしている。

頬が若干赤いのは酒のせいだと思う。

ただ紅さん、胸を押し付けるのは勘弁して下さい。・・・いや、気持ち良いんですが・・・理性が・・・。

んで、それを見てアスマが何やら恨めしげに殺気を飛ばしてきたら、紅さんに睨まれていじけている。

初めはどういう訳かみんな俺に脅えていたが、徐々に慣れてきたらしく話しかけて来るようになった。









「あのさ九妖、なんで食べないの?」

「調子が悪いのか?」

「ゴホッ・・・そうですよ、小食は体に良くないですよ」

「ケッ!気取りやがって!」

「・・・アスマ、何か言った?(ギロッ!)」

「・・・お前等・・・つっこむ所が違うだろ・・・」

「いえ、食べたいのは山々なんですが・・・」

俺の素顔が気になるらしく、遠まわしに面を外せと言っているカカシ。

素で俺を気遣っているガイ。

ハヤテはどっかずれてる。

アスマは・・・ヤケッパチって感じだな。

紅さんは何か怒ってる。

イビキは比較的まともだな。・・・酒が入ってるとアレだが。

この連中の事はある程度知ってるが、こうやってまともに話すのは初めてだ。

普段は会っても会釈するぐらいだし、任務は基本的には家の連中と組むしな。

「ねぇねぇ、せっかく皆で飲んでるんだし、仮面外そうよ」

カカシ、あんたもあんまり人のことは言えんと思うが・・・。

「うむ!さっきからオレも気になっていた所だ!」

「ゴホッ・・・私も気になりますね」

他の奴らも興味津々と言った御様子。

「ペッ! おれ達には顔も見せられないってグハッ!!」

床に唾を吐くアスマに紅さんの鉄拳による制裁が行われた。

「九妖♪ 気にしなくていいのよ?」

紅さんが拳の血を拭いながらニッコリと微笑む・・・・・・ちなみに敬語は止めてもらった。

「ああ・・・無理にとは言わん」

―う〜ん、こうして話してみると中々面白い連中だな。

まぁ、変化してるし大丈夫だろ。

顔を見せたところで変化してるから、ナルト=九妖と結びつけることはない筈だ。・・・・・・性格もかけ離れてるし。

「・・・・・・わかりました、でも他言は無用ですよ?」

(((((ゴクリ!)))))

全員がエライ勢いで首を振る中、俺は顔に手を伸ばしゆっくりと面を外した。

「ふぅ」

これでやっとメシにありつけると思うと、開放感いっぱいでスガスガしい気分になった。

しかし、俺の顔を見てみんな固まっている。

―・・・・・・何故? こんな完璧な変化なのに・・・。

「せ、先生!?」

なにやらカカシが、幽霊でも見たって顔をしてる。

―ん? 先生って・・・親父の事か?

ああ、そういえばコイツの昔の担当上忍って親父だったな。

「「「よ、よ、四代目!?」」」

ガイ・アスマ・ハヤテ・イビキもそんなに驚かんでもいいだろ。

―俺と親父ってそんなに似てんのかな?・・・自分じゃあんまり判らないんだよなぁ。

「・・・・・・素敵♪」



・・・・・・あれ?耳が可笑しくなったかな・・・幻聴が聞こえた気がする。



「すいませーん!
 おにぎり3人前と焼き鳥4人前、チーじゃが3人前ー!
 あとウーロン茶のおかわり下さーい!」

「かしこまりましたー! 少々お待ちくださーい!」

固まっている面々は無視して、とりあえず食い物を注文した。

暫くして届いた料理を食ってると固まってた連中が再起動して、向かいのテーブルから身を乗り出して質問してきた。

「ちょ、ちょっと九妖!その顔は!?」

「え?何か付いてます?」

カカシの質問は流した。

そんなに驚かんでも、世の中にソックリな人間なんていくらでも居るだろ。

「違う!四代目に瓜二つじゃねぇか!!」

だがソッコーでアスマに突っ込まれた。

「・・・こいつは驚いたな」

「ゴホッ・・・四代目となにか関係が?」

・・・・・・まずいな何か怪しまれてる、顔見せたの失敗だったかな?

「四代目とは遠縁の親戚ですよ」

うんコレなら大丈夫だろ。

「四代目に親戚なんて居たのか・・・カカシ、知ってたか?」

「・・・いや、聞いた事ないな・・・でも先生も謎の多い人だったし・・・・・・」

ガイに話を振られ、生前の親父になにか思うところがあるのか、しきりに首を捻ってるカカシ。

「そんな事別にどうでもいいじゃないですか・・・折角みんなで一緒に飲んでるんだし、その話題はお仕舞いにしましょう」

俺の一言でとりあえず、納得はしていないもののその事には触れなくなった。

が、質問はまだまだ続く。

「私より年下って言ってたけど幾つなの?」

「25ですよ」

もちろん嘘だがそれを聞くと紅さんはガッツポーズをしていたが・・・何故だ?

「噂じゃ相当強いって聞いたけど、ホントのとこはどうなの?」

「さぁよく判りませんが、あんまり負けた事は無いですね」

「ゴホッ・・・いや、判りませんって・・・さっき私達まとめて殺されかけたんですか・・・ゴホッ」

「いやー凄まじかったなアレは!! 今度ぜひとも手合わせしたいものだ!!」

「おまえ・・・会場で死に掛けたの覚えてないのか」

「はは、まぐれですよ、まぐれ・・・それに皆さん酔ってましたし」

「何なら俺が今すぐ黒星つけヘブっ!!」

先程からやたらと好戦的なアスマに再び鉄拳が飛んだ。

「好みのタイプは? 年上? それとも年下?」

「え、えっと・・・年上かな?」

またもやガッツポーズの紅さん、何かこの人だけ質問がおかしいな・・・。

「じゃあ九妖、なぜお前のベストには火の紋様が入ってないんだ?」

「秘密です」

「いや、そうじゃな「秘密ですから!」

この件に関しては、本音を言うとマズイので無理やりごまかした。

通常、中忍以上が着用を許されたベストの背中と、その下に着る忍装束の両肩には木ノ葉のトレードマークが付いている。

が、俺のには付いていないのでイビキはそれが気になったようだ。

その理由は簡単、木ノ葉が嫌いだからだ。

俺は木ノ葉のマークが入っている物は何も持っていない、無論額宛していないし、しようとも思わない。

それを身に着けるという事は、里への服従を意味する。

こんな里に服従する気はないし、里のために働こうとも思わない。

まぁそんなところだ。質問をはぐらかし食事に専念し始めたら、イビキもその件については諦めたらしく追求しなくなった。









二次会開始から2時間が経過、コイツ等にも学習能力が存在すると一瞬でも思った俺がバカだった。

またもや酔っ払って日頃の不平不満をぶちまけている。

その上、2人ほど別の世界に旅立っている。

ガイはスポーツマンシップに則り、日頃の練習の成果を存分すぎるぐらい発揮し、正々堂々?と真っ向から店員に筋肉を見せ付けてる。

しかもホテルでは辛うじてビキニを着用していたが、今度は一糸纏わぬ姿で『どっからでも来い』と言わんばかりの仁王立ち。

そしてアスマは酒の勢いで紅さんに抱きつこうとしたので拳で黙らせたら、いじけて自棄酒かっ喰らってる。

その後、何故か俺が頬を染めた紅さんに抱きつかれた。

残りの奴等は、休みが少ないだの上司の人使いが荒いだの、忍と言えども所詮は宮仕え。

仕事でストレスが溜まっているらしい。

この場で素面なのは下戸の俺と酒豪の紅さん、それにしても紅さんはさっきから飲んでる量が尋常じゃない。

普通の居酒屋にウォッカなどない筈だが、それが紅さんの足元に転がってる。

しかも酒瓶は軽く10を超えている。

酒に酔ってる連中はいいが、それに付き合わされる素面の人間は堪ったもんじゃない。

「・・・紅さんも大変ですね」

「・・・・・・今に始まった事じゃないわ」

なんか、紅さんはうんざりした表情していた。

毎度毎度コイツ等の愚痴や奇行に付き合わされてるんだろうか?









二次会から3時間が経過、現在の時刻は午前4時。

俺がアルコールのオーダーをストップさせたため、酔っ払っていた連中も徐々に別世界から戻ってきた。

店員が『お前等早く帰れ、そして二度と来るな』と言わんばかりの顔でこっちを見ている。

逆に素面ではやってられなかったのか、途中で飲むペースを上げた紅さんも20本目を超えた辺りから酔い始めた。

そんで、さっきからずっと俺は膝の上に乗られ抱きつかれ、頬擦りされている。

流石に俺も14歳とはいえ健全な男子、どこぞの果汁100%の高校生や何とか壮に住む浪人の様な不能な奴らと同一視されては困る。

目の前に喰ってくれと言わんばかりにブラ下がったご馳走を、指を咥えて見ている頭の悪いラブコメタイプの主人公ではなく。

どちらかと言えば、喰える者は喰える時に喰えるだけ喰う、添え膳食わぬは男の恥のエロゲータイプの主人公だと自分ではそう思う。

・・・・・・紅さんの色香に緊張するあまり妙な事を口走ってしまった。

・・・・・・これは何となく忘れた方がいい。

まぁそれはともかく。

そろそろ我慢にも限界があるとですよ!

誰もおらんならこの場で押し倒しとるとですよ!!

故にまだ辛うじて理性を保っているうちに何とかせねば!

「あの〜紅さん・・・すいませんけど離れてもらえないでしょうか?」

「んん〜〜い〜や〜〜」

出来るだけ丁寧に頼んだのに、俺の頼みは一秒も掛からずに即行で却下された。

しかも、さらに状況が悪化。紅さん離すどころか力いっぱい抱きついてきましたよ。

その様子を見て、アスマが親指の爪を噛みながら血の涙を流して睨んでいたりする。

他の連中は紅さんの行動があまりにも普段とかけ離れているせいか、思考が完全に停止している。

「あのー、お客様そろそろ閉店時間ですので・・・その・・・」

なんと言うナイスなタイミング。

これぞまさしく天の助け!

「わかりました! すぐに帰ります! むしろ帰らせて下さい!!」

驚く周囲を無視してすぐさま立ち上がり、他の連中にも『さっさと立てや!』と殺気を送った。

「あの、紅さん・・・勘定払ってくるんで少しの間、離れてもらえますか?」

今度は納得してくれたのか、渋々と言った感じで離れもらった。

・・・しかし、俺の何がお気に召したのやら・・・・・・判らん。









勘定を済ませて戻ってくると再び問題が発生した。

紅さんが、飲みすぎでまったく歩けなかったのだ。・・・・・・あんだけ飲んでりゃなぁ・・・。

紅さんの酔いが醒めるのを待つのが一番良いのだが、すでに店側は閉める気満々である。

従業員達の手際の良さが『1秒たりとも長居はするな』と語っている。・・・・・・それこそ、俺等が出て行った後で塩を撒きそうなほど。

困った、他の連中なら置いて帰るし1人で帰らせて襲われようが気にも留めんが、紅さん相手にそんな真似はできん。

今は冬、辺りはまだ暗く日の出までは2時間近くあるだろう。

千鳥足の、しかも紅さん程の美人をこんな中1人で帰せば何があるか分からない。

ここで取るべき方法は一つ。

「あの、誰か紅さんと帰る方向が一緒の人っていますか?」


「はい!! はいはい!! オレの家は紅の家のすぐ隣だ!!!」


「アスマ〜ウソついちゃダメでしょ? オマエんちは紅んちとは逆方向でしょ」

「・・・何を考えてるんだお前は・・・」

「ゴホッ・・・下心丸見えなんですね」

「アスマ・・・その熱意は認めるが使う方向を間違えているぞ」

「・・・・・・変態」

アスマはカカシの車輪眼でも見切れない程のスピードで手を上げ、咥えたタバコのフィルターを噛み千切り凄まじい剣幕で俺に詰め寄った。

しかし、カカシにあっさり嘘を見破られ、イビキに呆れられ、ハヤテに心を見透かされ、ガイに諭され、紅さんに軽蔑のお言葉を頂戴した。

俺としてもみんなと同意見なのでフォローする気などサラサラない。

ショックを受けて酒に逃げようとしたアスマだが、すでに閉店準備完了の店側は聞こえないフリで一向に相手にしない。

いじけてるアスマは無視して話を進めよう。

皆の話を聞いた限りでは、紅さんだけが帰る方向が違うようだ。いつもは酔っ払う事などないので一人で帰っているらしい。

「じゃあ、誰かが家まで送るしかないようですね」


「オレだ! 全てオレに任せておけ!! 何から何まで面倒見てやる!!」


即座に立ち直った精神力とこれほど一点の曇りもない自信もある意味素晴らしいが、何を持って任せろと言っているのかが分からない。

それにこの男は一体何の面倒を見るつもりで居るのか、一度頭をカチ割って中を覗いて見たいものだ。

「ははは。 まっ! それはナイって! 
 オマエなんかに任せたら紅に何があるか分かんないでしょ?」

「カカシの言う通りだ、オマエにだけは任せられん」

「ゴホッ・・・紅さんの貞操が危ないんですね」

「アスマ・・・独りよがりの求愛は青春とは言えんぞ」

「・・・・・・アンタだけは死んでもお断りよ」

ここでまた、目を血走らせたアスマが黒いチャクラを発しながら立候補したが満場一致で即座に一蹴された。

日頃の行いが相当悪いのか、はたまた元から信用がないのか、何気に人格まで否定されている気がするがそれはこの際気にしない。

むしろ紅さん本人からこれ程あからさまに拒絶されているにも拘らず、なぜここまで自信たっぷりに言い切れるのか不思議でならない。

とりあえずこの男に任せるのはマズイ、それだけは間違いないと思う。

家に帰るまではそれはもう一部の隙も無いぐらいガードしてくれるだろうが、家に着いた途端何をするか分かったものではない。









そうこうしている内に、『お前等まだ帰んねぇのかよ』と言いたげな店側の視線が段々露骨に態度に表れてきたので仕方なく紅さんをおぶって店の外に出た。

・・・・・・ただ外に出た途端に勢い良く扉を閉められカギまで掛けられたのにはチョットだけムカついた。

さて、これから如何するべきか・・・・・・やはり誰かが家まで送っていくしかないだろう。

@カカシ・・・コイツは普段から白昼堂々碌でもない小説を読むような奴なので人として信用できない。

Aガイ・・・コイツと一緒に居るところを見られ変な噂が立つと困る、紅さんの名誉のためにも止めといた方が無難。

Bイビキ・・・人間的には問題ないがビジュアル的に問題あり、強姦魔と勘違いされて通報されそう。

Cハヤテ・・・同じく人間性は問題ないがやはりビジュアル的に問題あり、人攫いと勘違いされそう。

Dアスマ・・・論外。 人格云々の前に理屈抜きでこの男は信用できない。 理屈が在ったら尚更信用できない。

「・・・あのさ、そう言う事は本人達の前で言っちゃダメでしょ」

「うむ、それは困るな!ましてや紅は嫁入り前だ」

「誰が強姦魔だ!!」

「ゴホッ・・・人攫いですか・・・」

「論外ってなんだ!? そこまで言われる筋合いはねぇ!!!」

「あら声に出てましたか?」

全員が同時に、それも完璧なタイミングで頷いてくれた。

「ん〜〜私は九妖に送ってほしい♪」

「・・・え(汗)」

紅さん何を仰ってらっしゃいますか?

そんな事したらアンコに殺されますって・・・・・・もちろん俺がだけど。

「だめだ!! オレは認めねぇ!!
 そんな奴に任せて紅になにかあったらどうするんだ!!!」

「紅本人が望んでいるんだ、別に構わんだろう」

「双方合意の上での青春なら何の問題もない!」

「むしろ、何故アナタの許可が必要なのかが疑問ですね・・・ゴホッ」

「まっ! オマエなんかよりずっと安心だって」

「・・・・・・ウザイ」

三度アスマが叫んだが全員が完全に無視。

イビキとガイの意見は兎も角ハヤテと紅さんの意見はもっともである。

・・・・・・・・・カカシの意見には正直自信がない。

アスマよりは安全かも知れんが、やっぱり危ない事には変わらない。

だが何故か俺が紅さんを送る事に決定したらしく、皆さん素早く帰り支度を整えてさっさと行ってしまった。

俺は紅さんを背中に乗せたまま、その場に取り残された。

・・・・・・ちなみに、最後まで自分が送ると主張していたアスマだがカカシとイビキに問答無用で引きずられて行った。

「はぁ・・・んじゃ帰りますか」

「ええ♪」

何が嬉しいのか、俺の首に腕を回し身を寄せてくる紅さん。

背中に当たる胸の感触と首筋に掛かる吐息は堪らなく気持ち良いのだが、紅さんの安全のために真剣に止めてもらいたい。

再び面を着けた俺は紅さんを担ぎなおし、沸々と湧き出てくる欲望と戦いながら歩き出した。

・・・・・・・・・・・・何事も起こらないことを願って。












―紅の自宅(マンション)―

「・・・・・・・・・・・・・・・」

俺は目を覚ましてすぐに自殺したくなった。

いや恐らく自殺なんぞせんでも後で間違いなくアンコに殺される。

それも生まれてきた事を後悔するぐらい痛めつけられて・・・・・・・・・。

帰ってやき入れするつもりだった家の連中も、嬉々としてアンコに手を貸すだろう。

俺は今、紅さんのベッドで寝ている。

それだけでも・・・いや、それ以前に紅さんの家に来たってだけでも極刑もんなのに・・・・・・

俺はハダカもちろん紅さんもハダカ、しかも体のいたる所に赤い印がついている。

・・・・・・・・・さらに俺の腕の中でなんかヤバイ寝言いってるし。

この場に唯一の救いがあるとすれば、それは俺の変化が解けていない事だけ。

・・・・・・・・・つまり、その〜・・・・・・・・・。

ヤッちまったわけだ。

現在の状況は最悪!! いや、むしろこうなる過程は最高だったんだが・・・・・・。

まてまてまて!!! 早まるな!! 何言ってるんだ落ち着け俺!

そして考えろ! どうしてこうなったのか!!

・・・そうだ!! 深呼吸だ! まずはそれからだ!









―5分後―

・・・ふぅ・・・とりあえずゆっくり確認していこう。

俺は昨日・・・というか今日の明け方だが、紅さんをここまで背負って帰ってきた。

家の玄関の前で降ろそうとしたが、紅さんが自分では歩けないと言ったので家に上がらせてもらった。

失礼な話だが俺の予想と反して、1人暮らしのわりに綺麗に整理されていて落ち着いた雰囲気の部屋だった。

・・・・・・どこぞの団子好きな女にも見習わせたいものだと思ったりもした。

部屋の印象はさておき、さすがに寝室に運ぶのはマズイのでリビングのソファーに座らせてそのまま帰ろうとした。

が、紅さんに服の裾を掴まれて引き止められ、コートを返すから少し待っていて欲しいと言われた。

エロ爺に服を破られた時にコートを貸したのだが、すっかり忘れていた。

俺は今度で良いと言ったが、紅さんがどうしてもと言うので返してもらう事にしたらその場で脱ごうとした。

コートの下は破られた服なので、それを見たら間違いなく襲ってしまう。

俺も自分の命は惜しいので慌てて止めた。・・・・・・・・・その時紅さんが舌打ちしたような気がしたが。

そしてやっぱり今度で良いと断ったら、俺の腕にしがみついて

「・・・・・・お願いだから帰らないで・・・・・・」

と潤んだ瞳を向けられた。

それを見て元々少ない理性という名の配線が1本切れた気がした。

後4本位しか残ってなかったと思う。

しかし何とか襲いたいのを堪え理由を聞いたら、毎日アスマにストーキングされているので安心して眠る事が出来ないそうだ。

少し前までアスマの行動を見ていたので納得して、『夜が明けるまでは帰らない・今度アスマにヤキを入れてやる』と約束した。

その後、泣き止んだ紅さんがお茶を出してくれたが、先程までの酔いをまるで感じさせない流れるような動作に思わず首を傾げた。

何か釈然としないものが在ったが、朝までは居ると約束したので正座して出された茶を飲んでいたら

「・・・・・・着替えてくるから少し待ってて・・・・・・」

と、何故か上目遣いで恥ずかしそうに囁かれて二本目の配線が音を立てて切れた。

紅さんが着替え行って暫くの間煩悩と戦い1人で床を転げまわっていたら、部屋の隅にダンボールの箱を見つけた。

中を見て見ると、紅さんの物であろうヌイグルミやら少女漫画やらが結構入っていた。

普段のイメージとあまりにもかけ離れた意外な物が出てきて、一瞬固まってしまった。

とりあえず暇だったので箱の中にあった、少女漫画をパラパラめくって見た。

内容は古い上にベタベタナなもので、世間知らずで頭の足らん金髪縦ロールの軽い女がヒロイン。

で、いかにも悪人ですと言わんばかりの格好で計画性の欠片も感じられない悪役達。

縦ロールは悪役の『お前らそんな人気の多い場所で何してんだよ?』って感じの取引現場を見てしまい、捕まってしまう。

気絶させるなり何なりしてその場から移動すれば良いものを、不思議な事に縦ロールの服を破りだした。

そこへ実際に居たらイタイ人扱いされるような、口に薔薇を咥えて無駄に目のキラキラした長髪キザ野郎が颯爽と登場する。

そんで、明らかに無駄だらけの『お前人をバカにするのも大概にしろよ?』と言いたくなる攻撃法で悪役を倒していく。

仕上げに縦ロールとキザ野郎が抱き合い、背後に薔薇が咲くという見ていて思わず頭が痛くなるラストだったと記憶している。

出来る事なら一秒でも早く記憶から消去したいが、不本意だがあまりの下らなさに脳に焼き付いてしまった。

・・・・・・・・・作者名に【蝦蟇乃・自来也】とか書かれていたのは目の錯覚だと思いたい。

あんなのでも一応師匠だ、下品な小説の他にあんな下らない漫画なんぞ描いてた日にはそれこそ自殺ものだ。

―・・・・・・・・・ページの所々に水滴を零したような後があったのは気のせいだろうか?
 あんな内容で感動できる人間が居るとしたら真剣に通院をお勧めするが。
 ・・・・・・・・・まさか紅さんが?いくらなんでもそれは無いよな?

本気で心配になって1人で唸っていたら後ろから素っ頓狂な声が聞こえた。

どうやらそのまさかだったようで、普段着に着替えた紅さんが顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。

「く、九妖!・・・み、見たの?」

真っ赤な顔のままモジモジしながら聞いてきた。

その姿があんまり可愛らしくて、問答無用で押し倒したかったがギリギリで踏みとどまった。

代償として三本目の配線が勢い良く切れてしまった。

・・・・・・残り2本。

「・・・ねぇ・・・九妖・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なかなか独特な内容でしたね」

いくらなんでもあんな物を評価するなど出来るはずもなく、流石にまずいと思ったがそう答えるのが精一杯だった。

しかし、やっぱりまずかったのか、紅さんは酔いを醒ますと言い残して逃げるように風呂場へ駆け込んで行った。

取り残された俺はすっかり冷めてしまった茶を入れなおし、紅さんがショックから立ち直るのを待つことにした。

だが、結構な時間待っていたにも拘わらず、紅さんは一向に戻ってこなかった。

心配になった俺は、風呂場に様子を見に行った。

当たり前だが中に入るわけには行かないので、ドアをノックしようとしたらその前にドアが開いた。

・・・・・・・・・残っていた2本の配線がまとめて切れた。

中から出てきたのはバスタオルを巻いただけの紅さんだった。

「あっ!!」

ええ、そりゃあもう視界に入った瞬間にむしゃぶりつきましたよ。

速攻で押し倒してバスタオルなんざ剥ぎ取っちまいました。

その後は所々記憶が飛んで、正確には覚えてねぇんだが。












・・・・・・・・・・・・うん、間違いなく死んだな俺。

ここまで来たら、素直に土下座で謝って殺されるのが漢ってモンでしょう。

今日は夕方から火影邸で新年会があったはずだ。

昨日あんだけ痛めつけはしたが何人かは無事だったし、ジィさんもあれで頑丈だし延期にはならんだろ。

里の恒例行事を休むわけもないし、タダ飯のためにも家の連中が無理やり続行するだろうし。

その時が俺の最後だが、せめて怒り狂ったアンコから紅さんは守らねばならんな。

責任を果たさん奴など漢ではない!!

クズだ!

カカシだ!!

アスマ以下だ!!!

うむ覚悟は決まった、死刑時刻は夕方五時だ。

・・・・・・でも一応、遺書だけは書いておこう。







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