NARUTO
〜九妖忍法帳〜 03話目
―火の森―
高速で木の上を駆け、ナルトを探すイルカの姿があった。
「(見つけた!!) ナルト!! 早く巻物をこっちへ渡すんだ!! ミズキが巻物を狙ってる!!」
視界に巻物を背負ったナルトの姿を捉え呼びかけるイルカだが、ナルトは一向に止まる気配を見せない。
―え!?
それどころか体の向きをかえ、木の枝を踏み台に体当たりを仕掛けてきた。
不意を付いたナルトの攻撃はイルカの腹を捕らえる。
イルカは落下して地面に叩きつけられ、そのまま土の上を滑っていく。
一方のナルトは、着地と同時に近くの木に背中を預け、その場に力無く座り込んだ。
呼吸が乱れ、表情も苦しそうだ。
「・・・そ・・・・・・そんな・・・・・・・・・どうしてだ・・・ナルト・・・どうしてイルカじゃないと分かった・・・!!」
言葉が終わると同時に、音を立ててイルカの姿が変わる。
ナルトを追っていたイルカはミズキの変化だった。
ドベのナルトが自分の変化を見破ったのが気に入らないのか、忌々しげにナルトを睨む。
「へへへへへ・・・・・・・・・イルカはオレだ・・・」
だがミズキと同様に、ナルトもまたイルカの変化した偽者だった。
イルカはニヒルな笑みを浮かべ、ミズキを見据える。
「・・・・・・・・・なるほど・・・」
立ち上がりイルカを見下ろすミズキ。
表情は笑っている様に見えるが、眼は笑っていない。
―あのバカ何してやがる!? さっさと来い!
俺はミズキをひきつける為にイルカ先生のもとを離れたが、ミズキはなかなか追って来ない。
アイツの性格からして、傷ついたイルカ先生よりも巻物を優先するはずなのに。
―やっと動き出したか・・・。
暫くして、やっとミズキが俺を追い始めた。
だが、ここにきて問題が出てきた。
イルカ先生が重症を負っているにもかかわらず、ミズキの後を追い始めたのだ。
よりにもよって俺に化け、自分を囮にして。
そしてミズキは、イルカ先生の化けた俺を追いかけ・・・・・・。
「親の敵に化けてまでアイツをかばってなんになる」
「お前みたいなバカ野郎に巻物は渡さない」
今のありさまだ。
出遅れた俺は、木の陰に隠れながら2人の様子を窺っている。
・・・自分の浅はかさを心の底から悔やんだ。
だが、出来ることならイルカ先生の前で真実をさらすのは避けたい。
・・・・・・この後に及んで、まだイルカ先生の前で演技を続ける自分がイヤになる。
だけど・・・・・・怖い・・・。
里の連中にどれだけ嫌ようがなんとも思わないが、この人に嫌われるかと思うと・・・・・・。
しかし、いよいよ覚悟を決めなければならなくなった。
森に入ったミズキの仲間が徐々にこっちに近づいている。
そんな中、イルカ先生とミズキの会話が続く。
「さっきも言ったが、アイツは心変わりする様な奴じゃない」
「・・・・・・・・・」
ミズキの言葉にイルカ先生は俯くが、言葉は更に続く。
「あの巻物の術を使えばなんだって思いのままだ。
あのバケ狐がそれを利用しない訳がない。 アイツはお前が思っているような・・・「ああ」
台詞を遮って飛び出す肯定の言葉。
―・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・他の何よりも、一番辛かった。
裏切りは慣れてた筈なのに・・・。
・・・でも納得した。
今まで、ずっと騙してたのだから、嫌われたって仕方がないと思った。
「バケ狐ならな」
イルカ先生口から出た言葉に思わずハッとした。
「けどナルトは違う。 あいつは・・・あいつ、はこのオレが認めた優秀な生徒だ」
―ちがう、そうじゃない・・・・・・
「・・・努力家で一途で・・・」
―それは、うそなんだ・・・・・・
「そのくせ不器用で誰からも認めてもらえなくて・・・・・・」
―おれは、いるかせんせーをだましてた・・・・・・
後悔した。
なぜこの人を信じなかったのか。
なぜ真実を話さなかったのか。
「アイツはもう人の心の苦しみを知ってる」
イルカ先生が見ているのは偽りの俺。
・・・でもたとえ偽りの俺だったとしても、この人は俺を見てくれた。
俺を認めてくれた・・・・・・。
思わず胸が熱くなった。
「今は、もうバケ狐じゃない」
体に力があふれた。
「あいつは木ノ葉隠れの里の・・・」
イルカ先生に嫌われるのは嫌だ・・・・・・・・・。
でもイルカ先生が死ぬのだけは絶対に嫌だ!
「【うずまき ナルト】だ」
・・・・・・覚悟が決まった。
たとえ、どんなに嫌われても・・・たとえ、何があろうとも・・・。
―俺の総てを賭けてイルカ先生を守る!!
オレは、もうだめだと思った。
出血がひどい・・・・・・目の前がかすみ体が思うように動かない。
この傷では、ミズキには勝てないだろう。
そんな中、オレはナルトの事を考えていた・・・・・・
ナルトはうまく逃げただろうか・・・・・・
あいつのことだ、きっと大丈夫だろう。
すぐそこに死がせまっている。
後悔が無いと言えば嘘になる。
オレ、あいつに何かしてやれたんだろうか?
口を開けば説教ばかり、いたずらをしたナルトを怒鳴り散らした。
今になって後悔した・・・・・・
なぜ、やさしくしてやれなかったのか・・・・・・
あいつの苦しみは、オレなんかとは比べ物にならなかったのに。
オレも子供の頃に親はいなかったけど、両親の顔は覚えている。
両親のぬくもりは確かに心に残ってる。
あいつには、それすらなかったのに。
親の愛情など知らず・・・・・・それどころか親の顔も知らない。
なにひとつ持たず、なにひとつ与えられない。
そんなあいつが大人から与えられるのは、憎しみ、蔑み、謂れの無い差別、暴力・・・そして殺意。
アカデミーでは留年のせいで、一番年上だった。
成績は年下の子に負けて・・・そのせいでバカにされて・・・・・・。
それでも、あいつは負けなかった。
火影になると息巻いて、放課後まで残って術の練習して・・・。
・・・でも、それは本心だったんだろうか?
あいつを見ていてそんな事を思ったことがある。
オレと2人のときに、不意に悲しそうな顔をすることがあった。
まるでオレにあやまる様に・・・・・・
そんな事を考えた・・・。
「ケっ!めでてー野郎だな。 イルカ・・・お前を後にするっつたがやめだ・・・」
ミズキは倒れたオレを見下ろしながら、背中の手裏剣を手にする。
「さっさと死ね!!」
迫り来る手裏剣がゆっくりと感じた。
不思議と怖くはなかった。
・・・そして悟った・・・・・・・・・。
―・・・・・・これまでか・・・ごめんな・・・ナルト・・・。
オレはゆっくりと眼を閉じた・・・。
しかし、突然の轟音に眼を見開いた。
オレに突き刺さる筈だった手裏剣が、地面に叩きつけられ砕け散っていた。
・・・そう、【うずまき・ナルト】の手によって。
夢でも見ているのかと思った。
ナルトがオレを庇うようにミズキの前に立ち塞がっている。
そして、オレの顔を見てかすかに微笑んだ。
ひどく悲しそうな笑みだった。
オレが今まで見たことも無い表情だった。
だがオレの混乱している中、ナルトの姿が消えミズキが吹き飛んだ。
「ナ・・・ナルト、なのか・・・?」
オレは間の抜けた声を出すしか出来なかった・・・・・・。
眼を閉じて死を覚悟したイルカに、ミズキの放った手裏剣が迫る。
しかし、飛来する高速を超えたスピードで、ナルトがイルカの前に滑り込む。
ナルトは手裏剣に向かって拳を振り上げると、真下に向かって力任せに叩きつけた。
鉄の塊をまるでガラスの様に容易く粉砕し、その衝撃が地面を大きく揺さぶる。
拳が振り下ろされた場所には、一メートル程のクレーターが出来ていた。
あまりの轟音にイルカは眼を見開き、そこに立つナルトを見上げ呆然となる。
ナルトはイルカに目を向け、少し悲しそうに微笑んだ。
そしてゆっくり振り向き、イルカ同様に呆然とするミズキを視界に捕らえる。
ナルトの顔から完全に表情が消え、蒼い瞳から色が抜け落ちた。
その瞳は何の感情も宿さず、闘気も纏わず、殺気すら感じさせない。
「シっ!!」
未だ呆けているミズキだが、ナルトは既に追撃に入っていた。
桁違いの速度で間合いに踏み込み、鳩尾に掌打を叩き込む。
「ガハッ!!!!」
不意打ちでやってきた衝撃に体が宙を舞い、そのまま受身も取れずに地面を転がる。
ミズキは何が起きたのか分からなかった。
自分が攻撃されたと理解したのは飛ばされた後だった。
傍から見ていたイルカにさえ、ナルトの攻撃はおろかその予備動作すら見えなかったのだ。
やられた本人はさぞかし驚いている事だろう。
「ナ・・・ナルト、なのか・・・?」
困惑するイルカに、ナルトが歩み寄っていく。
「・・・・・・イルカ先生・・・・・・ゴメン」
ナルトはまず最初に頭を下げた。
「俺、ずっと先生を騙してた・・・・・・」
「一体なんのためにそんな事を・・・? いや、それよりも・・・さっきの動きは・・・・・・」
語りか掛けてきた声に、イルカは漸く冷静さを取り戻した。
ナルトはアカデミー生どころか自分の動きを遥かに超えていた。
イルカは中忍の中でも優秀な方である。
先の一撃がまぐれで放てるものではないと即座に理解した。
そして、アカデミーでのナルトの実力が偽りであることも・・・・・・。
だが理解できても納得は出来ない。
なぜこれ程の実力を持ちながらも、ドベのフリしていたのか疑問が残る。
「・・・全部、後で話すから、少しだけ待っててほしい・・・・・・あいつ等を始末するまで」
「あいつ等?」
相手はミズキ1人のはず、イルカは疑問に思ってナルトに問い返すが・・・
「貴様等、見てないでサッサと出て来たらどうだ」
もはや完全に素の自分をさらし、物影に潜む傍観者に視線を向ける。
「ほぅ、気付いていたのか小僧。 ガキの割には中々やるじゃないか」
「まぁ、平和ボケした里の忍にしては・・・だがな」
部隊長らしき男が木の葉を巻き上げながら現れ、他の者も次々とその場に姿を現す。
男達は全部で5人、いずれも雲隠れの上忍で、ミズキの取引相手である。
完全に気配を消していたため、イルカは気付けなかった。
「ハッ、こんなガキと死にぞこない相手に何を手間取ってやがる!」
男達の1人が、未だ倒れているミズキに対して不快な表情を作る。
その声にミズキは一瞬脅えたが、すぐに立ち上がり下卑た笑いを浮かべ、ナルトを睨む。
「ははははははは!!
よくもやってくれたなバケ狐ぇー!! だがてめぇもイルカももうおしまいだ!!」
援軍が来たことですでに勝った気になり、笑いながら2人を罵倒する。
―コイツら雲隠れの・・・!!
現れた忍達にイルカは顔を歪め冷や汗を流す。
ナルトがドベではなかったとはいっても、これだけの上忍を相手に戦えるとは思えなかった。
だがイルカの心配を他所に、ナルトは落ち着き払った態度で口を開く。
「ゴチャゴチャうるせぇ、テメェは後で殺してやるから黙ってろ」
先程まで微塵も感じさせなかった殺気を開放し、ミズキに向かって無造作にぶつける。
するとミズキは脅えて腰を抜かしてしまった。
さらに、あまりの殺気に上忍たちも思わず身構えナルトを警戒する。
―このガキ只者じゃない!
男達はナルトの評価を改めた。
上忍ともなれば敵の殺気一つで力量が分かる。
さっきまでのナルトは、殺気どころか闘気すら発していなかった為それが分からなかった。
自分達の気配に気付いたのでそれなりの腕は持っていると思っていたが、まさかこれ程とは予想し得なかった。
と、そんな中。
ナルトは戦いに備えている者達を無視し、明後日の方向に叫んだ。
「アンコお前も見てねぇでサッサと降りて来いよ!」
「あら? やっぱばれてた?」
その言葉に驚き一同が一斉に振り向くと、子供っぽい表情で舌を出したアンコがいた。
森に入った後、ナルト以外の全員に気取られることなく、一部始終を見ていたらしい。
「当たり前だろうが!! っつーか見てる暇があったら助けろよ!!」
「あははははは、まぁいいじゃないの!
・・・・・・とりあえずイルカ先生は私に任せて、アンタはコイツ等を片付けちゃいなさい!」
アンコは何時になく上機嫌だった。
三代目が言った試練をナルトが乗り越えたことと。
自分を認めてくれる人間に本当の自分を出す勇気を持てたことに。
「頼んだぞアンコ」
イルカの護衛にアンコがついたため、ナルトは何の心配も無く戦えるようになった。
アンコなら任せられる。
その信頼は厚かった。
ナルトはアンコに苦笑しながら、初めて構えを取った。
それを見て、男達は一斉にクナイを抜いた。
対して、ナルトは素手のまま。
右足をわずかに引き半身になり、ほんの僅かに腰を落とす。
軽く開き上を向けた右手を胸の前に添え、左手を顔の前に掲げる。
「・・・・・・さて、始めるか」
ナルトの顔から再び表情が消える。
殺気は全く出ていないが、蒼い双眼が『殺す』と告げている。
動けば即座に殺される。
男達は迂闊に前に出ることが出来ない。
だが、ナルトは一瞬にして間合いを詰めて、敵の喉に貫手を放った。
グシャッ!と肉の潰れた音がして、男の1人が血をぶちまけて前のめりに倒れる。
攻撃を受けた男の喉元には穴が開いて、血が吹き出ている。
その光景に一瞬驚くも、すぐに隣に居た男がナルトにクナイで斬りかかった。
ナルトは振るわれた腕を左手で跳ね上げ、ガラ空きになったアバラへ肘を打ち込む。
「ゴフッ!!」
肋骨が砕け、折れた骨が肺に突き刺さる。
口から血をの泡を吹いて2人目の男は絶命した。
「・・・残り2人・・・・・・」
忍術も幻術も忍具すらも使わずに、体術のみで一瞬にして上忍2人の命を奪い、残る敵に向け死刑宣告。
・・・・・・ミズキは最後の楽しみに残しておくためカウント外らしい。
「貴様、一体何者だ!!」
「馬鹿か、お前・・・忍が名乗るとでも思ってるのか?」
仲間が殺されて錯乱した男が大声で叫ぶが、あきれた様に軽く流した。
基本的に忍は敵に名を名乗らないものである。
もし名乗るとしてもそれは死者に対してだ。
「クソッ!」
ナルトに勝てないと悟った男は標的をアンコに変え、八本のクナイを放った。
だが別段止めようともせずに、それを面白そうに眺めているナルト。
クナイが2人に突き刺さったと思った瞬間、その姿が音を立てて丸太に変わる。
変わり身の術、アカデミーで習う基本中の基本。上忍たる自分がそんな術に引っかかり忌々しげに舌打ちをする男。
アンコはイルカを抱え木の上に移動している。
そして間髪いれずに上から数本のクナイを降らせる。
男は慌ててクナイを構え、飛んでくるクナイを捌く。
が、クナイとクナイが触れて火花を散らした瞬間、アンコの放ったクナイが爆ぜた。
爆発音とともに辺りに硝煙が立ちこめる。
投げられたクナイには起爆札が張り付けられていたのだ。
煙が晴れて出てきたのは首の無い焼け焦げた死体だった。
「あはは♪ ざんねんでした♪」
アンコはそれを見てもの凄く爽やかな笑みを浮かべ、自分が殺した男に向かって手を振っている。
イルカはその様子を見て青ざめた顔をしていた。
ナルトが手を出さなかったのは、こうなることを見越しての事だった。
まぁ若干頬を引き攣らせてはいるが。
あっという間に残りが敵の部隊長1人(ミズキは眼中に無い)になり、ミズキは未だに腰を抜かして震えている。
だが、その男が見当たらない。
「・・・逃げたのか?」
アンコと共に様子を見ていたイルカが呟いた。
「いいえ、それは無いはずよ。
何処かに身を隠して攻撃を仕掛けて来るつもりね。
正面から戦ったらまず何も出来ずに殺されるもの。
・・・・・・でもまぁ、どっちにしたってナルトなら大丈夫よ」
―こうまでナルトを信頼しているとは、それにナルトもこの人のことを・・・。
しかも上忍を相手にしての、あの腕前・・・。
「・・・・・・あなたはナルトとはどう言う?」
「恋人♪」
イルカの疑問にアンコが答える、それも何の迷いも無くきっぱりと・・・・・・。
『オレが聞きたかったのはそんなことじゃない!!』と、ツッコミたかったがアンコが怖いのでやめておいた。
間違いではないのだろうが、戦うナルトを他所に頬を染めてのろけるアンコにイルカは何か釈然としないものがあった。
ナルトは木の上のアンコたちの様子に再度頬を引き攣らせながらも、敵の位置は掴んでいた。
敵は自分の足元。
すなわち地中から攻撃を仕掛けるつもりだろう。
だが、ナルトが目視すら許さない速度で十を超える印を結ぶと、ナルトの腕に灼熱の炎が巻きついていく。
【火遁!】
桁外れの高熱に、周りの景色が歪んで見える。
そして腕を引き目標を下段に定めると、地面に腕を突き刺した。
【土竜返し(モグラがえし)!!】
突き刺した腕から炎が唸りを上げて地中を駆け巡る。
その名の通り地中のモグラを焼き尽くすように。
地中からナルトを狙っていた男は、二度と日の光を浴びることなくそのまま地中で果てた。
そして雲隠れの忍達が受けた封印の書奪取の任務は、部隊の全滅と言う最悪の結果で幕を閉じた。
「・・・さーて・・・残るはお前だけだなぁミズキィィィィ―――――」
「ひ、ひぃぃぃ!!」
悪魔の様な笑顔を浮かべ、ドス黒いチャクラを放ちながらミズキにゆっくり歩み寄るナルト。
ミズキは口から泡を吹き、白目を剥いて失神してしまった。
「なぁに寝てやがんだ? さっさと起きろこのボケ!!」
だが、お構いなしにミズキを殴り起こし、蹴り起こす。
八つ裂きにして殺したいが、里の人間の怒りを静めるには生かして捕らえる必要がある。
しかしイルカを傷つけた事で怒りが頂点に達し、無傷のまま捕らえる気などさらさら無い。
ナルトは失神と覚醒を交互に繰り返すミズキを、およそ30分に渡っていたぶり続けた。
・・・・・・辛うじて生かされたミズキは、翌朝、封印の書とともに火影邸の前に裸で吊るされていたらしい。
傷ついたイルカをナルトが背負い、半ば原型を止めていないミズキだった物体をアンコが引きずりながら歩いている。
最初は戸惑いぎこちなかったナルトだが、徐々にイルカに真実を語りだした。
4歳から暗部に所属していたことや、アカデミーに通ったのは任務だったことも。
「・・・・・・先生、今までの俺は全部嘘だったんだ・・・。
言葉も、行動も、語った夢も、全部偽者の俺。 真実なんかどこにも何もなかった・・・・・・」
「・・・・・・」
イルカは答えず、ただ静かにナルトの話を聞く。
「ガキの頃から命狙われてアンコとジィさん達以外は誰も信じてなかった」
そう言い終わるとナルトは俯いてしまった。
「・・・じゃあ、なんでオレを助けてくれた?」
「今更信じてくれとは言わないけど、イルカ先生が死ぬのは嫌だったんだ・・・!
他のどんな事よりも! 例え嫌われることになったとしても・・・それだけは、嫌だったんだ・・・」
ナルトは歩くのを止め、その場に立ち尽くし唇を噛んだ。
アンコは先程から、ただ黙って2人のやり取りを見守っている。
誰一人言葉を発することなく、夜の森に静寂が訪れる。
・・・・・・やがて、重い沈黙を破ってイルカがゆっくりと口を開いた。
「ナルト、悪いが降ろしてくれないか」
「・・・・・・・・・・・・」
イルカの言葉を拒絶と受け取ったナルトは、一度深く呼吸をした後、悲しい顔でイルカを背中から降ろした。
その様子を見てアンコも目を閉じて俯いた。
だが、
「・・・ナルト、お前に渡したいもんがある」
「「?」」
ナルトとアンコは同様に首を傾げる。
「オレもお前がアカデミーに入ったときに決めたんだよ・・・・・・お前を守る!・・・てな」
イルカがナルトに渡したのは自分の額宛だった。
「でも・・・そのオレが守られちゃカッコ付かないよな・・・。
だから今日でお前はアカデミー卒業だ! ・・・ナルト・・・卒業、おめでとう!」
「イルカ先生・・・ありがとう」
笑顔で額宛を渡すイルカにナルトは泣きそうな笑顔で答え、額宛を受け取った。
「これから卒業祝いだラーメンをおごってやる!!」
「中忍の安月給で無理しなくても良いって!オレが奢るよ、イルカ先生!!」
「ねぇねぇ、それって私にも?」
「お前は稼いでんだから自分で払え!!」
「え〜〜〜!! いいじゃない! ねぇ、イルカ先生?」
「まぁまぁ2人とも」
素顔をさらしても受け入れてくれたイルカに、ナルトは何度も心の中で感謝の言葉を送った。
ナルトが本当の自分をさらけ出す勇気を得た瞬間であり、ナルトを心から認める新しい理解者が生まれた瞬間だった。
アンコもそれを心から喜び、3人は和気藹々と一楽へ向かった。(アンコが引きずる燃えないゴミを届けた後で)
水晶で事の顛末を見届けた火影も、とても幸せそうに微笑んでいた・・・。
この後、火影が一連の首謀者はミズキと公表し、全ての忍に解散命令が出され事件は幕を閉じた。
・・・・・・かに見えた。
―らーめん一楽―
傷ついたイルカはアヤメに介抱され、アヤメは幸せそうに微笑み、イルカは頬を染めて照れている。
すでに2人の世界に旅立っており、テウチは『娘に春が来た!!』と滝のような涙を流し、妻の遺影に向かって酒を飲んでいる。
で、ナルトはというと・・・・・・
「あんた何、卒業してんのよ!! そんなに私の担当が嫌なわけ!!?」
「あの場の流れだと仕方ねぇだろうが!!!
大体お前も『感動したわ!!』とか言ってたじゃねぇか!!」
昔の担当がオカマ言葉の変態で、師に恵まれなかった為に師弟愛とは無縁だったアンコは、その場の雰囲気に流され自分が『ナルトの担当になる』と言う目的を完全に忘れていた。
まぁ、アンコは兎も角、あの顔で師弟愛を演じられても不気味なものでしかないが。
「女ね!?他に女がデキたのね!!?
相手は誰なのよ!! まさか紅!? ヒドイ!!私との事は遊びだったのね!?」
「誰もンナ事一言も言っとらんだろうが――――!!!」
「死ぬわ!こうなったらあんたを殺して私も死ぬわ!!」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!!!!」
・・・・・・ちなみに他の人たちは、それぞれ自分の世界に旅立っており、助けに入るものはいなかった。
泣き叫ぶアンコをナルトがなだめ、騒ぎが収拾したのは明け方であった。