NARUTO
〜九妖忍法帳〜 02話目
―忍者アカデミー―
俺は今、縄で縛られ教卓の前でさらし者にされている。
言っておくが、俺に縛られて喜ぶような趣味は無い。
目の前ではイルカ先生(26)が、両腕を組み俺を見下ろしている。
その額に浮かんだ血管がピクピクしてる。
【海野・イルカ】、俺の担任。
中忍の割に里の上層部の信頼も厚く、実力は同階級の中でも結構優秀な方。
14年前、九尾襲来の時に家族を亡くし、それ以来天涯孤独の身となったらしい。
しかし、多くの里人と違い、俺を差別したりはしない。
それどころか、里人の俺への仕打ちを快く思っていない節もある。
多少口うるさいのが玉に瑕だが、基本的にいい人。
・・・・・・しかしながら、この状況、この扱いは俺としても非常に不愉快だ。
前にも言ったが4歳から暗部に所属し、現在の実力は火影を上回る木ノ葉最強の忍だ。
・・・・・・話を聞いてるとナルシストみたいだけど、すべて事実なのでしょうがない。
そんな俺が、縛られ、さらし者にされている理由は少し前に遡る。
―二時間前、火影の執務室にて―
「ナルト、もう一度試験に落ちなさい!」
「はぁ?」
いきなり理不尽な事を言われました。
でもって、不尽極まりない発言をした女の名は【みたらし アンコ】(21)。
木ノ葉隠れの特別上忍。
かれこれ十年の付き合いで、俺が本性を見せる数少ない人間。
勝気な性格で、自由奔放・・・いやむしろ自己中心的といったほうが適切だろう。
それゆえ周囲の人間は常に振り回されている。
口より先に手が出るタイプ。・・・・・・・・・なかなかいい乳をしている。
まぁそれはおいといて・・・・・・。
特別上忍は階級的には上忍と中忍の間に位置し、一つの分野に特化した、いわば専門家の集まりである。
アンコは戦闘に特化した特別上忍であり、俺と三代目のジィさんを除けば現在の木ノ葉でも五指に入るほどの実力者だ。
・・・・・・実はお付き合いしていたりするのだが、その辺の話はまたの機会にしておこう。
「・・・アンコ、いきなり何を言ってる?」
「おだまり!いい?これは決定事項なの!わかった!?」
「いや、だからなんでだよ?とにかく理由を聞かせてくれ」
説明もなくいきなり結論を出されたので、少々困った。
「旧家のガキ供の護衛も今年限りのはずだよな?
あの連中が卒業したら他に護衛対象になる奴いねぇし。
日向の末っ子はアカデミーには行かねぇんだろ?」
俺がアカデミーに通う必要はない筈だ。
「私、来年上忍試験受けるのよね」
「・・・それがなんか関係あんのか?」
「ほら、下忍を担当できるのって上忍だけでしょ?
だからあんたが今年卒業したら私が担当できないじゃない♪」
「へー・・・なーるほどね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「って、ちょっとまてぇぇぇぇぇぇい!!! なんじゃそら!?
やっと、あのくそ生意気なガキ供とおさらばできると思ったのに!!」
何の理由にもなっていない理由に、力一杯吠えた。
「男が細かいこと気にしちゃだめよ! それにあんたに拒否権はないわよ!!」
しかし駄目だった。
こういう時のアンコに理屈は通じないのである。
そしてこの有無を言わさぬ決定により、俺の留年が決まった瞬間でございました。
「あのジジィ姿が見えねぇと思ったら・・・・・・くそ、1人だけ逃げやがって」
なんとも薄情な老人だ。
「はい、これ」
「・・・?」
さわやかに笑みを浮かべるアンコから一枚の手紙を受け取り目を通す。
《ナルトへ・・・何事もあきらめが肝心じゃ。
お前の家に新しい教科書を送っておいた。来年もがんばれ。 火影より》
「あんのくそジジィ! 人事だと思って!」
書置きを残して消えたジジィに本気で殺意が沸いた。
俺は腹いせにジジィの部屋に大量のトラップを仕掛け、火影岩に盛大な落書きをしてやった。
すると今まで姿を見せなかったジジィが、イルカ先生を連れて何食わぬ顔で現れ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・捕獲された。
―再びアカデミー―
「明日は忍者学校の卒業試験だぞ!!
お前はもう四回も試験に落ちてる!!
外でいたずらしてる場合じゃないだろバカヤロー!!」
こめかみをピクピク震わせ怒鳴るイルカ。その怒鳴り声で窓が震えている。
素晴らしい肺活量である。
「・・・はいはい」
どうでもよさそうに呟くナルト。
反省の色を微塵も感じさせない横柄な態度に、イルカが切れた。
「今日の授業は変化の術の復習テストだ!
全員ならべ――――!! 先生そっくりに化けること!!」
「「「「「ええ――――――!!!」」」」」
突然のテストに不満の声を上げるクラス一同。
ナルトも他同様に不満の声を上げてはいるが、内心ため息をついている。
期せずしてテストを受ける羽目になった一同だが、次々とイルカに変化し課題をクリアしていく。
「よーし。OK!・・・次!うずまきナルト」
そしてナルトに順番が回ってきた。
「お前のせいだぞ!!」
「知るかよ」
この状況を作り出した張本人に対し、冷ややかな視線を投げ掛けながら不満をこぼす生徒達。
彼らは年上である筈のナルトを思いっきり見下している。
その理由は、自分達の親がそうするから・・・。
三代目の作った掟により九尾に関することは口外無用とされている。
それゆえ里の子供たちは、ナルトが九尾の器であることは知らない。
しかし里の大人たちのナルトに対する態度が、子供たちの間に浸透してしまっている。
その上表向きとはいえ、アカデミー始まって以来の落ちこぼれ。
・・・ダブリに払う敬意はないらしい。
―死にたいのかクソガキ供。
思わず殺気が漏れそうになるが、何とか我慢する。
何気に大人気ないナルトだった。
―普通にやっても、おもしろくねーな。
何か思いついたらしく、イルカに気づかれない様ににんまりと笑みを浮かべる。
そして術を発動させる印を結ぶ。
「変化!!!」
掛け声と同時に辺りに煙が立ちこめ、裸の美女が現れ
・・・なかった。
クラスの時が止まり・・・・・・その場に居た全員の顔から血の気が引く。
そこら中から悲鳴が上がって、クラスが地獄絵図と化した。
至近距離で見たイルカにいたっては瞳孔が開いている。
つぶらな瞳。(ただし垂れた下がった目蓋で開いていない)
くびれた腰。(見る角度によってはくびれている)
豊満な胸。(だった物)
引き締まった尻。(確かに無駄な肉はない)
・・・・・・煙の中から荒れたのは、半世紀ほど前のミス木ノ葉、里の御意見番。
【うたたね・コハル】その人であった。
「あはははは!! 題して『夢の残骸』!!」
変化を解き腹を抱えて大笑いするナルト。
騒ぎが治まったのは、これより1時間後だった。
ちなみに、この騒ぎが後にコハル本人の耳に入り、ナルトは・・・・・・いや、それについては触れないでおこう。
―火影岩―
「きれ〜〜〜にするまで家には帰さんからな!!」
復活したイルカに監視され、火影岩を磨くナルト。(イルカによれば川のほとりで両親に再会したとか・・・)
「別にいいよ・・・家に帰ったって誰もいねェーしよ!」
―嘘だけど。
ナルトは心の中でそう呟いた。
表向きはアパートでの一人暮らしとなっているナルトだが、実際には木ノ葉の郊外に一戸建ての家を持ち、数年前から3人の居候と暮らしている。
・・・・・・その居候については後に語られる。
ついでにアンコが毎日のように食事をたかりに来ている。
そのためナルトの家は、結構賑やかなものだったりする。
真実を知らないイルカは、ナルトが寂しさをまぎらわすためにいたずらをしたのだと思い、ナルトの方を悲しげに見つめている。
・・・どこまでもいい人である。
里の連中に爪の垢でも飲ませてやりたい。
一方ナルトはと言うと・・・
―くそ!絵の具にしとけばよかった!
心の中で愚痴をこぼしていた。
「ナルト」
不意にイルカが語りかけた。
「今度はなにぃ?」
さすがに疲れたのか、不機嫌そうにイルカを見上げる。
すると・・・、
「・・・ま・・・なんだ・・・・・・それ全部きれいにしたら、今晩ラーメンおごってやる!」
イルカは照れくさいのか口をへの字に曲げ、ポリポリと頬をかきながらそっぽを向いてつぶやいた。
一瞬キョトンとした表情を浮かべたナルトだったが、イルカの心中を察し次第にその顔に笑みが浮かんだ。
「よーし!!おれさ! おれさ!! がんばちゃお!!」
―・・・ありがとう・・・イルカ先生。
普段から偽りの自分を演じているため、口にこそ出さないが心の中で感謝する。
今のナルトは孤独ではない、だが里の闇を背負い生きている事もまた事実。
里人はその名を憎み、その存在を否定し、唯一望まれているのは死のみ・・・。
自分に向けられた目が宿すものは憎悪、そして蔑み。
しかしイルカの目は暖かかった。
その瞳は優しかった。
それが無性に嬉しかった。
・・・作業が終わる頃には夕日は沈み、月が昇っていた。
月明かりに照らされた二人の顔は、とても微笑ましいものだった。
―らーめん一楽―
ここは一楽、里でも評判のラーメン屋。
俺が堂々と出入りできる数少ない店でもある。
他の店は顔を見るなり塩を撒きやがる。
この店は店主【テウチ】のオッちゃん(43)と、その娘である【アヤメ】姉(19)の二人で切り盛りしている。
【テウチ】のオッちゃんは普段は温厚なのだが、ラーメンの事になると鬼と化す。
しかも一般人なのに何故か凄まじい戦闘力を誇り、その上忍並の実力は木ノ葉隠れの七不思議の一つにも数えられる程だ。
以前、酔っ払ってアヤメ姉に絡んだ5〜6人の忍を相手に一戦交え、全員病院送りにしたと言う伝説の持ち主。
嫁さんは十年前に他界しており、以来男手一つでアヤメ姉を育ててきた。
【アヤメ】姉は一楽の看板娘で、近所でも美人と評判でその温和な性格で人気がある。
将来は家業を継ぐらしく現在修行中の身。
甘い物が好きでアンコとは仲が良い。
何気にイルカ先生に惚れていて、イルカ先生もまんざらではない様子。
テウチのオッちゃんとアヤメ姉には昔から可愛がってもらっていて、俺も心から2人を信頼している。
だから素の俺を知ってもらっている。
俺は今、イルカ先生と2人でラーメンを食っている。(ちなみに味噌)
もちろんイルカ先生のおごりで。
心は温かいが財布の中は寒いイルカ先生、そんなイルカ先生に飯をたかるのは正直気が引ける。
―先生ごめん、この借りはいつか返すから。
思わず俺は心の中で謝った。
「ナルト」
レンゲでスープをすすっていたイルカ先生が俺に話しかける。
「ん―――?」
「なんであんなとこに落書きした? 火影様がどういう人達かわかってんだろ・・・」
昼間の件を蒸し返してきた。
「アンコにビビって俺を見捨てたジィさんへの嫌がらせ」
・・・とは口が裂けても言えない俺。
「あったり前じゃん!よーするにィ
火影の名前を受けついだ人ってのは里一番の忍者だったってことだろ?」
ラーメン食いながら当たり障りの無い様にテキトーに答えた。
「特に四代目火影って、里をバケ狐から守った英雄らしいし」
・・・何気に俺の親父なんだよな・・・。
「じゃあ・・・なんで!?」
―んー・・・なんでだろ?里の連中への嫌がらせかな?
大体あいつらウザイんだよね。毎日、毎日、殺そうとするしさ。
人がドベのフリして大人しくしてりゃ調子に乗りやがって。
・・・・その気になりゃお前等なんかいつでも殺せるっつ―の。
でもどうせ殺るなら・・・じわじわ・・・まず爪剥ぎ・・・。
いや・・・・・・舌を抜いて・・・・・足元・・一寸刻み・・・眼玉・・・。
「ナ、ナルト!?」
ムカつく連中のことを考えてたら、イルカ先生が素っ頓狂な声を出した。
―やっべ!! 声に出てたか!? イルカ先生が青い顔してるよ!!!
って、オッちゃん! なに笑いこらえてんだよ!!
・・・・・・くそ! このままじゃ不味い!! 何とかしねぇと!!
「そ、そっ・・! それよりさ! イルカ先生」
この場を何とか切り抜けねば。
「な、なんだ?」
「木ノ葉の額宛ちっとやらしてー! (たのむ!誤魔化されてくれ!!!)」
無理があるとわかりつつも必死に話題をすりかえる。
「あ、あーこれか・・・!? ダメ ダメ!!
これは学校を卒業して一人前と認められた証だからな!・・・お前は明日・・・」
「けち―――!!」
「はははは」
―・・・ふぅー・・・助かった・・・・・・次から気をつけねぇとな・・・。
・・・とりあえずその場は何とかなった。
余談だが、テウチのオッちゃんは笑いすぎて真っ赤になり涙を浮かべていた。
イルカ先生と別れた後、表向きの家であるアパートに影分身を置き、里外れの火の森にある本来の自宅に戻った。
【火の森】というのは、以前は神域として崇められていた九尾誕生の地。
今でこそ妖魔とされているが、本来九尾は火の神の化身である。
14年前の九尾襲来以降、禁忌とされ現在は暗部ですら近寄らない場所。
俺とアンコの野が・・・・・・いや、憩いの場ですハイ。
・・・どっと疲れた。ドベを演じるのもなかなか疲れる。
例によってアンコが飯をたかりにきて、
「明日の試験・・・わかってるわね?」
とドスのきいた声で命令・・・お願いされた。
・・・誰か助けて下さい・・・。
―翌日・アカデミー―
俺は机に突っ伏して順番を待っている。
卒業試験は1人ずつ個室に呼ばれ、試験官を前に実技を披露する。
試験の課題は分身の術だ。
というかここ数年変わっていない。
もっとも内容がどうであれ、俺はアンコに念を押され合格はできない。
もし言う事聞かなかったら殺される。
―はぁ・・・昔からアンコには頭が上がんないだよな。
と、ぼんやりと考え事をしてるうちに俺の順番が来た。
物が無くさっぱりとした教室、目の前の机に額宛が並べてあり、その机に試験管が2人座っている。
試験官の1人はイルカ先生、もう1人はアカデミーの教師であるミズキ・・・・・・。
この男は温厚誠実な人柄で、職場の同僚や生徒達からの評判はきわめて良好。
特にくの一クラスの生徒に人気がある。
が、俺はどうもこいつは気に食わない。
・・・・・・これは感だがこいつには裏がある。
善人ぶっちゃいるが、腹の中じゃろくでもないこと考えてるな・・・まぁ俺の知ったこっちゃ無いが。
それより試験だ。
・・・・・・と言っても合格したら不味いんだよな。
イルカ先生とミズキは気付いてないけど・・・さっきから窓の外でアンコの奴が監視してやがる。
―仕事はどうした?
「ナルト君?そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「わかってるってばよ!ミズキ先生ー!」
偽善者ミズキが表面上は俺を気遣う。
それに作り笑いを浮かべ言葉を返した。
確かにある意味緊張している。(主にアンコのプレッシャー)
―さーて・・・やりますか。
心配そうな顔をしたイルカ先生と、木の上から殺気を飛ばすアンコに暖かく(?)見守られ、チャクラを練り上げ印を結んだ。
その際練り上げたチャクラを意図的にカットする。
辺りに煙が立ちこめ、よれよれになった分身が一体。
イルカ先生が顔に汗を浮かべ顔を引きつらせている。
・・・ちなみにアンコは、木の上で笑い転げてる。
―お前が失敗しろっつったんだろうが!
「失格!!!!」
俺はいかにもショックを受けてますと言う顔をする。
「イルカ先生」
唐突にミズキがイルカ先生に話しかけた。
「・・・・・・彼はもう五度目ですし、一応分身はできてます。 合格にしてあげても・・・・・・」
全然うれしくない、むしろ迷惑極まりない。
ーおい! 余計なことゆーな!!
合格したらどーしてくれんだよ!!!
木の上で笑い続けていたアンコの顔から表情が消え失せ・・・殺気が膨れ上がり・・・鬼の形相と化す!
―・・・ああ死神がいる・・・
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
「ミズキ先生がなんと言おうとダメです!! みんな3人には分身してる。
しかしナルトの場合はたった一人・・・しかも、足手まといを増やしているだけです」
―よし!イルカ先生その調子だ!!
そのバカにもっと言ってやれ!!!
何せ自分の命がかかっているので心の底からイルカ先生を応援した。
外の死神はチャクラを練り上げ殺る気満々だ。
「合格とは認められない」
その言葉と同時に殺気が引いていく。
・・・助かった。 その時イルカ先生が仏様に見えた。
今後イルカ先生の家に足を向けて眠らない。
俺はそう心に誓った。
―試験終了後―
「良くやった、さすがオレの子だ!!」
「これで一人前だね!俺達!!」
「卒業おめでとう!!今夜はママごちそう作るね!!!」
アカデミーの校庭には人だかりができており、試験に合格し卒業を喜び合う子供とその両親たち。
そんな中、人の輪からはずれ一人でブランコに腰掛けるナルトがいる。
傍から見たら落ち込んでいるように見えるが、本人に言わせれば、
―・・・・・・疲れた・・・・・・。
の一言に尽きる。
その哀愁漂う姿は、リストラされたサラリーマンを連想させる。
ちなみにアンコは、ナルトの不合格を確認し上機嫌で帰っていった。
「ねェ、あの子・・・・・・」
「例の子よ。一人だけ落ちたらしいわ!」
「フン!!いい気味だわ・・・・・・」
「あんなのが忍になったら大変よ」
「だって本当はあの子・・・」
「ちょっと・・・それより先は禁句よ」
一部の保護者がナルトを罵っているが、今の彼には届かない。
・・・・・・五年連続不合格。
アカデミー始まって以来の新記録を樹立した上、来年も慣れ親しんだ学び舎に通うのかと思うとどうにも気が重い。
―・・・帰って寝よ・・・・・・。
いろんな意味で疲れ、ナルトはその場を後にする。
「イルカよ 後で話がある」
「はい」
去っていくナルトを見つめる三代目とイルカの姿があった・・・。
その表情に笑みはなく、厳しいものだった。
「ナルト君・・・ちょっといいかな?」
帰り道、ミズキが俺に話しかけてきた。
試験終了後からこいつの視線には気付いていた。
そしてアカデミーから俺の後をつけてることも。
疲れてるから相手したくないんだけどな。
仕方なしにミズキの後をついていく。
―・・・・・・どうせ下らない事考えてんだろうな。
連れられた先は建物の屋上だった。
ミズキは心にも無いことを一人でペラペラとしゃべり続けている。
イルカ先生についてあーだこーだと、ゴチャゴチャうるさい。
適当に話を合わせてはいるが、いい加減イライラしてきた。
―お前の様なクズがイルカ先生を語るな。
湧き上がる殺意を押し殺し演技を続ける。
こいつが意味も無く俺に話しかけるはずが無い・・・早く本題に入れ。
これ以上こいつを見ていると、本気で殺しかねない。
「しかたがない、君にとっておきの秘密を教えよう」
―なるほど、それが俺に近づいた本音か。 ・・・・・・いいだろう、乗ってやる!
丁度こいつにはイラついてたところだ。
事のついでに始末してやる・・・・・・精々、俺の掌で踊ってろ。
俺はミズキに悟られないように笑みを浮かべた。
―その夜―
イルカは自宅のベットで横になり、浮かない顔で天井を見つめ物思いに耽る。
『イルカよ・・・・・・』
『なんです 火影様・・・』
『お前の気持ちも分からんではないが・・・・・・あやつも お前と同じ親の愛情を・・・・・・』
昼間、三代目に言われた言葉を思い出す。
そして頭に浮かぶのは14年前の惨劇・・・・・・突如里に姿を現した妖狐。
金色の体毛と九つの尾を持ち、遥か上空の月さえ遮る巨大な異形。
口は耳まで裂け、瞳は禍々しい狂気を宿している。
一度歩を進めれば地面がひび割れ、轟く咆哮に空気が凍る。
九つの尾は、森の木々を薙ぎ払い山を穿つ。
そんな人の身では抗う事の叶わない天災に等しい脅威を迎え撃ったのは、五大国最大にして最強の木ノ葉隠れの里だった。
が、九尾はそれをものともせずに破壊の限りを尽くし、その人智を超えた強大な力が忍達を蹂躙していった。
『四代目が来るまで足止めをかけろ!』
それでも彼らは諦めない。
四代目火影に最後の望みをかけて、決死の覚悟で立ち向かう。
その中にはイルカの両親の姿もあった。
『はなせ―――!!まだとーちゃんと、かーちゃんがたたかってんだ―――!!』
当時下忍であったイルカは、他の忍に抱えられて避難させられた。
遠ざかっていく両親の姿が涙で滲んだ。
・・・・・・それが両親との別れだった。
突然、扉をたたく音がしてイルカはハッとした、ベッドから起きて玄関のドアを開けるとそこにミズキがいた。
「どーしたんです?」
夜分に何事かと思い、ミズキに用件を尋ねる。
「火影様の所へ集まって下さい!!」
突然の召集とあわてた様子のミズキに、思わず困惑する。
だがミズキは構わずに言葉を続ける。
「どうやらナルト君が、いたずらで封印の書を持ち出したらしくて・・・・・・!」
「!!」
告げられた内容に目を見開いて驚愕する。
イルカの脳裏に最悪の事態が浮かぶ。
イルカはすぐさま瞬身の術でその場を後にした。
その場に残ったミズキは、ドス黒い笑みを浮かべていた。
―ここまでうまくいくとはな・・・。
ナルトに封印の書を持ち出すように仕向けたのは他でもないミズキである。
ミズキは半年前、里外の任務に出た際に雲隠れの忍と接触していた。
その折にある取引を持ちかけられた。
《封印の書と引き換えに、雲隠れの里の要職の座を約束する》
そう持ちかけられ、人一倍の野心を抱いていたミズキは二つ返事で取引に応じた。
そして半年に渡って機を待ち、今回の計画を実行に移した。
@まずアカデミーの卒業試験に落ちたナルトに、封印の書の在りかを教えそれを盗み出させる。
A次にそのことを里に広め騒ぎを起こし、ナルトに注意を引き付ける。
B里の警備が手薄になった時を狙い、取引相手である雲隠れの忍が里に侵入。
Cそして、あらかじめ指定した場所で待たせているナルトを始末し巻物を奪う。
Dその後で雲隠れの忍と合流し共に里を抜ける。
万一失敗したときは、ナルトに全ての罪を擦り付ける。
里人はナルトの言葉には耳を貸さないため、自分に疑いの目が向けられることは無い。
ミズキからすれば、筋書き通りに事が進み笑いが止まらないと言ったところ。
だが【うずまき ナルト】は、ミズキを含め里の人間が思っているような落ちこぼれでは無い。
限られた一部の者が知るその真実は、火影すら上回る実力を持つ木ノ葉隠れ最強の忍である。
ミズキがそれを知るとき、その身に確実に死が訪れるだろう。
―火影邸前―
イルカが三代目の元に駆けつけたときには、すでに大勢の忍が召集に応じ集まっていた。
いずれも相当に殺気立っており中には、ナルトを見つけ次第殺そうと考える者たちもいる。
「今度ばかりはいたずらでは済まされません!!」
「火影様!!」
事が事だけに焦りを隠せない忍達、万が一封印が解ければ14年前の惨劇が再び訪れる。
それで無くとも、封印の書によってナルトが力をつければナルトを虐げてきた自分達は何をされるかわからない。
―ナルトが見つかれば命は無い!
イルカの胸に不安が募り、その頬を汗が伝う。
「うむ!初代火影様が封印した危険な書物じゃ。
使い方によっては恐ろしいことになりかねん・・・・・・
書が盗まれて半日以上たっておる、急いでナルトを探すのじゃ!!」
「「「「「はっ!!!」」」」」
敬礼と同時に忍達はその場を一斉に飛び去って行った。
イルカは屋根から屋根へと飛び回り、下を見下ろす形でナルトを探した。
かれこれ一時間は探し回っているが、一向に見つからない。
他の者に見つかる前に自分が保護しなくてはならない。
ナルトの身を案じて、ただひたすら夜空を駆け抜ける。
乱れた息を整えるために一度立ち止まると、ふと疑問が浮かんだ。
ナルトは普段一人の時は、里人の目があるため、街中や大通りといった人目につく場所を好まない。
だから自分は人通りの少ない裏道などを重点的に探した。
そして大人数で探し回っているにも拘らず、一向に見つかる気配が無い。
ならば答えは一つ、人目につかず里人が本能的に避ける場所。
―・・・火の森のほうへ行ってみるか。
―火の森―
「えーと・・・最初の術は・・・多重影分身?これは知ってる。・・・次!」
イルカの心配を他所に、ナルトは封印の書を読みながらミズキが来るのを待っていた。
足元には数本の巻物が転がっており、いずれも禁術を記した物で三代目が厳重に管理している物である。
いとも容易く火影低に忍び込んだナルトは、ミズキの狙う封印の書を持ち出した。
ただその際、昼間の恨みを晴らすべく三代目をKO、そしてついでとばかりに他の禁術書もかっぱらった。
ミズキは《火影様の家にある巻物の術を見せれば卒業できる》と持ちかけ、封印の書を盗むように仕向けた。
まぁ、ナルトはそれを知った上で誘いに乗ったのだが。
一通り巻物に目を通した頃、森に入る人の気配を感じ巻物を閉じる。
―ようやく、お出ましか・・・。
ナルトは、いかにも気だるそうに腰を上げた・・・
が、
―!・・・違う、ミズキじゃない・・・。
・・・・・・これは・・・イルカ先生!?
ナルトは九尾の影響もあり、子供の頃から五感が常人とは比べ物にならないぐらい優れている。
視覚・聴覚・嗅覚・触覚・さらには味覚に至るまで。
その上気配の察知やチャクラの識別と言った第六感はずば抜けて高い。
それこそ、1km以内ならチャクラだけで人を判別できる程に。
だからこそ、向かっ来るのがミズキでないとわかった。
ナルトは、ミズキが他国の忍に封印の書を渡し、金を得るのが目的だと思っていた。
だからミズキが他国の忍と複数で来る事は予想していたが、まさかイルカが来るとは夢にも思わなかった。
―イルカ先生がミズキの仲間!? ・・・・・・いや、イルカ先生に限ってそれはない。
予想外の事態に思考が混乱する。
―後500・・・・・・300・・・200・・・どうする?
考えがまとまらない内に、イルカはどんどん近づいてくる。
「・・・・・・見つけたぞコラ!!」
引きつった顔でドスの利いた声を出すイルカに、ちょっとだけビビるナルトであった。
「こ、こんばんは?・・・イルカ先生」
「何がこんばんわだ! バカタレ!!」
暢気に挨拶をするナルトに怒鳴るイルカ、その怒鳴り声に鳥達が一斉に飛び立つ。
「ぐおぉぉ・・・・・・耳が〜・・・」
「やかましい!ったく、人の気も知らないで・・・」
耳を抑えて地面を転がるナルトの講義を即座に切り捨てる。
だが、怪我も無く自分の心配が杞憂に終わりイルカはホッとしていた。
「ところでイルカ先生・・・なんでこんな所にいるんだってばよ」
イルカの怒声によるダメージはまだ残っているらしく、片耳を押さえながら問う。
「それはオレの台詞だ!
お前こそこんな所で何やってるんだ!?
里中の忍がお前を探し回ってるんだぞ!!」
―っ! なんだと!
なんで里に情報を流す必要がある?
・・・・・・くそ、あの野郎そういう事か!
ナルトは自分が、ミズキ計画を読み違えていた事に気付いた。
そして同時に、相手を過小評価していたことも・・・。
―金目当ての犯行と踏んでいたが、里抜けが目的とはな・・・。
里で騒ぎを起こし、その隙に巻物を奪い他国へ亡命か・・・・・・。
ミズキの真意を理解し、一つの懸念が生まれる。
―此処に居ると俺はともかく、イルカ先生が危ねぇな。
目的は初代火影の封印した禁術書、しかも相手は木ノ葉、任務にすればSランクだろう。
ならば相手は上忍のみで編成された小隊、最低でも四人はいるはず。
即座に思考を切り替えたナルトは、ドベの仮面を被ったままイルカに注意を促す。
「術の練習してたんだってばよ!!
ミズキ先生がこの巻物のことを教えてくれたんだ。
んで・・・この場所のことも・・・・・・この巻物の術を見せれば卒業間違いないってよ!!」
―・・・ミズキ―――――!?
「「!!」」
突然の殺気を感じたイルカがナルトを突き飛ばす。
―クソが!油断して接近に気付かなかった!!
いかに不意を突かれたとはいえ、イルカの居る前でかわす訳にはいかない。
ナルトは内心舌打ちをする。
不意打ちで飛んできた無数のクナイがイルカに突き刺さる。
イルカはその衝撃に歯を食いしばり踏みとどまる。
クナイの飛んできた方向を見上げると、背に二枚の大きな手裏剣を背負ったミズキが二人を見下ろしていた。
「よくここがわかったな」
善人の仮面を脱ぎ捨て、その顔にドス黒い笑みを浮かべ二人を嘲笑う。
「なるほど・・・そーいうことか!」
イルカもまたミズキの真意を悟り、突き刺さったクナイを引き抜き木の上を睨みつける。
「ナルト、巻物を渡せ」
―巻物を渡せばナルトはミズキに殺される!
そう思ったイルカは痛みをこらえて、血が吹き出るのも構わずに声を張り上げる。
「ナルト!!巻物は死んでも渡すな!!
それは禁じての忍術を記して封印した危険なものだ!
ミズキはそれをてにいれるためにお前を利用したんだ!!」
ナルトは拳を握り締めていた、自分のせいでイルカに傷を負わせてしまった事を悔やみ。
一方のミズキは勝ち誇ったかのように口を開く。
「ナルト・・・お前が持っていても意味が無い物だ! 本当のことを教えてやるよ!」
「っ!!バ、バカよせ!」
ミズキの言葉にイルカは我を忘れて叫んだ。
だが、ミズキはイルカの叫びを気にも留めずに言葉を続ける。
「14年前、バケ狐を封印した事件はしっているな」
「・・・・・・」
ナルトは答えない、ナルトはすでに知っている。
自分が憎まれ、命を狙われる理由もすべて知っている。
「しかし・・・お前にだけは、決して知らされることのない掟だ」
「・・・何が言いたい・・・」
ナルトは顔を伏せ、怒りで体を小刻みに震わせている。
ミズキが何を言おうとしているのかもわかっている。
ナルトは物心付いたときから、自分の中に九尾が居ることなど知っている。
だがイルカは、ナルトがそのことを知らないと思っている。
ミズキが自分の中に九尾がいるのだと告げれば、この人は悲しむだろう。
大勢の里人と違い自分に敵意・殺意・憎悪・嫌悪・蔑み・といった負の感情を向けるなかったイルカ。
口うるさく説教ばかりだが、それでも暖かかった。
自分のために心を裂いて、自分のことを理解しようとしてくれた人。
そんなイルカの前で言われるのだけは許せなかった。
「ナルトの正体が、バケ狐だと口にしない掟だ」
「・・・・・・」
だが、無常にもミズキは言葉を繋ぐ。
ナルトは殺意を押し殺し、イルカは怒りに震えている。
ミズキは高笑いをはじめ・・・
「つまりお前が「やめろ!!」
イルカが叫び、ミズキの声を遮るがそれでもミズキは止まらない。
「イルカの両親を殺し―――!!
里を壊滅させた九尾の妖狐なんだよ!!」
「やめろー!!」
ミズキの口から真実が告げられる。
それでもイルカは懸命に叫び続ける。
「お前は憧れの火影に封印された挙句―――里のみんなにずっと騙されていたんだよ!!」
「やめろー」
もう何度目になるかわからないイルカの叫び。
傷口が開き血があふれ出す。
だが、今は傷の痛みなど感じない。
ナルトの痛みに比べればこんなものなんとも無い、そうやってただひたすら声を張り上げる。
「おかしいとは思わなかったか? あんなに毛嫌いされて!」
握り締めたナルトの手の平から血が滴る。
ミズキは背中の手裏剣を手に取り、勢いよく回転させ始めた。
「イルカも本当はな!お前が憎いんだよ!!」
それは最も考えたくなかったこと。
―・・・もういい・・・殺してやる・・・
押さえつけていた殺意が溢れ出し、ナルトの体からチャクラが立ち上る。
―ナルト!!
通常では考えられないほどのチャクラを練り上げるナルトに驚愕するイルカ。
だが同時に火影の言葉が頭をよぎる。
『親の愛情を知らず、里の者にはあの事件のことでけむたがられる』
意を決して、傷ついた体を奮い立たせる。
イルカの傷は深く、力を込めれば血が流れ出す。
しかしそれでも立ち上がる、総てはナルトのために・・・。
「お前なんか誰も認めやしない!!」
ミズキの持つ手裏剣の回転がその速度を増す。
『だから人の気を引くために、いたずらをするしかなかったのじゃ
どんな形であれ、自分の存在価値を認めてほしかったのじゃ』
イルカが思い浮かべるのは、仲の良い家族を悲しげに見つめる幼き日のナルトの姿。
「その巻物はお前を封印するためのものなんだよ!!」
下を向いていたナルトの顔がゆっくりと上がり、殺意を宿した瞳がミズキを捉え・・・・・・・・・・・・
ナルトを嘲笑うミズキの手から回転する巨大な手裏剣が放たれ・・・・・・・・・・・・
『強がっているはが、つらいのはナルトの方じゃ』
――――――――――――――――――――――――・・・・・・・・・・・・。
そこにあったのはナルトに覆いかぶさるように膝を突くイルカの姿だった。
ミズキの放った手裏剣はイルカの背に突き刺さり、辺りに紅い花びらを咲かせた。
「!!」
―・・・・・・・・・イルカ・・せ・・ん・・せぇ?
ミズキは忌々しげに眉をひそめ、ナルトは呆然とイルカを見上げる。
その頬にイルカの血が滴り落ちた。
「・・・なんで・・・・・・」
ナルトの瞳から、先程まで宿していた殺気がきれいに消え失せていた。
「・・・オレなぁ・・・両親が死んでからよ・・・・・・。
誰もオレをほめてくれたり、認めてくれる人がいなくなった」
突然死んでしまった両親・・・・・・。
日が暮れて、両親に手を引かれて家に帰る友達・・・・・・。
「・・・寂しくてよォ・・・クラスでよくバカやった・・・人の気をひきつけたかったから・・・。
優秀な方で人の気がひけなかったからよ。
全く自分っていうものが無いよりはマシだから、ずっと、ずっと、バカやってたんだ」
アカデミーの授業でわざと失敗したりもした。
いつも笑って周りに愛想を振りまいた。
でも本当は・・・・・・。
「・・・・・・苦しかった」
胸に何かがこみ上げてきて、瞳の奥が熱を帯びた。
「そうだよなぁ・・・ナルト・・・さみしかったんだよなぁ・・・くるしかったんだよなぁ・・・」
イルカは自分でも気付かない内に涙を流していた。
「ごめんなァ・・・ナルト・・・。
オレがもっとしっかりしてしてりゃ、こんな思いさせずにすんだのによ」
ナルトは言葉が出なかった。
この人になら自分の真実を話しても良い、そう思った。
同時に、そんなイルカを欺いて偽りの自分を演じていたことに嫌悪感を抱いた。
だがそんな時、森に入る複数の気配を感じた。
―この気配、このチャクラ・・・この里の忍じゃねぇ!!
ちっ! このままじゃまずい・・・・・・。
ナルトの感じたのは四つの気配、そのもいずれも上忍クラス。
ナルト1人なら間違いなく勝てる。
相手が誰であれ戦闘だけなら問題ないが、傷ついたイルカを守りきれる保証は無い。
ならば自分が囮になって敵をイルカから引き離せば良い。
ナルトはミズキをひきつける為にその場から駆けていった。
「ナルトォ!」
その場から離れて行くナルトに向かって、イルカは叫んだ。
「クククク、残念だがナルトは心変りする様な奴じゃねぇ。 あの巻物を利用しこの里に復讐する気だ」
木から飛び降りたミズキは、地面に倒れたイルカに向かってはき捨てる
普段の温厚誠実な人柄・穏やかな物腰はどこにも見当たらない。
「さっきのあいつの目を見たろ!? 妖狐の目だ!」
「ぐっ!」
ぼろぼろの体を起こし、背中に刺さった手裏剣を無理やり引き抜く。
「・・・ナルトは・・・そんな奴じゃない」
背中の傷口から血が溢れ、その出血によって呼吸が乱れる。
だが、それでもイルカのナルトを信じる心は揺るがない。
「まっ!そんなのはどーだっていい。
ナルトを殺して・・・あの巻物さえ手に入りゃそれでいい! お前は後だ!!」
「ぐっ!!」
思わず膝をつく、イルカのダメージは深刻なものだ。
―さ・・・させるか・・・!!
途切れそうになる意識を必死に繋ぎとめイルカはミズキの後を追った・・・・・・。
・・・その頃
「やっぱり殺しとけばよかったんだ!!」
「やるなら妖狐の力が出る前だぞ!!」
「どのみちロクな奴じゃねーんだ!見つけ次第殺るぞ!!」
一部の過激派の集団は、これを気にナルトを抹殺しようと殺気だっている。
この里にナルトの味方と呼べる者はほとんど居ない。
だからこそ、ナルトは仮面を被らねばならない。
この状況を四代目火影が見たら、何と言うのだろうか・・・・・・・・・。
一方火影の執務室では、三代目が水晶を使った【遠見の術】でナルト達の状況を見ていた。
だが、別段対策をとるわけではなく、ただ事の成り行きを見守っているだけ。
するとそこへ、
「火影様!! これはどーいうおつもりですか!!!」
任務を終え、騒ぎを聞きつけたアンコが三代目の元へ怒鳴り込んできた。
乱暴にドアを開け殺気を隠そうともせずに、三代目の座る机を両手で叩きつける。
「アンコ・・・少し落ち着かんか」
普段ならすぐにでも逃げ出すのだが、三代目はアンコを見据えたしなめる。
その瞳は揺らぐことの無い確固たる意思を宿し、里の最高権力者の威厳を感じさせる。
「っ! ・・・申し訳ありません・・・しかし、なぜこんな事に・・・?」
アンコもまた優秀な忍、己の非を認めすぐに状況の把握に努める。
「ナルトが封印の書を持ち出し・・・。
その事実を他の忍に広めた者がおる。 それでこのありさま・・・と言う訳じゃ」
三代目のナルトに対する信頼は厚く、ナルトが意味も無く封印の書を持ち出すとは思えなかった。
半分アタリ、半分ハズレではあるが・・・・・・それはさておき。
この事を公にするつもりなど無かった、しかしミズキによってそうせざるを得なくなった。
「・・・しかし、ナルトが意味も無くそんなことをするとは・・・」
「無論、わしも思うておらん。
ナルトにそれを持ちかけたのはミズキじゃ・・・。
あ奴めよりによって雲隠れの忍と取引しおった。
恐らく、ナルトはそれを始末するつもりでおったのじゃが・・・・・・」
「? ナルトなら問題は無いと思いますが・・・!! ・・・まさか!?」
ナルトの実力を知っているアンコは、歯に物のつまった様な三代目の物言いに首を傾げたが、すぐに、一つの結論を導き出す。
「そう、イルカが一緒じゃ。 しかも、手傷を負っておる!」
ナルト1人なら何の問題ないが、守るべき対象がいれば話は違ってくる。
しかも、ナルトはイルカを慕っているため、嫌われるのを恐れ実力を出すことを躊躇うはず。
「ナルトの救援に向かいます「待て、アンコ!」
救援に向かおうとするアンコを火影が引き止める。
「なぜです!?」
「ナルトは今、試されておるのじゃ・・・。
この先、あやつが、自分のことを理解する人間に出会った時。
あやつはその仮面を脱ぎ捨てる勇気を持たねばならん・・・。
自分を偽ったままでは真の信頼など得ることは出来んのじゃよ。
・・・・・・今が、そのときなのじゃ・・・わかるな? ・・・アンコ」
三代目はそう言って辛そうに眉をひそめる。
ナルトは確かに人を欺いて生きているかもしれない・・・
でもそうさせたのは他ならぬ里人であり・・・それを命じた三代目。
だが、里人は嫌っても三代目を怨む事はしなかった。
三代目にはそれが何よりも辛かった・・・・・・。
「・・・・・・」
三代目の言葉にアンコもまた辛そうにうつむく。
だがすぐに口を開いた。
「わかりました・・・・・・。
救援には向かいますが 私は手を出しません・・・。
しかし、万が一の時は・・・」
アンコはそう言って部屋を飛び出していった。
「ナルト・・・」
1人残された三代目は水晶を見つめ、ナルトの名を呟いた・・・。